2 / 43
1:悪堕ち王子~メデューサ~村娘
第2話 そんな悲しい目をしないでくれ
しおりを挟むメデューサ娘のメディをスキルで美少女化した俺は、またエナドリを飲み干して全回復した。
「――っと、服も着せないとな」
メディは丸裸だ。見た目は15歳ほどの美少女。いつまでもこのままでいさせるのはマズい。俺的にもマズい。反応しちゃう。
「《キャラクターメイク》――」
半透明の画面を操作して、女物の服を検索する。
俺のダンジョンマスターとしてのレベルがまだ低いせいか、選べる服の種類は少ない。
「今はこれで我慢してくれ」
「?」
簡素な、それこそ冒険者風の服装。
……まあ、もともとは女冒険者の外見を変えるためのスキルだからな。そういう系統がデフォルトで用意されてるのも当然だ。
半袖の上着と、下はミニスカート。
エロゲの衣装だけあって少し動くだけでパンツが見えてしまうという、
『防御力? ナニソレ?』
な露出度だが、健康的に発育のいいスタイルのメディにはよく似合っている。
「ふく……! きた……!」
「うん。似合ってるぞ」
「ゴシュジンサマ……アルトさま、いっしょ」
俺の服装は、黒の上下に真紅のマント。
長袖に長ズボンなので服自体はまったく似ていないのだが、『人間の服を着ている』というシチュエーションが嬉しいらしい。
それにしてもメディは。
「(じーーーーっ)」
と、ちょくちょく、金色の瞳で見上げてくる。
「どした?」
「(じーーーーーーっ)」
メデューサの姿でも目を見つめてきていたが、もしかしたら視覚にも変化があったのかもしれない。さっきまでと違う世界をその目で見ているのかも。
「俺の顔、そんなに面白いか?」
「すき」
ストレート。
まあ、恋愛的というより親愛的なニュアンスが強そうだが、悪い気はしないな。
……長らく人間のドロドロな世界に浸っていたせいで、メディの純粋さが心に沁みるぜ。
なんて、今の喜びを噛みしめてから、俺は提案する。
「次は家を作るか」
「?」
ここはダンジョン。出入口は、鬱蒼とした森の中に空いた真っ暗な穴。そこから入っていくと、中の空間は信じられないほど広い。
岩肌が続いたかと思うと、レンガ造りの通路になったり、階段があったり、鍾乳洞に変わったり。太陽光が当たらないのに植物が生えていたり、川があったりと、不思議な世界になっている。
どうも、魔力が作用して空間がねじ曲がっているらしい。
そしてその魔力は、俺の魔力ととても親和性が高い。もともとこの身体は、魔力のたっぷり籠もった瘴気を浴びることで変化したものだから、当然といえば当然だろう。
ダンジョンである以上、いずれ敵からの防衛も考えなければならないが……今はまずは、自分の居住スペースを整えたい。
メディも人間の格好になったわけだし、その辺の地面に寝させるのも心苦しい。
「俺たちが暮らす場所をダンジョン内に作るんだ」
「アルトさま、と、メディの……くらす!」
「俺はダンジョンマスターだし、最奥に陣取るのがセオリーなんだろうけど。でも当分は入口付近を強化したいしな。……この辺にするか」
原作ゲームのシナリオ通りに進むなら、遠くないうちに冒険者が攻め込んでくる。
それに備えて、入口から階段を降りて徒歩3分ほどに拠点を構えることを決める。
人差し指を立てて、カーソルを表示させる。
「広さは……このくらいか」
カーソルを岩肌に合わせて、スワイプ。カーソルのサイズでブロック状に削られた岩が、スイーっと簡単に移動する。削られた部分は、きっちりとした平面だ。
同じ要領で地面も整地。
2LDKのアパートをイメージして、『家』の壁と天井を建築。
「ドアが欲しいけど――そうか、これか。《クリエイト》」
ヒュンッ、と空中にウィンドウが立ち上がる。
「今の俺が作れるものは……おっ、あるある。【樫木のドア】。いいじゃん」
ダンジョンを作成するための《クリエイト》スキル。これも、ダンマスが使える便利な能力だ。
石造の壁に取り付けるのも簡単。カーソルで移動させて、そこに置くだけでオーケー。
「外観が寂しいけどな……」
スピード重視で石のブロックを積んだだけの、見事な豆腐建築。灰色の石材だから、巨大な黒ごま豆腐みたいな見た目だ。
「でもまずは内装が大事だ。入ろう、メディ」
「はいる、ゴシュジンサマ」
ドアを開けて、なんとなく……
「お邪魔しまーす」
「じゃままーす」
俺に追随してくれるメディ、可愛い。
さてこの家を俺たちの快適な住処にしよう。
内部には、まずは照明だ。壁にランプを取り付けて明かりを確保。
《クリエイト》にはある程度のものがそろっているので、次々に設置していこう。
水回り。
キッチンに手洗い場、トイレ。浴室には大きめの湯船も。近くの池から水道を引いて、蛇口を設置。キッチンといえば、調理台にかまども。いつかは冷蔵庫なんかも作れるといいんだが。
リビングにはソファとローテーブル。
寝室は――
「おっと」
シングルベッドを1つ置いたところで、俺は気づく。
「寝室は2つ作らないといけなかったな」
「? ふたつ?」
「俺と、メディの」
交互に指を差して示す。
「それぞれが寝るところな」
「?? しんしつ、ねる……」
メディは首をかしげて俺の言葉をゆっくりと理解すると、
「……いっしょ、ちがう?」
寂しそうな声を漏らした。
「そ、そんな悲しい目をしないでくれ! 分かったよ、一緒の寝室にしよう」
「……っ! しよう!」
「そんじゃベッドをもう1つ――」
「っっっ!?!?」
この世の終わりみたいな顔で悲しむメディ。
だからその顔には弱いんだって……!
俺はさっき置いたシングルベッドを《クリエイト》の能力で消滅させてから、
「だ、ダブルベッドで! まくらは2つ! これでどうっ!?」
「っっっっ♪」
メディは目を輝かせ、ダブルベッドベッドの周りをピョンピョンと飛び跳ねた。
……やっべ。
守りたいわこの子。
208
お気に入りに追加
682
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!
こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。
ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。
最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。
だが、俺は知っていた。
魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。
外れスキル【超重量】の真の力を。
俺は思う。
【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか?
俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。
女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう
サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」
万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。
地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。
これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。
彼女なしの独身に平凡な年収。
これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。
2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。
「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」
誕生日を迎えた夜。
突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。
「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」
女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。
しかし、降り立って彼はすぐに気づく。
女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。
これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。
追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~
和成ソウイチ
ファンタジー
(全77話完結)【あなたの楽園、タダで創ります! 追放先はこちらへ】
「スカウトはダサい。男はつまらん。つーことでラクター、お前はクビな」
――その言葉を待ってたよ勇者スカル。じゃあな。
勇者のパワハラに愛想を尽かしていたスカウトのラクターは、クビ宣告を幸いに勇者パーティを出て行く。
かつては憧れていた勇者。だからこそここまで我慢してきたが、今はむしろ、追放されて心が晴れやかだった。
彼はスカルに仕える前から――いや、生まれた瞬間から決めていたことがあった。
一生懸命に生きる奴をリスペクトしよう。
実はラクターは転生者だった。生前、同じようにボロ布のようにこき使われていた幼馴染の同僚を失って以来、一生懸命に生きていても報われない奴の力になりたいと考え続けていた彼。だが、転生者であるにも関わらずラクターにはまだ、特別な力はなかった。
ところが、追放された直後にとある女神を救ったことでラクターの人生は一変する。
どうやら勇者パーティのせいで女神でありながら奴隷として売り飛ばされたらしい。
解放した女神が憑依したことにより、ラクターはジョブ【楽園創造者】に目覚める。
その能力は、文字通り理想とする空間を自由に創造できるチートなものだった。
しばらくひとりで暮らしたかったラクターは、ふと気付く。
――一生懸命生きてるのは、何も人間だけじゃないよな?
こうして人里離れた森の中で動植物たちのために【楽園創造者】の力を使い、彼らと共存生活を始めたラクター。
そこで彼は、神獣の忘れ形見の人狼少女や御神木の大精霊たちと出逢い、楽園を大きくしていく。
さらには、とある事件をきっかけに理不尽に追放された人々のために無料で楽園を創る活動を開始する。
やがてラクターは彼を慕う大勢の仲間たちとともに、自分たちだけの楽園で人生を謳歌するのだった。
一方、ラクターを追放し、さらには彼と敵対したことをきっかけに、スカルを始めとした勇者パーティは急速に衰退していく。
(他サイトでも投稿中)
「おっさんはいらない」とパーティーを追放された魔導師は若返り、最強の大賢者となる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~
平山和人
ファンタジー
かつては伝説の魔法使いと謳われたアークは中年となり、衰えた存在になった。
ある日、所属していたパーティーのリーダーから「老いさらばえたおっさんは必要ない」とパーティーを追い出される。
身も心も疲弊したアークは、辺境の地と拠点を移し、自給自足のスローライフを送っていた。
そんなある日、森の中で呪いをかけられた瀕死のフェニックスを発見し、これを助ける。
フェニックスはお礼に、アークを若返らせてくれるのだった。若返ったおかげで、全盛期以上の力を手に入れたアークは、史上最強の大賢者となる。
一方アークを追放したパーティーはアークを失ったことで、没落の道を辿ることになる。
2度追放された転生元貴族 〜スキル《大喰らい》で美少女たちと幸せなスローライフを目指します〜
フユリカス
ファンタジー
「お前を追放する――」
貴族に転生したアルゼ・グラントは、実家のグラント家からも冒険者パーティーからも追放されてしまった。
それはアルゼの持つ《特殊スキル:大喰らい》というスキルが発動せず、無能という烙印を押されてしまったからだった。
しかし、実は《大喰らい》には『食べた魔物のスキルと経験値を獲得できる』という、とんでもない力を秘めていたのだった。
《大喰らい》からは《派生スキル:追い剥ぎ》も生まれ、スキルを奪う対象は魔物だけでなく人にまで広がり、アルゼは圧倒的な力をつけていく。
アルゼは奴隷商で出会った『メル』という少女と、スキルを駆使しながら最強へと成り上がっていくのだった。
スローライフという夢を目指して――。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる