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タイムベル編
06_駆け引き
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獣顔の者たちに、前後を挟まれ、僕たちは完全に逃げ場を失ってしまった。瞬きをして、瞳を開けた時には、首の骨をへし折られていてもおかしくない状況だ。そんな状況にも関わらず、アルバートは、僕と違って平静を保っていた。むしろ、絶望的な状況にある種の喜びを感じている。
「面白くなってきたな、鬼山」
「......」
僕は、いつ殺されるか分からない今の状況に、返事を返す余裕すらなかった。
「坊やたち、一体、こんなところに何しに来たの?」
蛇女のムグリが、僕たちに話しかけてきた。ここに来た理由を聞かれたが、正直に、この人たちに話すべきなのだろうか。ただ、白い大蛇の噂の真相を確かめに来ただけだと。
僕が、返答に困っていると、アルバートが先にムグリの問いに答えた。
「白い大蛇を見に来たのさ。まさか、そんな小さな蛇たちだとは思わなかったけどな」
アルバートは、物怖じしていないように見えるが、よく見ると、彼の手は、恐怖で小刻みに震えていた。表面上は、強がっているが、内心では彼も、目の前の状況に底知れない恐怖を感じているようだった。
「ほーう。なかなか度胸のある子供じゃないか。しかし......」
ライオン男は、アルバートを見て、一旦、称賛するものの、何かを感じ取ったのか、顔をしかめ、途中で話すことをやめた。
「小さな蛇たちって、この子たちのことを言ってるの。かわいいでしょ。私の友達なの。かわいいけど、気をつけて、この子たちはね。猛毒の牙を持っているの」
ムグリの足元から、小さな白蛇たちが出てきて、僕たちの周りを囲った。変な動きを見せれば、すぐさま、この白蛇たちが襲いかかると言わんばかりだ。
「このガキの言う大きい白蛇とは、お前のことを言っているんじゃないのか、ムグリ」
狼男が、両腕を組み、壁にもたれかけながら、言った。
「あら、私は、蛇の姿は、好きじゃないの。見せたくないのよ」
ムグリもまた、人間の姿をしているが、蛇に姿を変えられるようだ。だとすれば、同級生の言っていた白い大蛇の正体は、ムグリのことだろう。
「あなたたちは、僕たちをどうするつもりなんですか?」
僕は、今まであまりの緊張と恐怖でなかなか話し出すができなかったが、勇気を振り絞って、ムグリに向かって言った。
「そうね、どうしようかしら......」
ムグリが、少し考え込むと、狼男が言った。
「考えることはねーよ!ささっと、食っちまおうぜ。跡形もなく。ここじゃあ、誰の目にもつかねー」
狼男のアウルフは、鋭い目つきで言った。
僕たちは、獣顔の人たちに食われてしまうのかもしれない。食べられてしまうのならば、ここに来なければ良かったと、今さらになって後悔した。
「いいのか。親には、ここに行くことを伝えている。俺たちを食えば、親が警察に連絡して、ここまで捜索の手がまわるかもしれないぜ」
アルバートが、そう言い放つと、狼男のアウルフは、苛立った顔で言った。
「なんだと、このガキ!俺たちを脅迫しているのか!調子にのりやがって!今すぐにでも、お前の顔に食らいつくことだってできるんだぞ」
アルバートとアウルフは、お互いににらみ合い、火花を散らす。いつ、ここが真っ赤な血に染まってもおかしくない。
僕たちは、果たして生きてここから出ることができるのだろうか。現状、かなり厳しいだろうけれどーー。
「面白くなってきたな、鬼山」
「......」
僕は、いつ殺されるか分からない今の状況に、返事を返す余裕すらなかった。
「坊やたち、一体、こんなところに何しに来たの?」
蛇女のムグリが、僕たちに話しかけてきた。ここに来た理由を聞かれたが、正直に、この人たちに話すべきなのだろうか。ただ、白い大蛇の噂の真相を確かめに来ただけだと。
僕が、返答に困っていると、アルバートが先にムグリの問いに答えた。
「白い大蛇を見に来たのさ。まさか、そんな小さな蛇たちだとは思わなかったけどな」
アルバートは、物怖じしていないように見えるが、よく見ると、彼の手は、恐怖で小刻みに震えていた。表面上は、強がっているが、内心では彼も、目の前の状況に底知れない恐怖を感じているようだった。
「ほーう。なかなか度胸のある子供じゃないか。しかし......」
ライオン男は、アルバートを見て、一旦、称賛するものの、何かを感じ取ったのか、顔をしかめ、途中で話すことをやめた。
「小さな蛇たちって、この子たちのことを言ってるの。かわいいでしょ。私の友達なの。かわいいけど、気をつけて、この子たちはね。猛毒の牙を持っているの」
ムグリの足元から、小さな白蛇たちが出てきて、僕たちの周りを囲った。変な動きを見せれば、すぐさま、この白蛇たちが襲いかかると言わんばかりだ。
「このガキの言う大きい白蛇とは、お前のことを言っているんじゃないのか、ムグリ」
狼男が、両腕を組み、壁にもたれかけながら、言った。
「あら、私は、蛇の姿は、好きじゃないの。見せたくないのよ」
ムグリもまた、人間の姿をしているが、蛇に姿を変えられるようだ。だとすれば、同級生の言っていた白い大蛇の正体は、ムグリのことだろう。
「あなたたちは、僕たちをどうするつもりなんですか?」
僕は、今まであまりの緊張と恐怖でなかなか話し出すができなかったが、勇気を振り絞って、ムグリに向かって言った。
「そうね、どうしようかしら......」
ムグリが、少し考え込むと、狼男が言った。
「考えることはねーよ!ささっと、食っちまおうぜ。跡形もなく。ここじゃあ、誰の目にもつかねー」
狼男のアウルフは、鋭い目つきで言った。
僕たちは、獣顔の人たちに食われてしまうのかもしれない。食べられてしまうのならば、ここに来なければ良かったと、今さらになって後悔した。
「いいのか。親には、ここに行くことを伝えている。俺たちを食えば、親が警察に連絡して、ここまで捜索の手がまわるかもしれないぜ」
アルバートが、そう言い放つと、狼男のアウルフは、苛立った顔で言った。
「なんだと、このガキ!俺たちを脅迫しているのか!調子にのりやがって!今すぐにでも、お前の顔に食らいつくことだってできるんだぞ」
アルバートとアウルフは、お互いににらみ合い、火花を散らす。いつ、ここが真っ赤な血に染まってもおかしくない。
僕たちは、果たして生きてここから出ることができるのだろうか。現状、かなり厳しいだろうけれどーー。
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