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マルサスの毒牙

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しかしながら、マルサスの料理を食べるほど、体つきはよくなった。それだけ、マルサスに好かれるようになった。

「ユフィ―は最愛の女だ!」

マルサスの興奮は高まるばかりだった。その分、少女たちの姿は減り、とうとう一人になってしまった。

彼女の名はエリーナ・マルテリと言って、田舎の貴族の娘だった。マルサスによると、私と比べ物にはならないが、最後まで残しておく価値のある女だったそうだ。

「こんにちは、エリーナ」

私はせめて、エリーナだけはこの世界に残そうとした。私は償いを彼女の命に託すこととした。勿論、マルサスに頼んだ。

「私の命に代えてでも、エリーナの命を守ってください……」

「君はどうして、あんな少女を救おうとするんだ?」

「エリーナが最後に生き残った一人だからです。マルサス様。後二晩、私とベッドを共にしたら、彼女はこの世界から消えてしまうんですよね?」

「ふんっ……!」

マルサスは鼻息で笑った。

「君は私に説教をするつもりか?」

「いいえ、そんなおこがましいこと!」

「現実に私を叱っているじゃないか?」

「………………」

「まあ、いい。君だって家にいれば、ゴミは捨てるだろう?」

「ゴミですって?」

「そうだよ、女なんて、ゴミみたいなもんだろう?親から捨てられた、行き場を失った売春婦……どうしようもないゴミだよ……」

私はマルサスの寝床を抜け出して、地下のハーレムへ向かった。ハーレムとは言っても、そこにはエリーナしかいないはずだったが、そうではなかった。

「おらおら、もっとだ!」

「おい、この娘は本当にいい身体してるじゃねえか!」

止めて!

「ほらほら、ご主人様のほしんだろっ?」

止めてって言ってるの!

「後二日でお前は死ぬ。その前にたくさん思い出作ろうな!」

そんな汚らわしい思い出、私がぶち壊す……。

私は辺りに転がっていた鉄砲を手にとった。こいつらは皆、近衛の騎士たちだ……。騎士道の風上にもおけない下衆どもを、私が始末する。

「マルサスが正妻、ユフィ―・オラトリアがここに神の罰を誓います!」

パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン……。

引き金が引けなくなるまで、打ち続けた。下衆どもを葬るのに成功した。

「はあっはあっはあっ………………」

私は息を整えるため、その場に座った。

「エリーナ……もう大丈夫よ……ごめんなさい……」

死骸の山は、ショッキングな光景だった。私は確か、気を失い始めた。

「おねえさま……おねえさま…………おねえっ…………」

エリーナが私のことをお姉様って呼んだ気がした。

そうだ。姉として、私は初めて妹を守れたんだ……。

私は嬉しかった。
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