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その15 魔王アルビノーニ
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「この少女は迷いがあるようだな……」
アルビノーニはそう言って、ファンコニーの額にキスをした。
「迷いとは何ですか?」
私は未だにアルビノーニと話していることが信じられなかった。アルビノーニではなく、別の男と話しているような感じだった。これほど簡単に歴史を遡り、復活させることが可能だとは思わなかった。
「少女は復活の能力があるようだな。おかげで生き返ることができた」
「あなたは……本当に勇者アルビノーニなのですか?」
「疑っているのか?無理もないだろう。私がアルビノーニであることを証明する手段がないからな……」
アルビノーニは、そっと天を仰いだ。
「勇者と言うものは不思議だ。こうしてずっと長く眠っていると、もう一度世界を救いたいと思うようになる。しかしながら、私もしょせんは欲深い人間だ。生き続けるための手段として、戦い続けることを選択する必要があるのならば、私は喜んで魔王になろう!」
魔王……その言葉を聞いた瞬間、私はこの男を復活させてはならなかったと反省した。正義と悪の天秤が、今は圧倒的に悪の方へ傾いていた。
「復活の能力とは、欲深き人間の悪行だ!」
アルビノーニは不気味なほほ笑みを浮かべ、天を指さした。すると、今まで沈黙に埋もれていた地下都市が、ゴゴゴゴゴゴと大きな音を立てて動き始めた。
「このまま一気に地上まで浮上するぞ!」
ファンコニーのこしらえた地下通路を全て破壊し、巨大都市は高速エレベーターのように天を目指して一直線に進んだ。一分もすると、少しずつ陽の光が見え始め、もう一分もすると、地上へ顔を出した。
「さて、折角だから眠っていた砲台を動かすとしますか……」
アルビノーニは随所に備え付けられた砲台をいとも簡単に指で操作し始めた。巨大都市が空中に現れて、遺跡の近くに群がる人々がターゲットになった。
「これはある種の見せしめだ……」
アルビノーニがパチッと指を鳴らすと、照準に合わせて無数の火焔砲が発射された。見物人たちは逃げる間もなく、火焔砲によって焼き払われた。
「どうだ、これが勇者なる力だ。ところで、君も勇者なのだろう?その様子だと、まだ魔王にはなっていないようだね。どうだね、君の力というものを少し見せてもらおうじゃないか」
私はアルビノーニの言葉を聞くまでもなく、天から剣を召喚し、アルビノーニに襲い掛かった。本気で人を殺そうと思ったのは、今回がきっと初めてだった。
「アルビノーニ!死ねえええええっ…………………!」
私はもう無我夢中だった。勇者の成れの果てがこのような悲劇を生むのだとすれば、アルビノーニ、そして、復活の能力を授かったファンコニーを消さなければならないと思った。そして……ファンコニーを葬り去った後、私も滅びなければならないと思った。
剣は有無も言わさず、アルビノーニの胸を貫いた。アルビノーニは、その場に倒れ込んだ。
「なるほど……君の強さは確かに勇者の名に相応しいものだ……。しかしながら、この程度の力で私を消すことはできないのだ…………」
アルビノーニはその場で息絶えた。ファンコニーは意識を失っていた。
「ファンコニー!」
私はファンコニーを抱きかかえた。どうして意識を失ったのか、その理由が分からなかった。惨劇によるものなのか、あるいは……?
私は肝心なことを忘れていた。この空中都市が猛スピードで北へ向かっていることに気がついた。ひょっとすると、帝都を破壊するつもりではないのか?私は都市の操縦を試みた。しかしながら、びくともしなかった。先程のように、無数の民を殺すことだけは避けなければならない、この時はそう思っていた。
アルビノーニはそう言って、ファンコニーの額にキスをした。
「迷いとは何ですか?」
私は未だにアルビノーニと話していることが信じられなかった。アルビノーニではなく、別の男と話しているような感じだった。これほど簡単に歴史を遡り、復活させることが可能だとは思わなかった。
「少女は復活の能力があるようだな。おかげで生き返ることができた」
「あなたは……本当に勇者アルビノーニなのですか?」
「疑っているのか?無理もないだろう。私がアルビノーニであることを証明する手段がないからな……」
アルビノーニは、そっと天を仰いだ。
「勇者と言うものは不思議だ。こうしてずっと長く眠っていると、もう一度世界を救いたいと思うようになる。しかしながら、私もしょせんは欲深い人間だ。生き続けるための手段として、戦い続けることを選択する必要があるのならば、私は喜んで魔王になろう!」
魔王……その言葉を聞いた瞬間、私はこの男を復活させてはならなかったと反省した。正義と悪の天秤が、今は圧倒的に悪の方へ傾いていた。
「復活の能力とは、欲深き人間の悪行だ!」
アルビノーニは不気味なほほ笑みを浮かべ、天を指さした。すると、今まで沈黙に埋もれていた地下都市が、ゴゴゴゴゴゴと大きな音を立てて動き始めた。
「このまま一気に地上まで浮上するぞ!」
ファンコニーのこしらえた地下通路を全て破壊し、巨大都市は高速エレベーターのように天を目指して一直線に進んだ。一分もすると、少しずつ陽の光が見え始め、もう一分もすると、地上へ顔を出した。
「さて、折角だから眠っていた砲台を動かすとしますか……」
アルビノーニは随所に備え付けられた砲台をいとも簡単に指で操作し始めた。巨大都市が空中に現れて、遺跡の近くに群がる人々がターゲットになった。
「これはある種の見せしめだ……」
アルビノーニがパチッと指を鳴らすと、照準に合わせて無数の火焔砲が発射された。見物人たちは逃げる間もなく、火焔砲によって焼き払われた。
「どうだ、これが勇者なる力だ。ところで、君も勇者なのだろう?その様子だと、まだ魔王にはなっていないようだね。どうだね、君の力というものを少し見せてもらおうじゃないか」
私はアルビノーニの言葉を聞くまでもなく、天から剣を召喚し、アルビノーニに襲い掛かった。本気で人を殺そうと思ったのは、今回がきっと初めてだった。
「アルビノーニ!死ねえええええっ…………………!」
私はもう無我夢中だった。勇者の成れの果てがこのような悲劇を生むのだとすれば、アルビノーニ、そして、復活の能力を授かったファンコニーを消さなければならないと思った。そして……ファンコニーを葬り去った後、私も滅びなければならないと思った。
剣は有無も言わさず、アルビノーニの胸を貫いた。アルビノーニは、その場に倒れ込んだ。
「なるほど……君の強さは確かに勇者の名に相応しいものだ……。しかしながら、この程度の力で私を消すことはできないのだ…………」
アルビノーニはその場で息絶えた。ファンコニーは意識を失っていた。
「ファンコニー!」
私はファンコニーを抱きかかえた。どうして意識を失ったのか、その理由が分からなかった。惨劇によるものなのか、あるいは……?
私は肝心なことを忘れていた。この空中都市が猛スピードで北へ向かっていることに気がついた。ひょっとすると、帝都を破壊するつもりではないのか?私は都市の操縦を試みた。しかしながら、びくともしなかった。先程のように、無数の民を殺すことだけは避けなければならない、この時はそう思っていた。
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