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月
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「婚約を破棄させてもらおう……」
王子様はいつも太陽だ。国民の前に顔を出す時、そして、一瞬であっても私を一人の女として愛してくれたとき。
私にとって、いや、今更おこがましいか?
みんな、その笑顔を中心にして動いていた。私はかつて太陽に一番近い星だった。王子様から漲ってくる熱を快く受け入れた。
王子様の微笑みが偽りだと知っているのは、多分私だけだった。
王子様は私を残して、一人ベランダに立ち尽くし、竪琴を弾いていた。美しい月を見て一人泣いていた。私は王子様が涙する理由を知らなかった。私のことが嫌いっていう理由ならば、かえって安心した。
「生涯君を愛し続ける。でもこれ以上君を愛せる自信がないんだ……」
王子様があまりにも不憫でならなかった。婚約破棄を提案したのは私の方だった。
「しばらく考えさせてくれ……」
太陽に飲み込まれて、遥か彼方に潜んでいる琴線を探し続けた。でもそれは全て王子様のものだから見つけることなんてできなかった。
「王子様、一生愛し続けます」
「僕もだ……」
王子様を支える方法はないのだろうか、と考えた。でも、太陽よりパワフルな星なんて存在しないように、かりそめとはいえ、みんなに好かれる王子様を支えることなんてできやしない。
王子様は一人になった。私は時々王子様に招かれて話相手になった。
「中々晴れないんだ……」
気候が良くないことを嘆いている。
「月が見えませんね……」
王子様が泣く理由はそれくらいしかなかった。
私が月になれば……。
ふとそんなことを思った。
太陽の反対にはいつも月がいる。その美しさを語る者は枚挙にいとまがない。しかしながら、本当の美しさを知っている人は恐らくいない。
大陽はしばしば月に恋をする。
しかしながら、二人は決して結ばれない。
「少し散歩してきますね……」
二人はいつも一人ぼっち。そっと上を向いて同じ夜空を眺めるだけ。
「王子様……?この広い空のどこかにいらっしゃるとするならば、今すぐ会いに行きます……」
王子様もきっと……。
後悔なんてしません。一人の男性に最後まで愛されたのですから。宇宙の理に戻って、もう一度、王子様と会えることを願い続けます。
王子様はいつも太陽だ。国民の前に顔を出す時、そして、一瞬であっても私を一人の女として愛してくれたとき。
私にとって、いや、今更おこがましいか?
みんな、その笑顔を中心にして動いていた。私はかつて太陽に一番近い星だった。王子様から漲ってくる熱を快く受け入れた。
王子様の微笑みが偽りだと知っているのは、多分私だけだった。
王子様は私を残して、一人ベランダに立ち尽くし、竪琴を弾いていた。美しい月を見て一人泣いていた。私は王子様が涙する理由を知らなかった。私のことが嫌いっていう理由ならば、かえって安心した。
「生涯君を愛し続ける。でもこれ以上君を愛せる自信がないんだ……」
王子様があまりにも不憫でならなかった。婚約破棄を提案したのは私の方だった。
「しばらく考えさせてくれ……」
太陽に飲み込まれて、遥か彼方に潜んでいる琴線を探し続けた。でもそれは全て王子様のものだから見つけることなんてできなかった。
「王子様、一生愛し続けます」
「僕もだ……」
王子様を支える方法はないのだろうか、と考えた。でも、太陽よりパワフルな星なんて存在しないように、かりそめとはいえ、みんなに好かれる王子様を支えることなんてできやしない。
王子様は一人になった。私は時々王子様に招かれて話相手になった。
「中々晴れないんだ……」
気候が良くないことを嘆いている。
「月が見えませんね……」
王子様が泣く理由はそれくらいしかなかった。
私が月になれば……。
ふとそんなことを思った。
太陽の反対にはいつも月がいる。その美しさを語る者は枚挙にいとまがない。しかしながら、本当の美しさを知っている人は恐らくいない。
大陽はしばしば月に恋をする。
しかしながら、二人は決して結ばれない。
「少し散歩してきますね……」
二人はいつも一人ぼっち。そっと上を向いて同じ夜空を眺めるだけ。
「王子様……?この広い空のどこかにいらっしゃるとするならば、今すぐ会いに行きます……」
王子様もきっと……。
後悔なんてしません。一人の男性に最後まで愛されたのですから。宇宙の理に戻って、もう一度、王子様と会えることを願い続けます。
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