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第一部
第四話 五番目の依頼人 豊満で控え目なキジマ・サチコ(中編)
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温かい湯の中で、わたしはヒロキくんに抱かれ、彼の優しい愛撫を受ける。
至福の時間・・・♡。
だけど、もちろんこれで終わりではない。
彼の手がわたしの身体を這い、わたしのおっぱいやタプタプのお腹やぷにぷにの内股やその奥にある花芽を、優しく、弄る。
彼は、これが好きだ。
わたしも、好き。とっても・・・。
わたしは、彼にされるままになる。当然に、あのゾワゾワが立ち昇って来て、たまらなくなってくる。わたしは時折振り返ってキスをせがむ。くちびるを突き出し、彼と、舌を絡め合う。
「ああ、癒されるなあ・・・。ぼく、サチコの肌、大好きなんだ」
お世辞でしょ?
今年初めて彼と出会い、最初にそう反論した時、彼がわたしを叱ったのがもう遠い昔のようだ。
「ねえ、素直になってよ。ぼく、サチコのカラダ、大好きなんだ。その控えめなところもね。それで癒されるんだよ。そういうチカラが、サチコにはあるんだから。
もっと、自信を持ちなよ。
それがサチコの課題だし、サチコの幸せはその中に、あると思うなあ・・・」
初めて彼に会い、彼のお陰で初めてホントウの絶頂を知った。
その後、一人になって姿見の前に立った時、確かに、わたしはそれまでとは違う自分になれたような気がした。
その時、わたしは、誓った。
昨日までの自分とはもう、サヨナラする! って。
だから、今。わたしは素直にヒロキくんの言葉を受ける。
「うれしい・・・♡」
彼に乳首を弄ばれ、花芽をいじられながら、わたしは、もう一度キスをせがむ。
ヒロキくんとはもう、何度も肌を合わせた。
一戦交えた後、彼は体の芯からリラックスしたような顔をする。時にはわたしを抱えたまま眠ってしまったことさえあった。
彼と出会う前のわたしだったら、
「やっぱり、わたしなんかミリョクなかったんだな・・・」
なんて思っていたかもしれない。
でも、今は違う。
「彼は本当にわたしでリラックスしてくれているんだな。彼の癒しになれているんだな・・・」
心からそう思えるようになった。
その日も。
ヒロキくんは湯船の中でわたしを抱えたまま、わたしの首筋にキスをしながら、
すう・・・。
寝てしまった。
こんなに疲れているのに、来てくれて、抱いてくれたんだな。
わたしの身体を抱いて、安心しちゃったんだな。
うれしい・・・♡。
彼の頬にキスし、彼の耳に、わたしは囁く。
「ヒロキくん♡。こんなトコで寝ちゃうと、カゼひくよ」
「・・・ああ、ゴメン。でも、もうちょっとだけ・・・」
そして、後ろからわたしを抱きしめ、愛おしそうにわたしに頬ずりする、ヒロキくん♡。
・・・しあわせ・・・♡。
わたしは彼よりも10も年上の、大人だ。
こんな日がずっと続くわけがないこともわかっているし、彼を独占できないことも、わかっている。
でも、今だけは、彼は、ヒロキくんは、わたしだけのものだ。
今だけは、この幸せに、存分に浸っていたい。
そう、思わずにはいられない。
ヒロキくんに出会うまでのわたしは、いろいろと、ダメなヤツだった。
それでも、なんとか引っ込み思案の性格を直したかった。人並みに、恋もしたかった。
付属の女子高に進学したわたしは、バレー部に入った。レギュラーとかになれなくてもいい。太目と思い込んでいたから運動は大事だなと思っていたし、みんなの中で揉まれて、自分を鍛えたかったのだ。人の目なんか気にしないように、強くなりたかった。
でも・・・。
生来の押しに弱い性格が、やっぱり、災いした。
入学した年の学園祭で、わたしはある他校の男の子に声を掛けられた。
「キミ、かわいいね! よかったら案内してよ。オレ、この学校初めてでさ」
わたしは同じバレー部の一年生と一緒で、相手も2人連れ。それに、デブスだと思い込んでたわたしは、かわいいと言われて瞬時に舞い上がり、困っているなら、と同じ2人連れの気安さで気軽に応じた。
その声をかけて来たほう。今では名前も思い出したくないので、A、とだけ。
2人は、特にAは、口が上手く、話が面白かった。
わたしたちはすぐに仲良くなってメアドを交換した。そして早くも、その週の週末には2人で会うことになり、次の週にはもう、初体験をしてしまっていた。
それまでこもりがちで引っ込み思案だったわたしは、急に舞い降りた遅い春を謳歌するのに夢中になり、連れのバレー部の子の、
「サチ、あの子ら、ヤバいってよ。やめといたほうがいいって」
そんな諫めも耳に届かないほど、わたしは急速にAに夢中になってのめり込んでしまっていた。
だが、すぐにAは本性を現した。
「おい、いますぐ来い!」
「え、でも部活が・・・」
「んなもん、どうでもいい! オレが来いって言ったら、来い! それとも、オレの言うことが聞けねーのか!」
友達の諫めの言葉が頭をよぎったが、その時はもう、わたしは引き返せないところまで来てしまっていた。Aにのめり込み過ぎていた。Aに捨てられ、前みたいな引きこもりに戻りたくなかった。そんな関係を愛だと、思い込もうとしていた。
あまり詳しくは話したくない。
Aは次第に調子に乗り、押されると断れないわたしに、次から次へと無理な要求を突き付けてくるようになった。
「オイ! オレのダチがお前とヤリてえってよ。相手してやれ」
とか、
「今日は3人で可愛がってやっからよ。どうだ? コーフンするベ? 」
強く押されると、断れなかった。
要するに、わたしはAとその仲間たちの「性のおもちゃ」にされていただけだった。
部活はもちろん、学校も休みがちになり、成績も急降下していった。親も怪しみ始め、担任にも追及されるようになっていた。
わたしは、いろいろと、追い込まれた。
ところが、そんなわたしを見かねて声をかけてくれた先輩がいた。
3年生の、エガワ先輩だった。
「サチ、どうしたのよ? なんかあったの?」
もちろん、レギュラー。成績も優秀。後輩の面倒見もいいし、顔も広い。そんな先輩を見て、いつも憧れていた。こんな人みたいになれたらいいな、と。
とうとう、わたしは、差しのべられた手に、縋った。
大会を控えて超忙しい時期だったにもかかわらず、先輩は、学校とか彼女の親とか、ありとあらゆる手段を使ってAと彼の周辺を黙らせてくれた。写真も撮られていたが、それも全部、処理してくれた。
エガワ先輩、ハナエさんは、わたしの生涯の恩人、師匠になった。
だが、後遺症も残った。
それまでの引っ込み思案と押しに弱い優柔不断はさらに強化され、その上に、わたしは、極度の男性恐怖症に陥ってしまっていた。
それから・・・。
極力男性と関わらない仕事に就きたかったから、保育科のある短大に進学して保育士になり、さらに数年が経った。
仕事は楽しく、やりがいもあった。子供と接する仕事はわたしには向いていたみたいだった。次第に心も生活も安定し、高校時代の悪夢は、次第に過去のものになって行った。
だけど、自分とまわりの環境が安定してくるにつれ、わたしは、寂しさを覚えるようになっていた。
可愛い子供たちと触れ合うにつれ、わたしもこんな子供を持ちたいな。暖かい家庭を持ちたいな。そんな風に思うようになり、その思いは年と共に強く、つのっていった。
今年、年が明けてすぐ、ある集まりがあって、わたしは、生涯の恩人であり、人生の師匠であるハナエさんと再会した。
優秀な大学を卒業した後、商社に入社したとは聞いていたが、その時はもう宮仕えを辞め、実業家として立派に独り立ちしていた。
「さすがですね! ハナエさんは、わたしの生涯の師匠です!」
「ふふ、ありがと!」
高校時代もそうだったが、あれから10年近く経って、ハナエさんはより大きく、ゴージャスな存在になっていた。
「でも、あたしのことなんかより、あんたのほうはどうなの? いろいろ、順調? 仕事とか、恋愛カンケーとか・・・」
そこで、いい歳をして、わたしはぶわっ、と来てしまった。優しい言葉をかけられ、溜め込んでいたものが込み上げきて、不覚にも、泣いてしまったのだ。
「あらあら、どうしたの? 世話の焼けるのはちっとも変わってないわねえ・・・。
よかったら、話してみなよ。あたしに出来ることがあれば、力になったげる!」
わたしは、話した。
男性恐怖症は続いていたけれど、やっぱり、恋はしたかった。時折同僚や学校時代の友達が合コンなどをセッティングしてくれるんだけど、なかなか行きにくく、参加しても、男の人と満足に口も利けない。でも、家庭は欲しいし、子供が欲しい・・・。
そんなようなことを、話してしまった。
「なんだ、そんなことか」
いとも軽く、ハナエさんは言った。
「それなら、いい男知ってるよ。
男が怖いあんたでも絶対に大丈夫。その子とステディーな関係は作れないけれど、慣らし運転にはちょうどいいよ。紹介したげるから、いっぺん、会ってみれば?」
そうして、わたしは初めてヒロキくんと、会った。
ハナエさんが定宿にしている都心のホテルのラウンジに現れたヒロキくんは、言われるように、カッコイイ、というよりは、可愛い男の子だった。
「初めに言っとくね。彼、まだ高校生だから。16歳。お食事だけならいいけど、メイクラブすると立派にあんた、『インコー条例違反』になるからね? ウフフっ」
ええっ!?
「はじめまして、ヒロキです!」
人懐こい笑顔で挨拶してくれた彼は、落ち着いた声で、こう言った。
「うわあ・・・。 サチコさんて、可愛い人ですね。あ、生意気ですよね? 気に障ったら、ごめんなさい・・・」
奇しくも、高校時代の悪夢のAと同じ言葉で始まった彼とのお付き合いは、でも、あの悪夢とは全く違う、ひきこもりがちで奥手で押しに弱いわたしを少しづつフツーの女に、真っすぐに人の顔を見て話すことができるフツーの大人にしてくれた。
彼は言った。
「じゃあ、行きましょうか、サチコさん!」
「行っといで、サチ。ちゃんとフツーの女にしてもらいな」
わたしは、ハナエさんに背中を押されるようにして、10歳も下の高校生のヒロキくんに導かれるまま、ホテルの部屋に上がって行った。
(後編に続く)
至福の時間・・・♡。
だけど、もちろんこれで終わりではない。
彼の手がわたしの身体を這い、わたしのおっぱいやタプタプのお腹やぷにぷにの内股やその奥にある花芽を、優しく、弄る。
彼は、これが好きだ。
わたしも、好き。とっても・・・。
わたしは、彼にされるままになる。当然に、あのゾワゾワが立ち昇って来て、たまらなくなってくる。わたしは時折振り返ってキスをせがむ。くちびるを突き出し、彼と、舌を絡め合う。
「ああ、癒されるなあ・・・。ぼく、サチコの肌、大好きなんだ」
お世辞でしょ?
今年初めて彼と出会い、最初にそう反論した時、彼がわたしを叱ったのがもう遠い昔のようだ。
「ねえ、素直になってよ。ぼく、サチコのカラダ、大好きなんだ。その控えめなところもね。それで癒されるんだよ。そういうチカラが、サチコにはあるんだから。
もっと、自信を持ちなよ。
それがサチコの課題だし、サチコの幸せはその中に、あると思うなあ・・・」
初めて彼に会い、彼のお陰で初めてホントウの絶頂を知った。
その後、一人になって姿見の前に立った時、確かに、わたしはそれまでとは違う自分になれたような気がした。
その時、わたしは、誓った。
昨日までの自分とはもう、サヨナラする! って。
だから、今。わたしは素直にヒロキくんの言葉を受ける。
「うれしい・・・♡」
彼に乳首を弄ばれ、花芽をいじられながら、わたしは、もう一度キスをせがむ。
ヒロキくんとはもう、何度も肌を合わせた。
一戦交えた後、彼は体の芯からリラックスしたような顔をする。時にはわたしを抱えたまま眠ってしまったことさえあった。
彼と出会う前のわたしだったら、
「やっぱり、わたしなんかミリョクなかったんだな・・・」
なんて思っていたかもしれない。
でも、今は違う。
「彼は本当にわたしでリラックスしてくれているんだな。彼の癒しになれているんだな・・・」
心からそう思えるようになった。
その日も。
ヒロキくんは湯船の中でわたしを抱えたまま、わたしの首筋にキスをしながら、
すう・・・。
寝てしまった。
こんなに疲れているのに、来てくれて、抱いてくれたんだな。
わたしの身体を抱いて、安心しちゃったんだな。
うれしい・・・♡。
彼の頬にキスし、彼の耳に、わたしは囁く。
「ヒロキくん♡。こんなトコで寝ちゃうと、カゼひくよ」
「・・・ああ、ゴメン。でも、もうちょっとだけ・・・」
そして、後ろからわたしを抱きしめ、愛おしそうにわたしに頬ずりする、ヒロキくん♡。
・・・しあわせ・・・♡。
わたしは彼よりも10も年上の、大人だ。
こんな日がずっと続くわけがないこともわかっているし、彼を独占できないことも、わかっている。
でも、今だけは、彼は、ヒロキくんは、わたしだけのものだ。
今だけは、この幸せに、存分に浸っていたい。
そう、思わずにはいられない。
ヒロキくんに出会うまでのわたしは、いろいろと、ダメなヤツだった。
それでも、なんとか引っ込み思案の性格を直したかった。人並みに、恋もしたかった。
付属の女子高に進学したわたしは、バレー部に入った。レギュラーとかになれなくてもいい。太目と思い込んでいたから運動は大事だなと思っていたし、みんなの中で揉まれて、自分を鍛えたかったのだ。人の目なんか気にしないように、強くなりたかった。
でも・・・。
生来の押しに弱い性格が、やっぱり、災いした。
入学した年の学園祭で、わたしはある他校の男の子に声を掛けられた。
「キミ、かわいいね! よかったら案内してよ。オレ、この学校初めてでさ」
わたしは同じバレー部の一年生と一緒で、相手も2人連れ。それに、デブスだと思い込んでたわたしは、かわいいと言われて瞬時に舞い上がり、困っているなら、と同じ2人連れの気安さで気軽に応じた。
その声をかけて来たほう。今では名前も思い出したくないので、A、とだけ。
2人は、特にAは、口が上手く、話が面白かった。
わたしたちはすぐに仲良くなってメアドを交換した。そして早くも、その週の週末には2人で会うことになり、次の週にはもう、初体験をしてしまっていた。
それまでこもりがちで引っ込み思案だったわたしは、急に舞い降りた遅い春を謳歌するのに夢中になり、連れのバレー部の子の、
「サチ、あの子ら、ヤバいってよ。やめといたほうがいいって」
そんな諫めも耳に届かないほど、わたしは急速にAに夢中になってのめり込んでしまっていた。
だが、すぐにAは本性を現した。
「おい、いますぐ来い!」
「え、でも部活が・・・」
「んなもん、どうでもいい! オレが来いって言ったら、来い! それとも、オレの言うことが聞けねーのか!」
友達の諫めの言葉が頭をよぎったが、その時はもう、わたしは引き返せないところまで来てしまっていた。Aにのめり込み過ぎていた。Aに捨てられ、前みたいな引きこもりに戻りたくなかった。そんな関係を愛だと、思い込もうとしていた。
あまり詳しくは話したくない。
Aは次第に調子に乗り、押されると断れないわたしに、次から次へと無理な要求を突き付けてくるようになった。
「オイ! オレのダチがお前とヤリてえってよ。相手してやれ」
とか、
「今日は3人で可愛がってやっからよ。どうだ? コーフンするベ? 」
強く押されると、断れなかった。
要するに、わたしはAとその仲間たちの「性のおもちゃ」にされていただけだった。
部活はもちろん、学校も休みがちになり、成績も急降下していった。親も怪しみ始め、担任にも追及されるようになっていた。
わたしは、いろいろと、追い込まれた。
ところが、そんなわたしを見かねて声をかけてくれた先輩がいた。
3年生の、エガワ先輩だった。
「サチ、どうしたのよ? なんかあったの?」
もちろん、レギュラー。成績も優秀。後輩の面倒見もいいし、顔も広い。そんな先輩を見て、いつも憧れていた。こんな人みたいになれたらいいな、と。
とうとう、わたしは、差しのべられた手に、縋った。
大会を控えて超忙しい時期だったにもかかわらず、先輩は、学校とか彼女の親とか、ありとあらゆる手段を使ってAと彼の周辺を黙らせてくれた。写真も撮られていたが、それも全部、処理してくれた。
エガワ先輩、ハナエさんは、わたしの生涯の恩人、師匠になった。
だが、後遺症も残った。
それまでの引っ込み思案と押しに弱い優柔不断はさらに強化され、その上に、わたしは、極度の男性恐怖症に陥ってしまっていた。
それから・・・。
極力男性と関わらない仕事に就きたかったから、保育科のある短大に進学して保育士になり、さらに数年が経った。
仕事は楽しく、やりがいもあった。子供と接する仕事はわたしには向いていたみたいだった。次第に心も生活も安定し、高校時代の悪夢は、次第に過去のものになって行った。
だけど、自分とまわりの環境が安定してくるにつれ、わたしは、寂しさを覚えるようになっていた。
可愛い子供たちと触れ合うにつれ、わたしもこんな子供を持ちたいな。暖かい家庭を持ちたいな。そんな風に思うようになり、その思いは年と共に強く、つのっていった。
今年、年が明けてすぐ、ある集まりがあって、わたしは、生涯の恩人であり、人生の師匠であるハナエさんと再会した。
優秀な大学を卒業した後、商社に入社したとは聞いていたが、その時はもう宮仕えを辞め、実業家として立派に独り立ちしていた。
「さすがですね! ハナエさんは、わたしの生涯の師匠です!」
「ふふ、ありがと!」
高校時代もそうだったが、あれから10年近く経って、ハナエさんはより大きく、ゴージャスな存在になっていた。
「でも、あたしのことなんかより、あんたのほうはどうなの? いろいろ、順調? 仕事とか、恋愛カンケーとか・・・」
そこで、いい歳をして、わたしはぶわっ、と来てしまった。優しい言葉をかけられ、溜め込んでいたものが込み上げきて、不覚にも、泣いてしまったのだ。
「あらあら、どうしたの? 世話の焼けるのはちっとも変わってないわねえ・・・。
よかったら、話してみなよ。あたしに出来ることがあれば、力になったげる!」
わたしは、話した。
男性恐怖症は続いていたけれど、やっぱり、恋はしたかった。時折同僚や学校時代の友達が合コンなどをセッティングしてくれるんだけど、なかなか行きにくく、参加しても、男の人と満足に口も利けない。でも、家庭は欲しいし、子供が欲しい・・・。
そんなようなことを、話してしまった。
「なんだ、そんなことか」
いとも軽く、ハナエさんは言った。
「それなら、いい男知ってるよ。
男が怖いあんたでも絶対に大丈夫。その子とステディーな関係は作れないけれど、慣らし運転にはちょうどいいよ。紹介したげるから、いっぺん、会ってみれば?」
そうして、わたしは初めてヒロキくんと、会った。
ハナエさんが定宿にしている都心のホテルのラウンジに現れたヒロキくんは、言われるように、カッコイイ、というよりは、可愛い男の子だった。
「初めに言っとくね。彼、まだ高校生だから。16歳。お食事だけならいいけど、メイクラブすると立派にあんた、『インコー条例違反』になるからね? ウフフっ」
ええっ!?
「はじめまして、ヒロキです!」
人懐こい笑顔で挨拶してくれた彼は、落ち着いた声で、こう言った。
「うわあ・・・。 サチコさんて、可愛い人ですね。あ、生意気ですよね? 気に障ったら、ごめんなさい・・・」
奇しくも、高校時代の悪夢のAと同じ言葉で始まった彼とのお付き合いは、でも、あの悪夢とは全く違う、ひきこもりがちで奥手で押しに弱いわたしを少しづつフツーの女に、真っすぐに人の顔を見て話すことができるフツーの大人にしてくれた。
彼は言った。
「じゃあ、行きましょうか、サチコさん!」
「行っといで、サチ。ちゃんとフツーの女にしてもらいな」
わたしは、ハナエさんに背中を押されるようにして、10歳も下の高校生のヒロキくんに導かれるまま、ホテルの部屋に上がって行った。
(後編に続く)
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