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3.犬かきバンザイ!
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「日本勢、頑張ってるなあ」
壁にかかった50型のデジタルサイネージを眺めながら祐馬は感心した。
夏休みに入る直前の社食は派遣や請負の社員がぐっと減って空いていた。
普段なら長蛇の列。まるで家畜みたいに並んで代わり映えしないドッグフードにありつくのだ。
「よっ!」
同期のリュウが空いている祐馬の隣に座った。
トレイを覗き込むと、うな丼だった。
「お、うな丼かよ。豪勢だな」
「たまには精をつけなきゃな。お前はなんだ?」
「いつものドッグフードに小鉢とトン汁だ」
「ここのドッグフードもうちっと美味いと良いんだけどな」
「安いからしょうがねえだろう」
リュウは山椒をかけて吸い物を一口すすった。
「どうだ、勝ったのかテニス?」
「おお、やったやった。日本銅メダルだ」
「頑張ってるよな、日本勢」
「玉を追いかけるのは得意中の得意だからな」
「雑種も血統書付きも関係ない。それが良いとこだ。日本が勝つと嬉しいよ。猫には負けたくないけどな!」
「猫にゃムリさ。あいつらすぐ飽きる」
「体操はスゲーぜ。クルクル回っちゃってさ」
「だなー。体操は猫に敵わない」
「しかしどの競技にしても金の壁ってのは厚いよなあ」
「運もあるからな。それがワンニャンピックだわな。何が起こるかわからない」
「おい、それよりお前どうした、脚?治ったのか」
祐馬は足元に転がした杖を指した。
「松葉杖はもういらないくらいにはな」
「そうか、そりゃ良かった。ひき逃げの相手は見つかったのか?」
「まだだ。警察は無理だろうってさ。猫ってのは逃げ足が速い」
「やっぱり猫か。見たのか」
「間違いない。猫だった」
リュウは旨そうにうな丼をほお張った。
「本当は脚もう治ってんだろ?」
「なんでそんな事言うんだ」
祐馬はエジプト豆とセロリのサラダをムシャムシャ食べた。
「俺が紹介した女医だよ、とぼけるな」
「ああ、確かに美人ではある」
「治ってるくせにまだ痛いフリしてりゃ、いつまでもあの女医さんに会えるからな」
「バカ言え。そんなヒマじゃねえよ。でも整骨医にしちゃなかなかイイ女だ」
「だろう?ちっ、俺も交通事故に遭わねえかなあ」
デジタルサイネージの中では女子水泳400メートル個人メドレーのダイジェストが流れていた。
「やっぱり猫はダメだな、水はな!」
「耳に水が入るのがイヤなんだろう」
「うはは!そうなのか?」
「自由形は水泳の花形だもんな」
「やっぱり水泳は犬だ。犬掻きに勝るもんはねえ!」
「犬掻きバンザイ!!」
壁にかかった50型のデジタルサイネージを眺めながら祐馬は感心した。
夏休みに入る直前の社食は派遣や請負の社員がぐっと減って空いていた。
普段なら長蛇の列。まるで家畜みたいに並んで代わり映えしないドッグフードにありつくのだ。
「よっ!」
同期のリュウが空いている祐馬の隣に座った。
トレイを覗き込むと、うな丼だった。
「お、うな丼かよ。豪勢だな」
「たまには精をつけなきゃな。お前はなんだ?」
「いつものドッグフードに小鉢とトン汁だ」
「ここのドッグフードもうちっと美味いと良いんだけどな」
「安いからしょうがねえだろう」
リュウは山椒をかけて吸い物を一口すすった。
「どうだ、勝ったのかテニス?」
「おお、やったやった。日本銅メダルだ」
「頑張ってるよな、日本勢」
「玉を追いかけるのは得意中の得意だからな」
「雑種も血統書付きも関係ない。それが良いとこだ。日本が勝つと嬉しいよ。猫には負けたくないけどな!」
「猫にゃムリさ。あいつらすぐ飽きる」
「体操はスゲーぜ。クルクル回っちゃってさ」
「だなー。体操は猫に敵わない」
「しかしどの競技にしても金の壁ってのは厚いよなあ」
「運もあるからな。それがワンニャンピックだわな。何が起こるかわからない」
「おい、それよりお前どうした、脚?治ったのか」
祐馬は足元に転がした杖を指した。
「松葉杖はもういらないくらいにはな」
「そうか、そりゃ良かった。ひき逃げの相手は見つかったのか?」
「まだだ。警察は無理だろうってさ。猫ってのは逃げ足が速い」
「やっぱり猫か。見たのか」
「間違いない。猫だった」
リュウは旨そうにうな丼をほお張った。
「本当は脚もう治ってんだろ?」
「なんでそんな事言うんだ」
祐馬はエジプト豆とセロリのサラダをムシャムシャ食べた。
「俺が紹介した女医だよ、とぼけるな」
「ああ、確かに美人ではある」
「治ってるくせにまだ痛いフリしてりゃ、いつまでもあの女医さんに会えるからな」
「バカ言え。そんなヒマじゃねえよ。でも整骨医にしちゃなかなかイイ女だ」
「だろう?ちっ、俺も交通事故に遭わねえかなあ」
デジタルサイネージの中では女子水泳400メートル個人メドレーのダイジェストが流れていた。
「やっぱり猫はダメだな、水はな!」
「耳に水が入るのがイヤなんだろう」
「うはは!そうなのか?」
「自由形は水泳の花形だもんな」
「やっぱり水泳は犬だ。犬掻きに勝るもんはねえ!」
「犬掻きバンザイ!!」
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