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再会

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「王様!」

「おや、まだ喋れるのか?」

 村人は感心しているようだった。

 奇跡を信じるか、信じないのか、そんなのは勝手である。いや、それ以上かもしれない。

「王様……なるほど、そういうことか……」

 村人は懐からナイフを取り出し、自分の胸に宛がった。

「何をするおつもりですか?」

「この女史の魂を抜こうと思ったのですが、私たちは失敗しました。いや、あなたたちにとってはめでたいことでしょう。私たち村人は今から全て滅びます。朽ち果てた大地を踏み荒らす王様よ、そのまま私たちの敵を演じるのであれば、どうか、このまま死を見届けてください……」

「どういうことだ?」

「王様!」

「なんだ?今更……」

「助けに来てくださったのですか?」

「私が?君を?どうして?」

「また戦いたくなったのですね?いいでしょう。この村はほぼ制圧しましたよ。次はどこに行きましょうか?北国にしますか?私の予想ですと、あと1年もすれば叛旗を翻すでしょう……」

「少し黙ろうか。私は彼が死んでいく様を目に留めたいのだ……」

「まあっ、王様ったら!悪趣味ですこと!」

 どうして、これほど簡単に死ぬことができるんだ?どうして、君はこれほど簡単に殺すことができるんだ?

 この幻聴にも似たキャシーの嘲笑を、私は一体どう解釈すればいいんだ?

 我が愛しき妹ルカよ。君は一体何を望んでいるんだ?


「神に栄光の幸あれ!」

 村人は最期に瞳から二滴の涙を零した。

「おい、しっかりしろ!」

 私は死人を救いたいと思った。しかしながら、既に息絶えていた。

「ああっ、面白い光景だこと!」

「キャシー……やっぱり私は君のことがわからない……」

 私は静かに呟いた。
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