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その8
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私は悪びれた女の子になることができなかった。私が王子様から言われたこと、これからどうするべきか迷っていること、その全てをカーチャに話した。
「はあっ、まさか私よりも早くあなたが嫁ぐことになるだなんて……随分と不思議なことね」
カーチャはこう言った。不思議なこと、確かにそうだと思った。恋に疎いこの私が、女の道を究めるカーチャよりも先に、それも、王子様と婚約するだなんて、可笑しな話だった。
「でも、王子様は本気なんでしょう?マリアのことを心から愛しているんでしょう?」
「ええ、多分……そういうことになるのかしら?」
私はきちんと答えることができなかった。正直、何も分からなかった。王子様が本当に私のことを愛しているのか?
あるいは、単に私のことを揶揄っているだけなのではないか?
そんなことをぐるぐると考えていると、やっぱり、私が好かれる理由なんて見当もつかなかった。
「マリア、あなた、もっと自信持った方がいいわよ?だって、王子様と婚約するんでしょう?」
カーチャの声は、少し説教じみていた。
「まあ、それはそうなんだけど……」
「だから!そういう態度はこれから止めなさい!臣民として……ロイヤルウェディングを楽しみに出来なくなるでしょう?」
「ごめん……」
「まあ、でも王子様が決めたことだから、それはいいことだと思うわ。おめでとう、マリア!」
結局のところ、カーチャは私のことを祝福してくれた。
「そうと決まれば、お祝いの料理を作らないとね。ああ、もう少しいられるかしら?お昼ごろになると、お母様が王都から帰っていらっしゃるから。それで何か料理を作って頂きましょうよ!」
彼女は、それが、まるで自分の身に起きたことであるかのように喜んだ。
「さあ、お祝いよ、お祝い!!」
こうして私は、カーチャと、その両親から盛大なる祝福を受けることになった。
出来過ぎている……まだ、何もしていないのに……。
でも、この時ばかりは、そんな考えを止めてみた。
カーチャの両親は、私の好みを心得ていて、その通りの料理をこしらえてくれた。
「どう、カーチャ?美味しいでしょう?」
お母さんが、笑みを浮かべて、私の皿にたくさん盛ってくれた。
「ええ、とっても美味しいです。ありがとうございます」
「さあ、どんどん食べてちょうだい!ほら、あなたが喜ぶと、カーチャもとても嬉しそうよ!」
カーチャも時々笑っていた。私は……何も考えずに食べ続けた。
「はあっ、まさか私よりも早くあなたが嫁ぐことになるだなんて……随分と不思議なことね」
カーチャはこう言った。不思議なこと、確かにそうだと思った。恋に疎いこの私が、女の道を究めるカーチャよりも先に、それも、王子様と婚約するだなんて、可笑しな話だった。
「でも、王子様は本気なんでしょう?マリアのことを心から愛しているんでしょう?」
「ええ、多分……そういうことになるのかしら?」
私はきちんと答えることができなかった。正直、何も分からなかった。王子様が本当に私のことを愛しているのか?
あるいは、単に私のことを揶揄っているだけなのではないか?
そんなことをぐるぐると考えていると、やっぱり、私が好かれる理由なんて見当もつかなかった。
「マリア、あなた、もっと自信持った方がいいわよ?だって、王子様と婚約するんでしょう?」
カーチャの声は、少し説教じみていた。
「まあ、それはそうなんだけど……」
「だから!そういう態度はこれから止めなさい!臣民として……ロイヤルウェディングを楽しみに出来なくなるでしょう?」
「ごめん……」
「まあ、でも王子様が決めたことだから、それはいいことだと思うわ。おめでとう、マリア!」
結局のところ、カーチャは私のことを祝福してくれた。
「そうと決まれば、お祝いの料理を作らないとね。ああ、もう少しいられるかしら?お昼ごろになると、お母様が王都から帰っていらっしゃるから。それで何か料理を作って頂きましょうよ!」
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「さあ、お祝いよ、お祝い!!」
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出来過ぎている……まだ、何もしていないのに……。
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「どう、カーチャ?美味しいでしょう?」
お母さんが、笑みを浮かべて、私の皿にたくさん盛ってくれた。
「ええ、とっても美味しいです。ありがとうございます」
「さあ、どんどん食べてちょうだい!ほら、あなたが喜ぶと、カーチャもとても嬉しそうよ!」
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