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その2

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後日、私どもは、第一王子シャルコー様の要請に応じて、城に出向きました。婚約者候補として、最後の会談になる予定でした。お父様は正装、そして、私も全く着慣れていないドレスを身に纏い、城に向かいました。

「この度は、皇帝陛下に拝謁かないますこと……娘のアマネにとりましても、これ以上の歓びはございません……」

城につきますと、まず最初は、皇帝陛下に謁見するところから始まりました。定型の文章を、ひたすら10分くらい、お父様が読み上げました。その間、私はずっと、首を下げていないといけませんでした。正直、あの姿勢は辛いのです。しかしながら、無暗に動くことも出来ません。礼儀を知らない女、とレッテルを貼られてしまっては、大問題なのです。拝謁の広場には、妃様や、私の婚約者であるシャルコー様、そして、他の王家の人々がたくさんいらっしゃいました。ですから、この時ばかりは、私も必死に背筋を伸ばして、耐え忍んでおりました。

お父様の長い挨拶が終わりますと、皇帝陛下は優しく、

「顔を上げてください」

と、おっしゃいました。私はようやく解放されたと思いました。想像よりも大部お年を召しているように感じました。ですから、その表情やお声は、優しさで満ち溢れているように思いました。実際、私の方をご覧になって微笑まれるときは、まるで神様のように感じるほど、大らかなものでございました。

「お嬢さんは……少しお疲れのようかな???」

私は思わず、真っ青になってしまいました。10分間、頭を下げていたせいで、少し身体が変だと思いました。まさか、そのことが皇帝陛下にばれているのではないか、そう思いますと、いてもたってもいられませんでした。

「ああっ…………えええっと…………」

皇帝陛下に何か声をかけられたのですから、私も何かお返事を差し上げなくてはならないと思いました。ですが、中々いい文言が思いつきませんでした。そもそも、皇帝陛下に何か語りかけること自体が失礼ではないのか、などと、色々なことを考えてしまいました。

「はあっ……まことに申し訳ございません…………」

私がゴチャゴチャと考えている間に、お父様が再び頭を下げて、謝っていました。なるほど、とりあえず謝っておけばいいのか、私はそう思いました。

「まあまあ、楽にしましょうや。さあ、お嬢さんもどうぞ、腰かけてくださいな……」

私たちは部屋を移動して、ようやく椅子のある小部屋に入ることができました。私は安堵しました。緊張のあまり、頭がふらついて、思わずその場に倒れてしまうのではないか、と心配になるほどでございましたから。

「ありがとうございます」

お父様がこう言いましたので、私も思わず、

「ああっ……ありがとうございます!!!!」

と言いました。

「ハハハハ……元気なようで何よりです」

皇帝陛下はそうおっしゃいました。私はなんだか安心しました。正直、お父様からかけられる言葉よりも、安心しました。皇帝陛下のような大らかさがあればいいのに……私はそんなことを思いました。

「ええっと……それでは、書類やらなにやらを持ってまいりますので、少しここでお待ちくださいますかな???」

皇帝陛下はそう言って、妃様や第一王子シャルコー様も一緒に部屋を出ていきました。侍従たちもそれに従って出ていきました。つまり、部屋に残されたのは、私とお父様の2人でした。

「ふうううっ…………」

お父様はやっと一息ついたようでございました。そして、真っすぐに私の方を見ました。

まさか……また怒られるのか……私はそう思いました。案の定、その通りでございました。

「さっきのあの態度はなんなんだ!!!!!!」

ああ、また始まってしまいました……。



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