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その1
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真面目な人間ほど馬鹿を見る、と人は言います。貴族の悪しき習慣が蔓延るこのご時世において、この格言はますます明確になっております。そして、なるほど、それは我が家に最も当てはまる言葉なのだと思いました。
「マリアお姉様!いらっしゃいますか?」
妹の令嬢サリーが、私の部屋にやってまいりました。サリーは、私と違って、元から全ての才能を兼ね備えておりました。容姿は元より、令嬢としての素質であったり、学業であったり、あるいは、剣術、馬術であったり、全ての面で優れておりました。かたや、私はと言いますと……。
人一倍努力を傾けても、何一つ、サリーに勝つことなんてできませんでした。そんなサリーのことを、私は確かに時折羨ましがっておりました。それは当然のことなのです。イヤかどうかは関係なく、私にも汚らしい貴族の血が流れているわけでございます。そして、貴族というのは、いかんせん争いごとが好きでございます。その理由は、将来、自分の家が繁栄することを望んでいるからでしょう。そのためには、強い子孫を残す必要があるわけです。ですから、より優れた人間と婚約すると考えるのが妥当なわけでございます。
そんな優秀さが功を奏した結果、私と違って、サリーは社交界でも華でした。当たり前の話です。公爵令嬢としてパーティーに参加しますと、サリーはいつも多くの貴族から求婚を受けることになります。一方、私は誰からも注目なんてされないのです。ええ、最初からそう決まっているのでございます。
とは言うものの、私は長女でございますから、一応婚約の順番としては、私が最初で、その次がサリーとなるのが、両親としては、世間体的にグッドなようなのです。私の元に直接求婚してくる貴族はいなくて、両親宛てに何通か手紙がやって来るくらいなのです。それもそのはず、公爵令嬢という地位と名誉のみをあてにしている貴族しか来ないわけです。
本当の恋なんて……そんなものは令嬢の華であるサリーしか味わえないものなのだと思っておりました。
「どうしたの?」
私はサリーを招き入れました。
「今夜のパーティーの件なのですけれど……お姉様もいらっしゃいますか?」
サリーがやって来たのは、なんと、パーティーへの誘いでした。
「そうね……気が向いたら行くかもしれないわ……」
「お姉様?是非とも、お姉様に会いたいとおっしゃる方が、本日いらっしゃるのですよ?」
サリーの言葉の意味がいまいちわかりませんでした。私にわざわざ会いたい人なんて、いるはずないと思っていましたから。
「マリアお姉様!いらっしゃいますか?」
妹の令嬢サリーが、私の部屋にやってまいりました。サリーは、私と違って、元から全ての才能を兼ね備えておりました。容姿は元より、令嬢としての素質であったり、学業であったり、あるいは、剣術、馬術であったり、全ての面で優れておりました。かたや、私はと言いますと……。
人一倍努力を傾けても、何一つ、サリーに勝つことなんてできませんでした。そんなサリーのことを、私は確かに時折羨ましがっておりました。それは当然のことなのです。イヤかどうかは関係なく、私にも汚らしい貴族の血が流れているわけでございます。そして、貴族というのは、いかんせん争いごとが好きでございます。その理由は、将来、自分の家が繁栄することを望んでいるからでしょう。そのためには、強い子孫を残す必要があるわけです。ですから、より優れた人間と婚約すると考えるのが妥当なわけでございます。
そんな優秀さが功を奏した結果、私と違って、サリーは社交界でも華でした。当たり前の話です。公爵令嬢としてパーティーに参加しますと、サリーはいつも多くの貴族から求婚を受けることになります。一方、私は誰からも注目なんてされないのです。ええ、最初からそう決まっているのでございます。
とは言うものの、私は長女でございますから、一応婚約の順番としては、私が最初で、その次がサリーとなるのが、両親としては、世間体的にグッドなようなのです。私の元に直接求婚してくる貴族はいなくて、両親宛てに何通か手紙がやって来るくらいなのです。それもそのはず、公爵令嬢という地位と名誉のみをあてにしている貴族しか来ないわけです。
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「どうしたの?」
私はサリーを招き入れました。
「今夜のパーティーの件なのですけれど……お姉様もいらっしゃいますか?」
サリーがやって来たのは、なんと、パーティーへの誘いでした。
「そうね……気が向いたら行くかもしれないわ……」
「お姉様?是非とも、お姉様に会いたいとおっしゃる方が、本日いらっしゃるのですよ?」
サリーの言葉の意味がいまいちわかりませんでした。私にわざわざ会いたい人なんて、いるはずないと思っていましたから。
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