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19 レナの家族
しおりを挟むサキさんと別れ、家路についた。
やっぱり、朝までずっと一緒に居たかった。彼と逢瀬し、別れるといつもその思いに囚われる。自分がそうしたい、というより、サキさんの心がそれを望み、叫んでいるのが聞こえるような気がして切ない。
土曜日の、郊外に向かう電車の吊革に捉まりながら、レナは、今日一日の情景をリフレインし、昼間散々に舐められ、イジられ、そしてサキさんの狂暴な肉棒で犯された股間の感触を思い出し、再び疼かせていた。
「去年、ある出来事があるまでは、単身赴任中の父を持つ、ごく普通の家だったんです。ボロい家ですけど、それなりに温かい、家でした」
サキさんのは、カリが大きい。
サキさんのジャケットの下で、レナの手がイヤらしく蠢く。そのカリの縁を親指でなぞりながら、残った指で亀頭を包むように揉み込む。
サキさんは、そっと目を閉じ、ジャケットの上からレナの腕に手を添えてリクライニングを倒した。レナも、添い寝をするようにしたかったが、ひじ掛けが邪魔だった。
今度は、普通車にしよう。ひじ掛けが、上がるから。
レナは、父が好きだった。
父の影響でサッカーをはじめ、地元のクラブチームに入り、女の子でサッカーをやる子が皆そうであるように、男の子たちに混じってボールを蹴る日々が続いた。女の子だけのサッカーチームは、中学に上がらなければ、ないからだ。中学は私立の、強豪女子サッカーチームのある学校に行こうとまで、思っていた。
しかし、その夢は諦めざるを得なかった。
父の会社が倒産し、父は転職先の、海を渡った先にある工場に単身で赴任せねばならならなくなった。サラリーも減り、授業料の高い学校など行けようはずもなかったのだ。母も働きに出るようになり、それでなんとか家庭も回るようになった。
父はひと月に一度は帰って来ていたが、そんな父を、母は罵声でしか迎えなかった。
母に、日々の生活の鬱積した憤懣を叩きつけられるだけの帰宅に、父の足は次第に
遠のき、ふた月が三月に、半年になり、その分、母のストレスは増し、レナ達兄弟への風当たりも増していった。
そして去年の夏。あの中国人の女が家に来た。父の子を宿したと、女はたどたどしい日本語と広東語とを織り交ぜながら、狭い玄関先で喚いた。
離婚こそしていないが、もう家族は、崩壊している。
ヨウジだけが、レナの家族の最後の欠片だった。
荒れる母に変わって弟の世話をすることで、壊れてしまった家族の形を守ろうとした。そんな陰鬱とした中、同級生のタイチに縋ったり、軽々しくナンパについて行ったりして、鬱積したものを晴らす日々が過ぎて行った。
ある日、立ち寄った本屋で見かけた、そのファンタジー小説が並ぶ片隅にあった本を読んだことが、レナを淫靡な世界へと誘うきっかけとなった。
それは、成人男性向けに書かれた、SMもどきの小説だった。
主人公の青年が村を襲う悪魔の集団をやっつける、たわいもない冒険小説だったが、レナはその悪魔のイメージに魅了された。狼の頭と尾を持つ悪魔は夜な夜な村の生娘を攫ってはその巨大な肉棒で犯し、破瓜の血を啜って、悪魔の子種を孕ませる。
その肉棒は黒々とした木の幹のように太く、竿の表面がバークのようにごつごつ盛り上がり、常に樹液のように精液を滴らせ、妖しく鈍く、濡れ光っている。
攫われた少女たちは皆、恐怖と苦痛に苛まれるが、次第に悪魔のそのグロテスクな男根の虜になり、男根にひれ伏し、自らすすんで濡れた股を開いて受け入れるようになってゆく・・・。
我を忘れて立ち読みし、ついには参考書と他のどうでもいい本に紛れ込ませて買って帰った。そしてベッドの中で読みふけり、悪魔の性行為の描写の部分では自ら下着を脱ぎ、尻を掲げて股間をまさぐり、あたかも悪魔の男根を尻から受け入れるかのように、慰め、深く絶頂するようになった。
そんなレナがサキさんのブログに出会ったのも、必然だったかもしれない。あの、小説の中だけだと思っていた悪魔が、今、隣にいる。
凶悪なグロテスクなその男根を、レナは、撫で擦っていた。
サキさんのペニスを愛撫しながら、レナはサキさんの耳の中に、声と舌とを滑り込ませた。
「わたし、サキさんになら、ハメツ、させられてもいいです」
レナの唇がサキさんの耳をなぞり、息を吹きかける。
「お願いです。抱いて下さい。今すぐ」
あれだけのプレイで性感を昂めさせられ、しかもスパイ小説のような行動をさせられ、レナは非日常の世界へと引き込まれていた。
「サキさん。愛してます。今すぐ、わたしを、犯して・・・」
彼は、ゆっくりと立ち上がり、レナの手を取った。
ガラガラのグリーン車を通り抜け、トイレの個室に連れ込んだ。小便の匂いが立ち昇る便器を跨ぎ、壁に両手を突かされた。スカートが捲り上げられ、尻が曝された。ショーツは着けていなかった。そういえば、ホテルからずっと、穿いていなかった。
もう、そこは、愛する男を欲して、しとどに濡れそぼっていた。前戯もなしに、それはレナのヴァギナを強引に押し開き、這入って来た。
「ぐ、うわっ!・・・」
強烈な快感。レナは慌てて掌を口に当てた。
悪魔の、その木の幹のようにごつごつした凶悪な異形が、レナを犯していた。膣の内壁が大きく広がった傘の縁で擦られ、えぐられた。レナの淫水を刺激する個所を残酷に弄り、じょぼじょぼ音を立てて液体が溢れ、太腿をつたい、便器に流れ落ちてゆく。
「うっ! むっ! ん、ん、ん、っぐっ、ぐわっ、ん、ん・・・」
レナの股間でリズミカルに暴れる男根。亀頭が容赦なく子宮を突き、押し広げる感触が脳天を突き抜け、すぐに絶頂した。何度も痙攣し、ヴァギナを収縮させるが、悪魔の剛毅な男根が怯むことはなかった。何事もなかったように強引な注送が続く。女は、そんな狂暴には、ひれ伏すほかはない。
おぞましいほどの快感が昼間のやぷーの舌以上に身体中を這い回り、身体中の毛穴を刺激し、暑苦しいトイレの中に籠る熱気以上に、レナの汗を絞り出した。
高級ホテルのスイートルームの、キングサイズのベッドの上よりも、自分にはこの小便臭いトイレで無理矢理犯されるのが似合っている。いや、このトイレで犯される方が、レナの奥底にある何かを呼び覚まし、より快楽の度を深めている。
快感のあまりの強烈さに、逃れようとサンダルの踵が浮き、赤いペディキュアの爪先に力が入る。しかし、男の逞しい手がレナの尻を逃すことなはく、その暴行とも言えるほどの激しい突きを回避するすべはなかった。
レナは指を噛んだ。そうでもしていないと、思い切り快楽の叫びを放ってしまいそうだった。狭いトイレの中に、押し殺した吐息と身体から発する熱気が充満する。
「噛むなら、これ噛んでいい」
サキさんの指が口に入れられる。狂暴な容赦のない責めを続けながら、優しい言葉と気遣いを受けて、レナの小さな胸は小さく鳴き、心がメロメロにとろけてゆく。
だが、愛する男の指に噛みつくなんて出来ない。夢中で舌を絡め、しゃぶり、吸った。その唾液で濡れた指が顎を掴んで強引に後ろに向けられる。レナは、股間と口とを悪魔の男根と舌とで犯され続ける。
「僕に、殺されてもいいのか」
サキさんは、激しい突きを食らわせながら、レナの耳に囁く。
「殺して! わたしを、殺して! サキさんに、殺されたい!」
興奮の中、レナはそう、口走っていた。だが、言葉にはならない。
言葉にするには、サキさんの指を噛むのを止め、口を開かねばならない。口を開けば、止めどもない、嬌声が迸ってしまう。新幹線のトイレの中で、凶悪な男根を股間に受け入れ、何度も絶頂し、悶えまくっているのを知られてしまう。
「自分から望んだくせに。淫らな女にされて、性奴隷になりたいと、願ったくせに。
イヤらしい調教をされたいと、志願したくせに。僕のせいにするなんて」
そうです。わたしは、淫らな、スケベな、女なんです。イヤらしいことを一杯されてイキまくるのが好きな女子高生なんです。
指で口を犯されながら、レナはそう、叫んでいた。悶えと共に、声にならない声を、上げていた。
男の指が、レナの首にかかり、頸動脈を圧迫した。気の遠くなるほどの幸福感に包まれる。その幸福の中で、レナは最後の絶頂をした。目が別の次元を垣間見ていて、口から溢れた唾液が流れ落ちる。
「いくぞ」
レナを根底まで揺さぶり責め続けた凶悪な男根が、木の幹が抜かれ、大量の白濁し泡立つ愛液が、レナの赤く爛れた股間からドロッと流れ落ちた。
すぐさま顔を抑えつけられ、レナを暴虐に責め、子宮を突きまくっていた亀頭が強引に口をこじ開ける。それを易々と咥え、飲み込む。喉の奥まで。
数度の間欠で放出されたおびただしい精液を、愛する悪魔の樹液を、喜悦の涙を流しながら、奴隷の幸せに包まれながら、レナは全て飲み下した。
今日も、母は遅いようだ。ヨウジも、まだ帰っていない。
でも、それも、もう、どうでもいい。
ポーチを机に放り投げ、快く疲れた身体をベッドに放りだした。
口元から、サキさんの精液の匂いが立ち昇る。愛する男に女として求められ、散々に責め抜かれ、最高の快感を与えられた幸せ。それが再現され再生される。
あの破壊力は、サイトーさんには無い。
エロスとタナトゥス。生と、死。
レナは二人の神を前にしていた。
サイトーさんは、安心と安らぎと未来をくれる。
サキさんは、最上の快楽とレナの心の深奥への理解をくれる。
レナが生きるためには、どちらも大切なものなのだ。どちらかを選ぶなど、出来ない。
だったら、神様の方に選んでもらえばいい。
「僕の雇い主は、言ってみれば、神の様なものさ」
サキさんは、言った。
「ただ、『神のようなもの』以上の存在には絶対に成れない。
彼も人間だからね。いつかは死ぬ。僕にはなくて、彼にあるもの。彼は死を恐れてる。彼の唯一の弱点は、いずれ死ぬってことさ。そしてその時、僕は本当の意味で、自由になれる」
サキさんが何処の誰であろうが、何者であろうが、構わない。もう、どうなっても、どうされても、いい。
ついさっきまで、死ぬほど責められたばかりなのに、もう思いを募らせている。
「悪いけど、しばらく会えない」
駅での別れ際、サキさんはそんな残酷なことを言う。
「しばらくって、どれくらい?」
サキさんに抱きつき、さっきまでレナを蹂躙した、愛しい男根を腹で感じながら、レナは愛する男の顔を見上げた。
「また、連絡する。でも、今度調教する時は、お前のプレイルームで、お前の毛、剃るよ。いいね」
ああ。
どうしようもなく、乳首が、股間が、クリトリスが、ヴァギナが、子宮が・・・。愛する男を恋しがる。恋しがって、泣いている。また、思い切り死ぬほど責められたがって、疼いている。
こんなに染められてしまった以上、別れるなんて、出来っこない。
レナはサイトーさんにLINEした。
愛しい男に会えない寂しさを紛らわすには、彼が必要だった。すぐに返事はきた。
これでなんとか、明日も生きられる。レナはタフだ。自ら気合をかけ、起き上がった。シャワーを浴び、家族のために、夕ご飯を作るために。
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