エステティシャン早苗

MIKAN🍊

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3.芙美子

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「無能な木っ端役人どもめ。税金ばかりふんだくりやがって」
猛は冷蔵庫のドアを力任せに閉めた。吞み過ぎて喉が渇いていた。
「誰の事です?」と、妻の芙美子が尋ねた。
「何だ。起きていたのか、びっくりするじゃないか。ああ、警察署長の事か」
そう言いながらレモン水を喉に流し込んだ。

「お客様はもうお帰りになったんですか」
「ああ帰った。寝る時は一人が良い」
「早苗の事が明るみになると記者がうろつきますから気をつけて下さいな」
「フン。嫌味を言うために起きてきたのか」
「早苗の事が心配なだけです」
「バカ娘め。証券会社に就職させてやったのに、妻子持ちの上司と不倫なんぞしやがって。棄てられた末に仕事まで失って、何をやってるのかと思ったら訪問販売の事務だと?もう仕事なんかせんでいい!」
芙美子は黙って冷蔵庫を開けた。
「おうどんでも作りましょうか」
「そうだな。そうしてくれ。目が覚めた」

台所に立ち、芙美子は話しかけた。
「今度の方も随分お若いのですね」
「若い方が良いだろう。誰だって」
自分の娘と同じ位の年の女を抱くというのは、どういう神経なのだろうと芙美子は思った。
しかも髪型や表情まで何処となく娘に似ている。

「早苗の保釈がうまくいくと良いのですけど」
「弁護士と会った。犯罪歴は消せないそうだ。大学も行かせた。ほとんど日本に居なかったがな。ドイツ、アメリカ、オーストラリア、あとはイギリスか。留学しても英語一つ話せやしない。最初の就職はわずか一年で失敗。男とばかり遊び呆けて。いったいあいつは何がしたいのだ」

芙美子はうどんを茹でながらホホホと笑った。
「エステティシャンとかになりたいんですって」

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