ハウスDr.園子

5.ロールプレイング

「ワレメでもタマでも何でも良いから出せよ！お前ら。『奥さん！ここ！パックリ割れてますよ！ああ大変だ。ワレメちゃんが水漏れしてますよ！ここ！』ってやるんだろーが！しっかりしろよお前ら。金欲しくねえのか？金のためにやってんじゃねえのか？あ？しんみりしやがって。事務員の方が元気じゃねーか。見習えよ。ねえ早苗ちゃん？おし！じゃ各班から報告！終わったら班ごとに作戦会議！以上！」

「あざっす！」
所長は股間をボリボリ掻きながら着席した。

一班の係長、椎名園子が起立して先週の成果と本日の予定を簡単に報告する。
「…でありました。土曜日に着工した菊池邸周辺のタマはまだ見込みあります。今朝も一件在宅訪問して来ました。屋根、サイディング、水周りどれでもイケます」
「アポは？」所長が尋ねた。
「明日午前中です」
「同行する」
「あざっす。以上です」

六班の報告が終わると約15分間、各班で所員同士の営業ロールプレイングが行われる。朝のルーティンだ。

「ピンポーン」
「はい。どなた？」
「おはようございます！」
「どちら様でしょうか？」
「あ、えーとですね。今度この先で工事する事になりまして。今日はご挨拶に伺いました！」

先輩所員がダメ出しをする。
「あーダメだダメだ。そんなんじゃ！もっとこうフランクにやらねえとさ…」
「肩の力が入り過ぎ。硬いのはチンチンだけで良いんだぞ！」
どんな野次があっても真面目にやらなければならない。
結果の出てない者は特にそうだ。