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第二十四夜 あなたの苦悶する顔が見たい 譲治の夢
しおりを挟む紗和は四回目の施術の告白を終え、出掛ける前の、緊張して敬語を使う前のフランクな地の女に戻って、譲治の背中を流した。心なしか鼻歌まで流れてきそうな雰囲気さえ漂わせて。流し終わると豊かな胸を背中に押し付け、両手を彼の股間に回し幹と睾丸とをイヤらしく揉み扱き、シャワーで洗いながした。
今日の施術、プレイでは、先生はその逸物を紗和に挿入しなかったらしい。しかも射精もしなかったと。
「接して漏らさず・・・。なんだって・・・」
江戸時代の医師、貝原益軒の『養生訓』の中にある訓えだということは知識として知っていた。だが、それを自分の妻から、他人の男に奴隷として差し出した愛する妻の口から男から聞いたセリフとして聞くと、鬱な昂奮を覚えた。妻を何度も絶頂に導いても射精しない、強い男。一方、接して漏らさず、どころか、接しても漏らせない、接しないのに、妻に漏らさせてもらっているだけの情けない男・・・。
鬱勃起に慣れてしまっているのが、ひたすらに惨めだった。
紗和はそんな夫にお構いなく、
「・・・ベッドで待ってるね」
妖艶な笑みを残してバスルームから出て行った。
ベッドの中の紗和はやはり全裸だった。そして、やはり、熱かった。風邪を疑ったが、熱はないし、元気だよ。そう言って笑った。健康そのもの。自分とは対照的だな、と心の中で独り言ちた。
バスルームでの最後の体勢と同じく、紗和は譲治の上に跨って来た。彼の男根は射精後にも拘わらず勃起したままだった。ただし、鬱で、だったが。そして、紗和のそこも、あれだけ絶頂した後にも拘わらず、熱く濡れそぼってそこにあった。男根が握られ、そこに挿入された。蠢く美肉が男根に纏わりつく。その快感は、確かにある。そのまま突っ走りたい。そんな欲求も、確かにある。鬱の勃起だが今なら、行けるかもしれない。そんな期待が否応にも高まる。そして紗和は熱い身体を夫に重ねた。
「ん・・・、大好き、あなた・・・」
微弱な灯りに蠱惑の瞳の奥が光った。思わず抱きしめ、唇を奪う。抱きしめた手が柔肌を撫でながら下に降り、柔らかな丸い尻を掴む。そして、ゆっくりと、揺らす。高まる、昂まる・・・。
来て、出して。そのまま、私の中に気持ちをぶちまけて!・・・
紗和の心の声が聞こえるような気がした。
今ならイケる!
譲治は紗和の尻をむんずと掴み、前後に揺らした。男根が紗和の蜜壺にグイグイ締められる。
「あ・・・、あなたっ、・・・す、スゴイっ!」
「さ、紗和っ」
「こ、こんなにっ奥、奥までっ!・・・ああっ!」
「紗和っ!」
「あなたっ!・・・あなたっ!」
フィニッシュはもうすぐそこに来ていた。今度こそ、今度こそっ!
そう思った直後だった。
譲治を切なげに見下ろす紗和の瞳の奥の、蠱惑のさらに向こう側に淡く光る微弱な灯りを見た途端、彼の男根は急激に力を失い、紗和の奥から退き、萎えた。
「・・・紗和・・・」
「・・・あなた・・・」
紗和はぐったりと彼に倒れ込むように抱きついた。
あれだ。あれが、原因だ。
汗ばむ紗和の白い肌を抱きながら、譲治はようやく、核心に触れたような感触を掴んだ。
朝になり、先生にLINEした。
連続した記憶の中のごく一部分だけがどうしても、思い出せない。そんな症例はありますか? と。
先生にしたのはそういう質問だった。例によって紗和の「施術」についての話は出さなかったし、いわゆる「3P」の話も、もちろん打ってはいない。
土曜だから返信は月曜だろうと思っていたが、小一時間ほどで返信が来た。
「まだ断定はできませんが、解離性(かいりせい)健忘症の中の選択的健忘というものだと推察できます。もう一度ブレイクして、あなたの診察をしてみましょう。今までの施術の効果が実を結んだのかもしれません・・・」
明後日に診察を受ける予約を入れた。
紗和は蠱惑オンリーの、健康的な妻に戻っていた。しかも、ブレイクの件を伝えると、
「実はね、先生から与えられている命令があるの・・・」
それに協力して欲しい、と言った。
先生から与えられている、命令・・・。
つまり先生のいない、「プレイ」ということか。
「電車の中で、オ●ンコとケツの穴にオモチャを入れて一時間ガマンしなさい、って・・・」
先生と紗和の異様な濃い関係性に触れる度に、譲治の胸は苦しいほどに痛み、昂奮が襲った。
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