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その12
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「私は……一体どこで育て方を間違えたのだろうか…………思い返せば、これはある種の試練だった……。公爵家の名声を保つため、長女であるレイナを一人前に育て上げ、王家の方々と婚約させることが……それが、私の使命だったのだ……。だから、厳格に教育してきたはずだ……。それが、裏目に出たというのだろうか……。かえって……自由に育ったイコンの方が、良識ある令嬢になって……こうして、きちんと婚約することができるのか……」
そんなことを考えていた公爵のもとに、レイナが入って来たのだった……。
レイナは何も語らなかった。一晩中流し続けた涙の痕が、顔に嫌気をさしていた。もちろん、その姿を、公爵はありありと見つめていた。だがしかし、レイナに原因がある以上、救済の手を差しのべることはできないと思ったのだった……。
「話は全て了解したよ。レイナ…………。だがな、お前が失敗したことをこれ以上責め続けても仕方がないな。子供の失敗は、結局のところ、親が責任を取らなくてはならないものだ…………」
公爵はそう言った。レイナは黙って、公爵の話を聞き続けた。
「チャーリー様との婚約は……このまま、イコンが引き継ぐことになりそうだ。まあ、我が家としては、お前なのか、あるいは、イコンなのか、そんなのはどちらでも構わない。婚約破棄に関しても、そもそも婚約を正式に発表したわけではないから、比較的簡単に済ませそうだ…………」
公爵は、とどのつまり、自分の保身、あるいは、家の名声のみを気にしていて、レイナの心境を探ることもせず、ただ漫然と話だけを続けていたのだった…………。
そんなことを考えていた公爵のもとに、レイナが入って来たのだった……。
レイナは何も語らなかった。一晩中流し続けた涙の痕が、顔に嫌気をさしていた。もちろん、その姿を、公爵はありありと見つめていた。だがしかし、レイナに原因がある以上、救済の手を差しのべることはできないと思ったのだった……。
「話は全て了解したよ。レイナ…………。だがな、お前が失敗したことをこれ以上責め続けても仕方がないな。子供の失敗は、結局のところ、親が責任を取らなくてはならないものだ…………」
公爵はそう言った。レイナは黙って、公爵の話を聞き続けた。
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公爵は、とどのつまり、自分の保身、あるいは、家の名声のみを気にしていて、レイナの心境を探ることもせず、ただ漫然と話だけを続けていたのだった…………。
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