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その18
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間もなくソフィアが領内に入るとの知らせを受けて、ゲルストマンは、玄関に立ち、いつやって来ても大丈夫なように準備をしていた。いくら何が起きたとしても、新しい婚約者をきちんと出迎えるのが、貴族の責務だと思っていた。
待つことおおよそ2時間が経過した頃、ソフィアを乗せた馬車が、屋敷の前に到着した。
「ハルトマン公爵令嬢ソフィア様がいらっしゃいましたああっ!!!!!!!!!!!!」
大きな声で、ソフィアが到着したことを知らせる先導の騎手のかけ声とともに、ゲルストマンは玄関からさらに一歩出て、ソフィアの顔をその時初めて見ることになったのだった。
非常に落ち着いていて、そして、例の一件について、非常に悩んだ表情だった。この決着がつかないうちに、話は全て終わってしまったわけだから、そう思うのは当然のことだと思った。
扉があいて、いよいよ、ソフィアが降りてきた。ゲルストマンはそこから手を差しのべて、
「ようこそいらっしゃいました……」
と挨拶をした。
「こちらこそ……この度は誠にありがとうございます……」
ソフィアはそう言って、なかなか、ゲルストマンと視線を合わせなかった。
「公爵のゲルストマンでございます。この度は、私との婚礼を引き受けて頂きまして、誠にありがとうございました。これからは、どうぞ、今までの苦難を全て忘れまして、ごゆるりとこの地でお過ごしいただければと思います……」
ソフィアは、ようやく一度だけ顔を上げて、ゲルストマンの顔を見つめた。そして、一言、
「ありがとうございます」
とだけ、短く答えたのだった。ゲルストマンは、そんなソフィアに、にこやかに微笑みを送った。ソフィアは、相変わらず、頑なな表情を崩すことなく、ゲルストマンの手招きで、静かに屋敷の中へ入っていった……。
待つことおおよそ2時間が経過した頃、ソフィアを乗せた馬車が、屋敷の前に到着した。
「ハルトマン公爵令嬢ソフィア様がいらっしゃいましたああっ!!!!!!!!!!!!」
大きな声で、ソフィアが到着したことを知らせる先導の騎手のかけ声とともに、ゲルストマンは玄関からさらに一歩出て、ソフィアの顔をその時初めて見ることになったのだった。
非常に落ち着いていて、そして、例の一件について、非常に悩んだ表情だった。この決着がつかないうちに、話は全て終わってしまったわけだから、そう思うのは当然のことだと思った。
扉があいて、いよいよ、ソフィアが降りてきた。ゲルストマンはそこから手を差しのべて、
「ようこそいらっしゃいました……」
と挨拶をした。
「こちらこそ……この度は誠にありがとうございます……」
ソフィアはそう言って、なかなか、ゲルストマンと視線を合わせなかった。
「公爵のゲルストマンでございます。この度は、私との婚礼を引き受けて頂きまして、誠にありがとうございました。これからは、どうぞ、今までの苦難を全て忘れまして、ごゆるりとこの地でお過ごしいただければと思います……」
ソフィアは、ようやく一度だけ顔を上げて、ゲルストマンの顔を見つめた。そして、一言、
「ありがとうございます」
とだけ、短く答えたのだった。ゲルストマンは、そんなソフィアに、にこやかに微笑みを送った。ソフィアは、相変わらず、頑なな表情を崩すことなく、ゲルストマンの手招きで、静かに屋敷の中へ入っていった……。
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