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その5
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何も知らないことが一番幸せ……それが現実なのだろう。ストークスは、ソフィアにとっていい夫を演じ続けた。いや、正確に言うと、その姿をマリーに重ねていたのだった。
日が経つにつれて、ストークスは夜の繋がりを求めるようになった。それも激しく。ソフィアは女として、その身体を求められることに、最初は抵抗があった。しかしながら、身体を求められるということは、子孫を残すことであり、それが、この後の繁栄につながると思えば、それは結構なことだった。
「マリー!!!!マリー!!!!!愛してるぞ!!!!!!」
ただ一つ、不可解だったのは、ストークスが、ソフィアの身体を求める時に、マリーと呼ぶことだった。ソフィアは、まさか、自分の妹のことだとは思わなかった。でも、自分以外の恋人、あるいは側室とか、そう言うものがあるのか、と考えた。
朝になって、隣の王子を起こしてみる。
「ああっ……マリーか……???今日もいい朝だなああっ…………」
眠たげな眼を擦りあげて、ストークスは身体を持ち上げる。隣には、布団に包まった裸のソフィアがいる。その姿に驚愕して、
「ソフィアじゃないか!!!!!!一体、どうしたんだ???????」
と叫んでみる。ソフィアはもちろん、理解できない。どうして、婚約者の姿だけを見て、これほど驚くのだろうか。ひょっとして、自分のこと以外……つまり、他の女のことを四六時中考えているのではないか?????
そんな疑心暗鬼を、ますます強めるきっかけになったのが、メイドたちの噂話だった。ソフィアは特段と耳がいいので、ものすごく小さな会話であったとしても、その大半を聴くことができてしまう。地獄耳と恐れられる由縁だった。
「最近、ストークス様が政治に疎くなったって……他の皆さんが心配なさっているそうよ」
「そうなの????あれだけ真面目だったストークス様が????何かあったのかしら?????」
「それがどうも、女問題みたいなのよ……」
「女問題?????それって、ソフィア様のこと?????」
「そんなわけないでしょう!!!!あの人の問題だったら、何も仕事に影響することなんてないわよ……」
「まあ、それもそうか。それで?????ということは……他に愛人でもいるのかしら?????」
「他のメイドが言ってたんだけどね、ストークス様が、それはそれは美しい女性と肩を並べて歩いているところを見たんですって!!!!!」
「あらっ、それって不倫じゃないの??????だって、ストークス様は正式な側室宣言をしていないのでしょう????」
「そう言うことになるわね。まあ、明らかに出来ない人なんじゃないかしら?????例えば……万が一だけど、ソフィア様の知り合いだったり、とか???????」
「あのソフィア様の知り合い??????あんな地味な方のお知り合いに、男、それも王子様を振り向かせる女がいるわけないでしょうよ……」
「まあ、それもそうね……。いるわけないか…………」
疑いが確信に変わった瞬間だった。しかしながら、ソフィアは事を荒立てるつもりなどなかった。全てを穏便に収めようと思ったのだった。だから、ストークス様と愛人の関係について、誰かに密告するなんてことは、全くもって考えていなかった……。
だが、事態を甘く見たソフィアに更なる事件が襲いかかることになった……。
日が経つにつれて、ストークスは夜の繋がりを求めるようになった。それも激しく。ソフィアは女として、その身体を求められることに、最初は抵抗があった。しかしながら、身体を求められるということは、子孫を残すことであり、それが、この後の繁栄につながると思えば、それは結構なことだった。
「マリー!!!!マリー!!!!!愛してるぞ!!!!!!」
ただ一つ、不可解だったのは、ストークスが、ソフィアの身体を求める時に、マリーと呼ぶことだった。ソフィアは、まさか、自分の妹のことだとは思わなかった。でも、自分以外の恋人、あるいは側室とか、そう言うものがあるのか、と考えた。
朝になって、隣の王子を起こしてみる。
「ああっ……マリーか……???今日もいい朝だなああっ…………」
眠たげな眼を擦りあげて、ストークスは身体を持ち上げる。隣には、布団に包まった裸のソフィアがいる。その姿に驚愕して、
「ソフィアじゃないか!!!!!!一体、どうしたんだ???????」
と叫んでみる。ソフィアはもちろん、理解できない。どうして、婚約者の姿だけを見て、これほど驚くのだろうか。ひょっとして、自分のこと以外……つまり、他の女のことを四六時中考えているのではないか?????
そんな疑心暗鬼を、ますます強めるきっかけになったのが、メイドたちの噂話だった。ソフィアは特段と耳がいいので、ものすごく小さな会話であったとしても、その大半を聴くことができてしまう。地獄耳と恐れられる由縁だった。
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「そうなの????あれだけ真面目だったストークス様が????何かあったのかしら?????」
「それがどうも、女問題みたいなのよ……」
「女問題?????それって、ソフィア様のこと?????」
「そんなわけないでしょう!!!!あの人の問題だったら、何も仕事に影響することなんてないわよ……」
「まあ、それもそうか。それで?????ということは……他に愛人でもいるのかしら?????」
「他のメイドが言ってたんだけどね、ストークス様が、それはそれは美しい女性と肩を並べて歩いているところを見たんですって!!!!!」
「あらっ、それって不倫じゃないの??????だって、ストークス様は正式な側室宣言をしていないのでしょう????」
「そう言うことになるわね。まあ、明らかに出来ない人なんじゃないかしら?????例えば……万が一だけど、ソフィア様の知り合いだったり、とか???????」
「あのソフィア様の知り合い??????あんな地味な方のお知り合いに、男、それも王子様を振り向かせる女がいるわけないでしょうよ……」
「まあ、それもそうね……。いるわけないか…………」
疑いが確信に変わった瞬間だった。しかしながら、ソフィアは事を荒立てるつもりなどなかった。全てを穏便に収めようと思ったのだった。だから、ストークス様と愛人の関係について、誰かに密告するなんてことは、全くもって考えていなかった……。
だが、事態を甘く見たソフィアに更なる事件が襲いかかることになった……。
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