上 下
1 / 2

その1

しおりを挟む
「マリア!!!私はこの場において、婚約破棄を宣言するぞ!!!その理由は言うまでもない!!!君が、私の友人であるエランを虐めたことは明白なる事実なのだ!!!」

第一王子様(私の婚約者)がそう言いました。正確に言いますと、エラン様というのは、単なる友人ではありませんで……つまりは、私を御捨てになって、エラン様を新しい婚約者にすると、こういうわけなのでございます。

「私はこれまで、様々な良き友人を持ってきたが、その中でもエランは格別だった。そして、いつしか私は恋をした。だが、マリアという婚約者がいる私には許されないことだった!!!しかしながら、神様は私に転機をくださったのだ。いや、それよりも君の醜態が露見したんだね!!!結果として、私は正式にエランを新しい婚約者として推挙したいと思うのだ!!!」

結果として丸く収まる……まあ、このまま私が黙っていたらの話ですけど???

私はエラン様にそっとウインクをしました。そしたら……エラン様はどういうわけだか、震えていました。ああ、なんて察しのいいお姫様なのでしょうか。私は感心しました。

「ところで……この後、私はどうなるのでしょうか?」

私は第一王子様に聞いてみました。すると、王子様は、

「そんなの決まっているだろう!!!修道院送りか、あるいは……流刑だ!!!」

と言いました。もちろん、ここまでは予想通りの展開です。でも、話はここから面白くなるのです。


「お待ちください!!!」

私の婚約破棄が決まってから、ちょっとして、新しい令嬢たちが入場してきました。彼女たちは、言うなれば、エラン様と同じように、第一王子様のガールフレンドとでも言った感じでしょうか???

「第一王子様!!!どうして、エランを婚約者に選んでおいて、私たちは選ばないのですか???」

当然、このような反感が出るのは最もなことでした。さあ、これから話が盛り上がりますよ。女の修羅場とでも言った感じでしょうか???

「私たちのことは愛していただけないのですか???私たちも、このエラン同様、王子様のことを愛しているのでございますのに……」

「いや、そんなことを言われても……」

第一王子様は返答に困りました。当然ですね。私が婚約者に選ばれたのは、私のお父様が最高位公爵でありますから、生まれながらに王子様と婚約する権利があるわけでございまして、これについてとやかく意見をすることはできません。しかしながら……いま、こちらにいらっしゃるエラン様を始め、他の可愛いお姫様たちはおそらく、公爵令嬢なのでございましょうから、エラン様だけを贔屓に扱うというのは、中々難しいことだったのです。

さて……第一王子様はどのような決断を下されるのでしょうか???私は高みの見物をするつもりでした。でも、お姫様たちは、私のことを知っているようで、

「私たちは、こちらにいらっしゃいますマリア様のお口添えを持ちまして、第一王子様と友人になることができました!!!」

と言いました。

「なっ……マリア、それはどういうことだ!!!」

私に発現する権利が与えられました。ラッキー!!!

「ええと……こんなに可愛いお姫様たちが、私のところにやって来て、なんとかして王子様とお近づきになりたい、とせがまれましたら、答えずにはいられませんでした。ですから、私は当時、王子様の婚約者という立場で、王子様の近くにおりましたゆえ、様々なイベントを企画し、なるべく多くの令嬢様方が、王子様と接触できるように取り計らったのでございます!!!」

このため、私は皆様から、お姉様と崇められております。

「どうして、そんな余計なことを……」

王子様は、すっかり困惑していました。でも、一番悪いのは王子様なのですから、女たちの修羅場にも参戦して、なんとか解決できる方法を模索しなければならないでしょう。それが、王子様の責務なのですから。

「王子様???私だけを愛しているって言ってくださったのは……ひょっとしてウソだったのですかあ!!!!」

エラン様が少しずつ不安定になって、発作を起こしました。なるほど、ものすごく繊細だったのですね。そうだとすると、ちょっと悪いことをしてしまったでしょうか???

「いや、私はエラン、君のことだけを愛しているんだ……」

王子様はそう言いましたが、他の押しかけてくる令嬢たちを前にして、全く説得力がありませんでした。

さあ、この泥沼の戦いに、王子様は果たして終止符を打つことができるのでしょうか???







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寡黙な貴方は今も彼女を想う

MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。 ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。 シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。 言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。 ※設定はゆるいです。 ※溺愛タグ追加しました。

執着はありません。婚約者の座、譲りますよ

四季
恋愛
ニーナには婚約者がいる。 カインという青年である。 彼は周囲の人たちにはとても親切だが、実は裏の顔があって……。

【完結】婚約者の好みにはなれなかったので身を引きます〜私の周囲がそれを許さないようです〜

葉桜鹿乃
恋愛
第二王子のアンドリュー・メルト殿下の婚約者であるリーン・ネルコム侯爵令嬢は、3年間の期間を己に課して努力した。 しかし、アンドリュー殿下の浮気性は直らない。これは、もうだめだ。結婚してもお互い幸せになれない。 婚約破棄を申し入れたところ、「やっとか」という言葉と共にアンドリュー殿下はニヤリと笑った。私からの婚約破棄の申し入れを待っていたらしい。そうすれば、申し入れた方が慰謝料を支払わなければならないからだ。 この先の人生をこの男に捧げるくらいなら安いものだと思ったが、果たしてそれは、周囲が許すはずもなく……? 調子に乗りすぎた婚約者は、どうやら私の周囲には嫌われていたようです。皆さまお手柔らかにお願いします……ね……? ※幾つか同じ感想を頂いていますが、リーンは『話を聞いてすら貰えないので』努力したのであって、リーンが無理に進言をして彼女に手をあげたら(リーンは自分に自信はなくとも実家に力があるのを知っているので)アンドリュー殿下が一発で廃嫡ルートとなります。リーンはそれは避けるべきだと向き合う為に3年間頑張っています。リーンなりの忠誠心ですので、その点ご理解の程よろしくお願いします。 ※HOT1位ありがとうございます!(01/10 21:00) ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも別名義で掲載予定です。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

もういいです、離婚しましょう。

杉本凪咲
恋愛
愛する夫は、私ではない女性を抱いていた。 どうやら二人は半年前から関係を結んでいるらしい。 夫に愛想が尽きた私は離婚を告げる。

側近女性は迷わない

中田カナ
恋愛
第二王子殿下の側近の中でただ1人の女性である私は、思いがけず自分の陰口を耳にしてしまった。 ※ 小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

婚約者とその幼なじみがいい雰囲気すぎることに不安を覚えていましたが、誤解が解けたあとで、その立ち位置にいたのは私でした

珠宮さくら
恋愛
クレメンティアは、婚約者とその幼なじみの雰囲気が良すぎることに不安を覚えていた。 そんな時に幼なじみから、婚約破棄したがっていると聞かされてしまい……。 ※全4話。

処理中です...