親友に婚約者を寝取られて〜婚約破棄は辛くても仕方がない〜辺境に移り住んで自由気ままなスローライフを満喫します

その4

夜になって、お父様が戻られた。

「お父様、折り入ってお話がございます、よろしいですか？」

「どうしたんだ、そんなに改まって。いいよ、何でも話してごらんなさい」

お父様は、私を部屋に招き入れた。

「ありがとうございます。実は私、本日第一王子であられるミズーリ様から、婚約の申し出を受けたわけでございまして……」

私がこういうなり、お父様は、

「それは本当かい？」

と、少し緊張した面持ちで答えた。

「ええ、本当の話でございます」


お父様は、少し考えられてから、

「そうか、それはよかったんじゃないのか？」

と言った。つまり、お父様は王子様の提案を肯定的に捉えていたのだ。

「お父様？それでは、私は、王子様の提案を受け入れて、王子様と婚約しろとおっしゃるわけでございますか？」

「何か不満でもあるのかね？」

お父様はそう言った。

「いいえ、不満ということではございません。しかしながら……恐れ多くも、この私が王子様の妃となることは、到底考えられないことなのでございまして、その……どのように立ち居振る舞うのか、その術も全く分からないわけでございますゆえ……」

「それはなにも、マリアに限った話ではないだろう？」

お父様の言いたいことはわかった。しかしながら、私のような女には荷が重すぎる……そうは考えないのだろうか？

「王子様にも、それ相応のお考えがあってのことなのだろう。だとすると……そのご意向をお受けすると言うのが、我々臣民の務めではないだろうか？」

ああ、やはりお父様は貴族としての世間体を重視するのだと思った。

何時からだろうか？

私のことなんて何も考えてはくれないのだろうか？そんなことを薄っすらと考えてみた。