婚約破棄 進行中

tartan321

文字の大きさ
上 下
1 / 1

婚約破棄 進行中?

しおりを挟む
「これから婚約破棄を発表する……と思った?おや、にやついている顔が強張ったね……」

 令嬢のアリーは困惑していた。

 どうして?とっくに終わった話……とでも思っていたみたいだ。

「君が嫁ぎたいのはそこの皇太子なんだろうが……簡単に婚約を破棄することはできないよ?」

 アリーの婚約者であるフィリー王子は皇太子を嫌っていた。全てにおいて劣っている。それは誰が見ても明らかなことだった。だから……婚約については譲れないということだった。

「フィリー君……私の婚約にケチを付けようとでもいうのかね?」

 皇太子は余裕たっぷり。

「いいえ、皇太子。ケチを付けようなどとは思いません。しかしながら、アリーは私の婚約者なのですから、これはルール違反です」

「ほうほう……私の所業はルールを超越しているのだが……そうか、君は知らないわけか……」

 当然、皇帝や皇太子の所業を裁くことはできない。彼らそのものがルールなのだから。

「いいでしょう。それなら……この方々はどうしましょうか?」

 フィリーが合図をすると、少女たちが現れた。皇太子は突如目を丸くした。

「皇太子……。無論、あなたの趣味を否定することはできません。しかしながら……彼女たちを寝取った責任……幼子に対する淫行は神の定める罰なんですがねぇっ……」

「私は知らない……」

「そうですか?私の勘違いですか……おい、アリー!」

 アリーが目を丸くした原因は怪しげな壺。その中にあったのは……。

「これが何かお分かりですか?皇太子……」

「知らないなぁっ……」

「そうですか……おい、アリー!これを飲んでみろ!」

「私に……これを飲めと?」

「寝室に置いてあったんだ……君のだろ?」

「あっ……そうだったかしら?」

「そうだ……ほら、飲んでみな?」

「えっ……あっ、いや……その……」

「どうした?飲めないのかい?」

「それは……一体?」

 皇太子は質問した。

「いいえ、私は知りません。ねえっ、アリー?」

「ええっ……あの、フィリー様?」

「どうかしたかい?」

「いや、ちょっと……」

 アリーは私を連れ出した。

「あれは皇太子を殺すための毒薬なんだろう?」

「まさか!」

「皇太子を葬って遺産でも奪おうって魂胆だね?」

「どうして……そんなことを?」

「まあ、いいや。好きにするがいいさ。さて、皇太子のところに戻るかな?」


「あの……」

「あの……」

 皇太子とアリーの声が重なった。

「はい?」

 フィリーは交互に二人を見回した。

「フィリー君……この話はなかったことにしよう……」

「フィリー様……皇太子さまとの婚約は……」


「破棄……!」

 フィリーは高らかに叫んだ。

「それがよろしゅうございます!」

 結局フィリーはアリーとの婚約を成功させた。





しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

👨一人用声劇台本「寝落ち通話」

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。 続編「遊園地デート」もあり。 ジャンル:恋愛 所要時間:5分以内 男性一人用の声劇台本になります。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

婚約破棄されたので、契約不履行により、秘密を明かします

tartan321
恋愛
婚約はある種の口止めだった。 だが、その婚約が破棄されてしまった以上、効力はない。しかも、婚約者は、悪役令嬢のスーザンだったのだ。 「へへへ、全部話しちゃいますか!!!」 悪役令嬢っぷりを発揮します!!!

うちの大公妃は肥満専攻です!

ariya
恋愛
ルドヴィカは一度目の人生を虚しく終える時に神に願った。  神様、私を憐れむならどうか次の生は大事な方を守れるだけの知識と力を与えてください。 そして彼女は二度目の人生を現代日本で過ごす。 内科医として充実な人生を送っていたが、不慮の事故によりあえなく命を落とす。 そして目覚めた時は一度目の生の起点となった婚約破棄の場であった。 ------------------------------------ ※突然イメージ画像が挿絵で出ることがあります。 ※ストーリー内に出しているのはなんちゃって医学です。軽く調べて、脚色を加えているので現実と異なります。調べたい方、気になる方は該当学会HPなどで調べることをおすすめします。 ※※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています

セオリー通り?の王太子と救いの娘

日室千種・ちぐ
恋愛
古の森の娘ユーラは、使命を持って叔父と一緒に生まれて初めて人の国へと旅立った。山脈と古き森に抱かれ外界と隔絶されたその国では、王太子である息子に相応しい妃をと、王妃が国中から年頃の令嬢たちを招待していた。だが王太子リューセドルク本人は、くだらない催しだと興味がない。彼は、昔森の民から国に託された大切な竜たちが、この数年衰弱していることに頭を悩ませていた。竜について情報を得るためだけに、リューセドルクは代々森と交流を保つ辺境領の領主の娘と接触しようとする。だがその娘は、辺境から城まで同道したユーラたちを何故かひどく嫌っていた。一方ユーラは、王城で竜を探すうちに見かけたリューセドルクを、自らの運命の相手と確信する。だが、リューセドルクは竜のことのみならず、母から押し付けられる理想の王太子像に辟易し、疲弊していた——。 王太子と彼を救う娘の定石通りの物語、けれども実は、誰もが悩み、誰もが臆病で、そして誰かを想っている。 

平和的に婚約破棄したい悪役令嬢 vs 絶対に婚約破棄したくない攻略対象王子

深見アキ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・シェリルに転生した主人公は平和的に婚約破棄しようと目論むものの、何故かお相手の王子はすんなり婚約破棄してくれそうになくて……? タイトルそのままのお話。 (4/1おまけSS追加しました) ※小説家になろうにも掲載してます。 ※表紙素材お借りしてます。

悪役令嬢とバレて、仕方ないから本性をむき出す

岡暁舟
恋愛
第一王子に嫁ぐことが決まってから、一年間必死に修行したのだが、どうやら王子は全てを見破っていたようだ。婚約はしないと言われてしまった公爵令嬢ビッキーは、本性をむき出しにし始めた……。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

処理中です...