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その1

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「カレン!お前との婚約を破棄する!よくもふてぶてしく顔を見せられるものだな!お前が何をしでかしたか、私は全て知っている。お前が私のもとに嫁いだのは、結局財産目当てだったのだろう?違うのか? 」

婚約破棄と言う思い出。ああっ、こんなのが思い出だなんて、神様、私の人生は何だったのでしょうか?せめて、死ぬ前に答えを教えてください。人は何か意味を持って生まれてくるものです。母が教えてくれました。父は私を王子様のもとで嫁がせました。その理由が何であるかはおおよそ見当がつきます。ですが、私は本当に王子様を愛しました。これは疑いのない真実なのです。私は今、牢獄にいます。王子様は私に一生分の苦しみを与え続けるのだそうです。私は耐えられません。私が死ぬことなんてどうでもいいんです。しかしながら、私は無実なのです。あなたはそれを知っているはずです。ですが、あなたは王子様に、そのことを教えません。王子様が私をこれ以上苦しめるならば、それは無実の人間を傷つけていることになります。王子様が命を終えられた時、あなたは王子様をお裁きになるでしょう。

私が一足先に天国に行って、王子様と再会することがおそらくかないません。あなたは王子様が死んだ後、彼に相当の苦難を授けることでしょう。私はそれが非常に悲しいのです。わかりますか? 

ですから、私が今、自らの命をあなたに捧げれば、あなたが私を裁いて話は終わるのです。王子様に罪はありません。全て私が背負い込めばいいだけのことです。記憶は全てあちらの世界まで持っていきます。それでようございますね?神様? 

ここに毒薬があります。これを飲めば、私はいつでもあなたの元へ向かえます。神様、どうかお許しください。私のような人間に生を与えたことが、あなたの罪です……。




さぁ、これで終りにしましょう! 







「カレン……カレン……カレン!」

私の名前を呼ぶ声がする。懐かしい。まるであの人にそっくりだ。彼は、どうして天国にいるのだろうか?私より先に死んでしまったのかしら?王子様の仕掛けた戦いに巻き込まれたのかしら? 

「カレン!しっかりするんだ、カレン!」

そう、きっと彼だ。

私はもう一つの罪を犯した。私は確かに王子様を愛した。でもその前にもう1人の男性を愛した。

でも私はお父様の言いなりだった。彼を捨て、王子様を選んだ。これは私の罪である。それなのにあなたは私に手を差し伸べてくれるの?あなたは本当に優しいのね。どうか、その優しさを他の人のために使ってあげて。これ以上私に構わないで。さようなら…………。

「カレン! 大丈夫か?しっかりしろ! 」

目の前にはやっぱり彼がいた。私の幼馴染で、最初に恋をした、あのコリンが。

「どうして、毒なんか飲むんだ? どうして死のうとするんだ! 」

えっ?もしかして私、まだ生きてるの?

「当たり前だろ!この僕が、君を死なせるわけないじゃないか! 」

コリンが……助けてくれたの?どうやって?

「僕が全部吸い取ってあげたから。もうきれいだよ! 」

吸い取ったって……まさか口から?

えっ、ちょっと……ええっ?

それって、間接キスってやつ? いや違う、これは直接……!

「どうしたんだ、カレン……カレン?」

コリンの叫び声が、なんとか耳に響いていた。私は再び意識を失いそうになっていた。だってそうじゃない。私のファーストキスが、王子様じゃなくてコリンだったなんて!そりゃ驚くわよ!

ああっ、神様!私はまた1つ不貞を犯してしまいました!お許しを! 
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