浮気をでっち上げて婚約破棄ですか？お前だろ！

脆い日常

学校には誰もいませんでした。いいえ、私は決して嘘をついておりません。本当に私しかいないのです。

私を虐めていたアンネさんとそのいちみたちの姿はもとより、その他大勢の生徒たちや教師、あるいは学園長であるお父様の姿もありませんでした。

一体何が起きているのか？私にはわかりませんでした。

「これが君にとって最善の世界なのではないかな？」

ヒース様の声が聞こえました。

「ヒース様、ここにいらっしゃるのですか？」

私はヒース様を探しました。でもその姿を見つけることはできませんでした。

「これで邪魔者は全ていなくなったようだ……」

「ヒース様！どこにいらっしゃるのですか？」

「これで全て終わりだ。クリフォード君、スカーを私の元へ連れてきてくれ……」

「はいっ、畏まりました」

クリフォード君？彼はここにいるのでしょうか？

「お姉様、お待たせいたしました」

「クリフォード君！」

全てが消え失せた世界に、ようやく知り合いを見つけることができました。私は感動のあまり、泣き出しそうになりました。

「ヒース様がお待ちです。生徒会室まで私がお連れ致します……」

私は何も理解していませんでした。ただ、クリフォード君だけではなく、知り合いであるヒース様に会うことができれば、一瞬にして全て消えた世界で生きていくことができると安心しました。

「よろしくね」

「こちらこそ」

「これでいいんだ。もう一度時間が動き始めたら、それは私にとっても、スカーにとっても、もう生きていけないということを意味するのだから……」