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出会い〜恋人になるまで

仕事中

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執筆部屋に篭って一日中原稿を進めていると、突然ドアがコンコン、と鳴った。
しのだろうか、開けてやると、そこにはやはりしのがいる。
「お仕事中ごめんなさい。
今日一日何も食べてないし、飲んでもないから…これ、よかったら食べて」
そう言って、おにぎり二個とたくあん、そして氷で冷えたお茶の乗ってるおぼんを渡してくれた。
俺はそのお茶を一気に飲み干す。
確かに、よく考えると今日一日何も食べていない。
たまにこういうことがあって、気づいたら寝落ちているとか、そういうのもザラにある。
だからこうして一日一回生存確認をしてもらえると、仕事にも支障が出ないし非常に助かる。
しのはそれを渡すなりすぐにリビングへ戻って行った。
おにぎりを食べ終えると、またすぐに原稿に戻る。
提出期限が明日の午後13:00だから、それまでに終わらせなくてはならない。
しのには申し訳ないことをしたが、明日提出に間に合ったら、また何か美味しいものでも食べさせてやろう。

翌日、漸く原稿が終わり、約三日ぶりにリビングに戻った。
昔から夏休みの宿題をギリギリで終わらせる癖があって、それは今でも変わらない。
いい加減社会人なのだから、きちんとスケジュールを立てないといけないけれど。
リビングへ戻ると、しのがエプロン姿のままソファーで眠っている。
仕事中だからと気を使ってくれたのか、あまりリビングからは出ていないのかもしれない。
たまにガチャ、と物音がして、きっと買い出しに行くのだろうと思ってはいたが。
近くにあった毛布をしのにかけ、これまた約三日ぶりにシャワーを浴びた。
お風呂も隅々まで綺麗にしてくれている。
おかげで、前のように提出後の怒涛の家事をしてなくて済む。
ゴミ出しもきちんと済ませてくれているようだし、本当にしのには助かっている。
しのがこの家に来て、3週間が経っていた。
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