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こういうハッピーエンドもありですか?

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「実は陛下。第三王子ラスティン様との婚儀を取りやめにして頂けるのでしたら……」
「そうしたらどうなる?」
「実は僕が婚約を申し込みたいと思います」

 そう言葉も高らかに宣言してくれたのは――第四王子クレイモア。
 ラスティンとは双子の弟で、容姿は瓜二つなのに性格は真反対のまさしく紳士。
 王族にしておくにはもったいないほどの……将来は明るいだろうと誰もが噂する美丈夫。
 でも、第三王位継承者までしか用意しないとの王国の法律で彼はもうすぐ、隣国に近い飛び地へと封じられるところだった。
 いい意味での出世。悪い意味での島流し。
 
「クレイ、お前が? しかし、行先はもう変えれないぞ?」
「陛下、お願いがございます」
「フェイ申してみよ」
「第三王子ラスティンを我が男爵家の家令としたのちは、全権を移譲して飛び地の管理監督に当たらせてはいかが、かと。魔族に竜族、その他蛮族の跋扈する土地ですが……ラスティンなら必ずやって除けてくれるはずです!」
「……父親としては息子にそのような暗い未来を与えるのは忍びないが……よかろう、ラスティンや。壮健に暮すが良い」
「ちっ、父上――――っ!!」

 これが、ナーブリー王国第三王子ラスティンの叫んだ王国本土での最後の言葉となった。
 ラスティンはそれからしばらくして、アナスタシアと共に飛び地に移動。魔族だの竜族だのと何とかうまくやりながら、息子が生まれたらしい。
 悪人はしぶといというけど、まさしくその通りだ。

 私は第四王子クレイモアとめでたく結婚。
 彼の智謀はあくどい私をなんとかいさめようとして、その都度、夫婦喧嘩になるけど私は彼が大好きだからいつもでもデレて許してしまう。それに、クレイモア――は私のような銭ゲバ女よりもよほどかしこかった。
 王位継承者である第一、第二王子をさっさと下して、数年後には国王になってしまった。
 私?
 私は二男三女に恵まれ、世間からは第三王子ラスティンを追い出した恐るべき銭ゲバ女、なにもかも奪い取った借金取り? なんて言われながら元気に暮らしています。
 さて、子供たちもそろそろ手がかからなくなってきたから――今度はラスティンが苦戦しているらしい、竜族との対決に乗り出しますかねー?
 
 幼馴染で銭ゲバな許嫁の没落令嬢と婚約破棄してもっと爵位の高い貴族令嬢と結婚したい王子様の泥沼なお話。
 で、した! 
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みんなの感想(2件)

Vitch
2021.04.12 Vitch

>第一王子妃

多分、正妃の意味なんだろうけど、
第一王子の妃って読めますよ?

和泉鷹央
2021.04.12 和泉鷹央

あ、これで良いのです。
結局、正妃となると他の王子たちの妃ともとれるので。
ありがとうございます。

解除
Vitch
2021.04.12 Vitch

>筋肉女

よし殿下、そのケンカ買った!
絶縁して彼女を嫁にくれ!

和泉鷹央
2021.04.12 和泉鷹央

是非是非。

解除

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