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その16 メコンの策略

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話は少し変わる。帝都トロイツでは、定例の公会が開催されていた。国王、上位貴族、そして、聖者となったメコンたちをメンバーとする最高評議会の議題は、新たなる侵略者に対する備えだった。この議題について、最大の発言権はメコンに託された。

「一般論を申しますと、軍備の増強しかないでしょう。しかしながら、それだけで話が完結することはありません。まあっ、無用な心配というのも必要ないかと思いますが。私たち勇者の力をもってすれば、新たな魔王が現れたとしても、戦えば必ず勝ちますから」

メコンの発言は非常に傲慢だった。しかしながら、国王を始め、他の貴族たちも、聖者の発言に口を挟むことは許されなかった。

「確かに、聖者様の力を持ってすれば、この世界に敵など居りませんな!」

トロイツ国王がメコンの発言に花を添えた。

「もうよろしいですか?私どもは日々鍛錬をしなければなりません。このような会議よりも、よっぽど有意義だと思いますが、いかがでしょうか?」

メコンは立ち上がり、会議を切り上げようとした。

「ああっ、もちろんですとも。聖者様。本日もお勤めありがとう存じます!」

「いえいえ、これが私に与えられた運命でありますから。最後まで果たさせてもらいますよ」

そう言って、議場を後にした。

「さて、目障りな奴らは消えた。後は適当に遊ぶだけだ……」

キャシー、ヨーク、そしてカーチャを始めとしたハーレムがメコンの帰りを待っていた。その後も女探しを続けたため、ハーレムの構成数は30人くらいにまでなっていた。

「お帰りなさいませ!メコン様!」

ハーレムの中でもとりわけリーダー的存在だったキャシーが、先陣を切って、メコンの隣を占領した。

「お食事の準備はできております。それとも……その前に少しお休みになられますか?」

「この世界に天国というものはあるのだろうか?」

メコンの問いに対し、キャシーは、

「今から私がお連れしますわ!」

と答えた。

「頼もしいね。それなら早く連れて行ってもらいたいな」

そう言って、メコンはキャシーの豊満な胸元に飛びついた。

「メコン様?続きはベッドで……」

「そうだな。今日はいい夢が見れそうだ……」

メコンは人間に戻って、夜の快楽を貪った。キャシーの肉付きは大変素晴らしかった。メコンが求めれば求めるほど、キャシーは快楽を運ぶ女になった。

「勇者というのは名ばかりだ。私はしょせん人間なのだ」

「それでいいんじゃないですか?勇者様がいつまでも聖者様であり続けることはできないのですから」

キャシーの指摘は正解だった。

「だとするならば、しばらくはこのままでいいんだな。当分、世界は落ち着きを取り戻すだろう……」

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