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その7

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「私は……お嬢様がどんな姿であって、どんな考えをお持ちであるとしても、それはいいことだと思いますよ」

ロンダ―の答えはいつも決まり切っていた。

そう、そうなんだ。私はロンダ―の答えを聞いて安心した。

「明日は、カーチャのところにでも行ってくるわ。この件について、お話したいと思うの」

「それは、大変結構なことでございますな。それでは、お休みなさいませ……」

「ええ、お休み」

挨拶を終えて、ロンダ―は下がった。私は、部屋の明かりを消して眠ろうと思った。窓から見える夜空を少し眺めてみた。王子様の元に嫁いだら、きっと見られなくなる景色なのだと思った。こうして、息をふうっと吐いて、何も考えずに空を見ていられることなんて、きっともうないのだ。

「どうして、王子様に好かれてしまったのかしら?こんな女なのに?」

しばらく考えたが、理由は全く思いつかなかった。なんとなく眠くなって、そのまま目を閉じたら、私は構わずに寝てしまった。夜が静かに過ぎていった。


翌日になって、私は予定通り、カーチャの元を訪れることにした。カーチャの家まで歩くと、それなりの時間がかかる。しかしながら、わざわざロンダ―に頼んで馬車を用意してもらうほどのことはなかった。

カーチャの家を訪れるのは、一カ月ぶりくらいだった。昔は毎日、互い違いにそれぞれの家を往復するくらいだったが、今となっては、それほど頻繁に会うこともなくなった。

物心がついた頃に、二人のレールは分岐していた。私は何も考えずに好きなことをし続ける子供、そして、カーチャは将来を見据えて鍛錬する大人……いま求められているのは、カーチャのような大人だと、私は思った。


「ごめんください」

カーチャは庭でストレッチをしていた。彼女は本当に美意識の塊だった。

「あら、マリアじゃないの。珍しいわね。どうかしたの?ああ、分かった!この前のお話の続きをしに来たんでしょう?」

カーチャにはどうやらお見通しのようだった。私はこくりと一度頷いた。

「ねえねえ、聞かせてくれる?どうして、あなたがあの時王宮から出て来たのかを?それが知りたくて、昨日は全然眠れなかったのよ!」

明るく振る舞うカーチャ。そして、彼女は恐らく何も知らなかったはずだ。

そう、何も知らなければよかったのだ。あるいは、彼女が知っていることを、全て最初から打ち明けてくれれば、何も問題にはならなかったのだ。



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