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第4章 会議は踊る
島の左近と佐和山の城
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雨が降る。
その強さは、尋常なものではない。地面を削らんばかりの雨。
それを、櫓の出格子から覗く奈穂。デフォルメされた鎧を羽織り、床の上には乱髪天衝脇立兜が直立して置かれている。奈穂が担当するのは、西軍——それも『石田三成』——史実では当然のごとく敗者の側に、属する人物——
当然、このシミュレーションの難易度は高い。開始ターンは関ケ原前日、九月一四日の大垣城のスタートであった。
「史実であれば……この雨に乗じて関ケ原に移動するんだけど……どうなんだろね」
目の前に座して控える墨子に、そう呟く。墨子の脇には紺絲威兜が同じように鎮座している。
史実上の人物は『島左近清興』。
「治部少に、過ぎたるものが二つあり 島の左近と、佐和山の城」とも言われる名将である。今回は、墨子がその役に付いていた。
「知恵さんとか、桃さんとか……どこにいるのかな?」
その言葉を受けて、じっと奈穂の方を見つめる墨子。今回のシミュレーションの独自ルールとして、だれがどの役を演じているかはわからないルールであった。
真っ先に会えたのは墨子。それは股肱の臣としての島左近の役割であった。しかし、知恵や桃の存在はようとして知れない。
「まあいいじゃんかよ。こうやって奈穂と会えたんだし。今回は俺が犠牲になっても奈穂の身を……」
「それはダメ」
奈穂が今までにない強い口調で否定する。
「墨子さん、そういう考え方はダメ。この時代……例えシミュレーションであったとしてもそういうのは……いやだな。一緒に何があっても墨子さんと『死なない』選択肢を選択したい……甘い発想なのかな?」
一瞬驚いた表情を浮かべる墨子。
「……そんなこと言われたこと、なかったな……中学の時からこのシミュレーションやってきた。何回このシミュレーションで『死んだ』かな。『死ぬ』と褒められた。『よく、みんなのかわりに死んでくれた。尊い犠牲だった』って……それが当然だと思ってた。違うのか?」
「違うよ」
鎧のまま、奈穂はそっと墨子を抱き寄せる。
「この戦いは、何があってもみんな生きて帰る。たとえそれが負けの結果だったとしても。でも大丈夫。負けないから。私は負けない」
「なあ……」
墨子が奈穂の胸に抱きしめられながら、そうつぶやく。
「さんづけは……やめてくれないかな……その……」
うん、とうなずく奈穂。
「墨ちゃん。よろしくね。この戦い……絶対に勝ってみせるよ!史実は必ずひっくりかえしてみせる!」
そう言いながら、墨子の手を取る奈穂。雨はさらに強く叩きつけるように——
その強さは、尋常なものではない。地面を削らんばかりの雨。
それを、櫓の出格子から覗く奈穂。デフォルメされた鎧を羽織り、床の上には乱髪天衝脇立兜が直立して置かれている。奈穂が担当するのは、西軍——それも『石田三成』——史実では当然のごとく敗者の側に、属する人物——
当然、このシミュレーションの難易度は高い。開始ターンは関ケ原前日、九月一四日の大垣城のスタートであった。
「史実であれば……この雨に乗じて関ケ原に移動するんだけど……どうなんだろね」
目の前に座して控える墨子に、そう呟く。墨子の脇には紺絲威兜が同じように鎮座している。
史実上の人物は『島左近清興』。
「治部少に、過ぎたるものが二つあり 島の左近と、佐和山の城」とも言われる名将である。今回は、墨子がその役に付いていた。
「知恵さんとか、桃さんとか……どこにいるのかな?」
その言葉を受けて、じっと奈穂の方を見つめる墨子。今回のシミュレーションの独自ルールとして、だれがどの役を演じているかはわからないルールであった。
真っ先に会えたのは墨子。それは股肱の臣としての島左近の役割であった。しかし、知恵や桃の存在はようとして知れない。
「まあいいじゃんかよ。こうやって奈穂と会えたんだし。今回は俺が犠牲になっても奈穂の身を……」
「それはダメ」
奈穂が今までにない強い口調で否定する。
「墨子さん、そういう考え方はダメ。この時代……例えシミュレーションであったとしてもそういうのは……いやだな。一緒に何があっても墨子さんと『死なない』選択肢を選択したい……甘い発想なのかな?」
一瞬驚いた表情を浮かべる墨子。
「……そんなこと言われたこと、なかったな……中学の時からこのシミュレーションやってきた。何回このシミュレーションで『死んだ』かな。『死ぬ』と褒められた。『よく、みんなのかわりに死んでくれた。尊い犠牲だった』って……それが当然だと思ってた。違うのか?」
「違うよ」
鎧のまま、奈穂はそっと墨子を抱き寄せる。
「この戦いは、何があってもみんな生きて帰る。たとえそれが負けの結果だったとしても。でも大丈夫。負けないから。私は負けない」
「なあ……」
墨子が奈穂の胸に抱きしめられながら、そうつぶやく。
「さんづけは……やめてくれないかな……その……」
うん、とうなずく奈穂。
「墨ちゃん。よろしくね。この戦い……絶対に勝ってみせるよ!史実は必ずひっくりかえしてみせる!」
そう言いながら、墨子の手を取る奈穂。雨はさらに強く叩きつけるように——
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