2 / 7
その2
しおりを挟む
それから暫くして、私の両親は婚約者を見つけてきてくれました。地方の貴族らしく、公爵令嬢の嫁ぎ先としては非常に微妙だったわけでございますが、傷物となった私を受け入れてくれるだけでも、感謝しなければならないと言っていました。
私は……別に婚約なんていまさらどうでもよかったのですが、親がうるさいので、従うことにしました。もはや、私の意志でどうにかなるなんてことはありませんでした。
嫁ぎ先は、噂通りの田舎でした。人よりも熊の方が多いと言われるほど緑深い村でした。元々は、王室の狩猟所として整備されていたらしいのですが、殺生を嫌う現皇帝陛下が、この地を利用しなくなったことで、すっかり荒れ果ててしまったそうなのです。聞いた話によりますと、この地を治めるウイリアム家というのは、元々伯爵を世襲していたそうなのですが、私の婚約相手である第23代から、男爵に格下げされたとのことでした。
「公爵令嬢メリー様のご到着!!!」
いくら落ちぶれたとは言っても、邸宅の前に到着いたしますと、その家の侍従たちが出迎えて丁重にもてなしてくれました。公爵令嬢としてのプライドなんてほとんどありませんでしたが、敢えてそう呼ばれますと、これほど辺鄙な地に流されたことが、まだ少しショックでした。
「ようこそ御出でくださいました。メリー様!!!」
中から、私の婚約者と思しき男性がやってきました。私と同い年か、少し上くらいの男性とは思えないほど、肥え太っていて、言い方は悪いですが喋り方は田舎風、そして、どこか人懐っこい笑顔が特徴的でした。
邸宅に招かれて、私は家の人間全員から祝福を受けました。
「この地は田舎でして、都会育ちのメリー様には不自由も多いかと思いますが、どうか、私どもの主人をよろしくお願い申し上げます……」
なんて、都会では考えられないような歓迎を受けました。なるほど、田舎というのは、より一層人間関係が強固なものになると聞いたことがあります。ですから、このように主人と侍従たちとの垣根が低いのです。
「ありがとうございます。私も男爵を支えることができるように頑張りたいと思います!!!」
私は胸を張って、こう言えました。だって、これほど優しくしてくださった人々は、未だかつていなかったのでございますから。非常に期待が持てたのでございます。
しかしながら……私に今まで幸せな瞬間が訪れたことはありませんでした。だから……根拠はなかったのですが、これほど優しくされてしまうと、かえって不安を感じずにはいられないのでした。
私は……別に婚約なんていまさらどうでもよかったのですが、親がうるさいので、従うことにしました。もはや、私の意志でどうにかなるなんてことはありませんでした。
嫁ぎ先は、噂通りの田舎でした。人よりも熊の方が多いと言われるほど緑深い村でした。元々は、王室の狩猟所として整備されていたらしいのですが、殺生を嫌う現皇帝陛下が、この地を利用しなくなったことで、すっかり荒れ果ててしまったそうなのです。聞いた話によりますと、この地を治めるウイリアム家というのは、元々伯爵を世襲していたそうなのですが、私の婚約相手である第23代から、男爵に格下げされたとのことでした。
「公爵令嬢メリー様のご到着!!!」
いくら落ちぶれたとは言っても、邸宅の前に到着いたしますと、その家の侍従たちが出迎えて丁重にもてなしてくれました。公爵令嬢としてのプライドなんてほとんどありませんでしたが、敢えてそう呼ばれますと、これほど辺鄙な地に流されたことが、まだ少しショックでした。
「ようこそ御出でくださいました。メリー様!!!」
中から、私の婚約者と思しき男性がやってきました。私と同い年か、少し上くらいの男性とは思えないほど、肥え太っていて、言い方は悪いですが喋り方は田舎風、そして、どこか人懐っこい笑顔が特徴的でした。
邸宅に招かれて、私は家の人間全員から祝福を受けました。
「この地は田舎でして、都会育ちのメリー様には不自由も多いかと思いますが、どうか、私どもの主人をよろしくお願い申し上げます……」
なんて、都会では考えられないような歓迎を受けました。なるほど、田舎というのは、より一層人間関係が強固なものになると聞いたことがあります。ですから、このように主人と侍従たちとの垣根が低いのです。
「ありがとうございます。私も男爵を支えることができるように頑張りたいと思います!!!」
私は胸を張って、こう言えました。だって、これほど優しくしてくださった人々は、未だかつていなかったのでございますから。非常に期待が持てたのでございます。
しかしながら……私に今まで幸せな瞬間が訪れたことはありませんでした。だから……根拠はなかったのですが、これほど優しくされてしまうと、かえって不安を感じずにはいられないのでした。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい
小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。
エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。
しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。
――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。
安心してください、ハピエンです――
父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。
その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。
そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。
そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。
愛する貴方の愛する彼女の愛する人から愛されています
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「ユスティーナ様、ごめんなさい。今日はレナードとお茶をしたい気分だからお借りしますね」
先に彼とお茶の約束していたのは私なのに……。
「ジュディットがどうしても二人きりが良いと聞かなくてな」「すまない」貴方はそう言って、婚約者の私ではなく、何時も彼女を優先させる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
公爵令嬢のユスティーナには愛する婚約者の第二王子であるレナードがいる。
だがレナードには、恋慕する女性がいた。その女性は侯爵令嬢のジュディット。絶世の美女と呼ばれている彼女は、彼の兄である王太子のヴォルフラムの婚約者だった。
そんなジュディットは、事ある事にレナードの元を訪れてはユスティーナとレナードとの仲を邪魔してくる。だがレナードは彼女を諌めるどころか、彼女を庇い彼女を何時も優先させる。例えユスティーナがレナードと先に約束をしていたとしても、ジュディットが一言言えば彼は彼女の言いなりだ。だがそんなジュディットは、実は自分の婚約者のヴォルフラムにぞっこんだった。だがしかし、ヴォルフラムはジュディットに全く関心がないようで、相手にされていない。どうやらヴォルフラムにも別に想う女性がいるようで……。
【完結】悪役令嬢に転生したようです。アレして良いですか?【再録】
仲村 嘉高
恋愛
魔法と剣の世界に転生した私。
「嘘、私、王子の婚約者?」
しかも何かゲームの世界???
私の『宝物』と同じ世界???
平民のヒロインに甘い事を囁いて、公爵令嬢との婚約を破棄する王子?
なにその非常識な設定の世界。ゲームじゃないのよ?
それが認められる国、大丈夫なの?
この王子様、何を言っても聞く耳持ちゃしません。
こんなクソ王子、ざまぁして良いですよね?
性格も、口も、決して良いとは言えない社会人女性が乙女ゲームの世界に転生した。
乙女ゲーム?なにそれ美味しいの?そんな人が……
ご都合主義です。
転生もの、初挑戦した作品です。
温かい目で見守っていただければ幸いです。
本編97話・乙女ゲーム部15話
※R15は、ざまぁの為の保険です。
※他サイトでも公開してます。
※なろうに移行した作品ですが、R18指定され、非公開措置とされました(笑)
それに伴い、作品を引き下げる事にしたので、こちらに移行します。
昔の作品でかなり拙いですが、それでも宜しければお読みください。
※感想は、全て読ませていただきますが、なにしろ昔の作品ですので、基本返信はいたしませんので、ご了承ください。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
ハイスぺ副社長になった初恋相手と再会したら、一途な愛を心と身体に刻み込まれました
中山紡希
恋愛
貿易会社の事務員として働く28歳の秋月結乃。
ある日、親友の奈々に高校のクラス会に行こうと誘われる。会社の上司からモラハラを受けている結乃は、その気晴らしに初めてクラス会に参加。賑やかな場所の苦手な結乃はその雰囲気に戸惑うが
そこに十年間片想いを続けている初恋相手の早瀬陽介が現れる。
陽介は国内屈指の大企業である早瀬商事の副社長になっていた。
高校時代、サッカー部の部員とマネージャーという関係だった二人は両片思いだったものの
様々な事情で気持ちが通じ合うことはなかった。
十年ぶりに陽介と言葉を交わし、今も変わらぬ陽介への恋心に気付いた結乃は……?
※甘いイチャイチャ溺愛系のR18シーンが複数個所にありますので、苦手な方はご注意ください。
※こちらはすでに全て書き終えていて、誤字脱字の修正をしながら毎日公開していきます。
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる