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その2

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それから暫くして、私の両親は婚約者を見つけてきてくれました。地方の貴族らしく、公爵令嬢の嫁ぎ先としては非常に微妙だったわけでございますが、傷物となった私を受け入れてくれるだけでも、感謝しなければならないと言っていました。

私は……別に婚約なんていまさらどうでもよかったのですが、親がうるさいので、従うことにしました。もはや、私の意志でどうにかなるなんてことはありませんでした。

嫁ぎ先は、噂通りの田舎でした。人よりも熊の方が多いと言われるほど緑深い村でした。元々は、王室の狩猟所として整備されていたらしいのですが、殺生を嫌う現皇帝陛下が、この地を利用しなくなったことで、すっかり荒れ果ててしまったそうなのです。聞いた話によりますと、この地を治めるウイリアム家というのは、元々伯爵を世襲していたそうなのですが、私の婚約相手である第23代から、男爵に格下げされたとのことでした。

「公爵令嬢メリー様のご到着!!!」

いくら落ちぶれたとは言っても、邸宅の前に到着いたしますと、その家の侍従たちが出迎えて丁重にもてなしてくれました。公爵令嬢としてのプライドなんてほとんどありませんでしたが、敢えてそう呼ばれますと、これほど辺鄙な地に流されたことが、まだ少しショックでした。

「ようこそ御出でくださいました。メリー様!!!」

中から、私の婚約者と思しき男性がやってきました。私と同い年か、少し上くらいの男性とは思えないほど、肥え太っていて、言い方は悪いですが喋り方は田舎風、そして、どこか人懐っこい笑顔が特徴的でした。

邸宅に招かれて、私は家の人間全員から祝福を受けました。

「この地は田舎でして、都会育ちのメリー様には不自由も多いかと思いますが、どうか、私どもの主人をよろしくお願い申し上げます……」

なんて、都会では考えられないような歓迎を受けました。なるほど、田舎というのは、より一層人間関係が強固なものになると聞いたことがあります。ですから、このように主人と侍従たちとの垣根が低いのです。

「ありがとうございます。私も男爵を支えることができるように頑張りたいと思います!!!」

私は胸を張って、こう言えました。だって、これほど優しくしてくださった人々は、未だかつていなかったのでございますから。非常に期待が持てたのでございます。

しかしながら……私に今まで幸せな瞬間が訪れたことはありませんでした。だから……根拠はなかったのですが、これほど優しくされてしまうと、かえって不安を感じずにはいられないのでした。

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