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第4章 会議は踊る

梵天丸、天上天下唯我独尊なり

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 廊下を進む人の群れ。先頭を行くのは、びっとしたスーツを着た青年と、同じくスーツ姿の女性。男性は副校長であり、女性は担任の教員である。
 どちらかといえば、大企業の上役とその秘書という風体だが。
 そのあとを追いかける、四人の少女。いずれも同じデザインの制服を羽織っている。
 つまり
 奈穂、知恵、墨子、そして桃の四名。
『今日は、皆さんの評価をしたいと思います』
 朝のホームルーム。なぜか、副校長の但馬が担任にかわってそう告げる。
『この評価は……定期考査と同じくらいの比重で成績に換算したいと思います。異議は……とうぜん許しません』
 いわゆる、抜き打ちテストというやつである。それは——『アリストテレス=システム』によるシミュレーションであることは疑いない。
 こつこつと、暗い通路を歩いていく一団。今まで来たことのない場所である。
 本館を出て、中庭を通り過ぎる。
 暗闇。その中に浮かび上がる茶色い大きな建築物。大英図書館を模したそれには、『異世界想像部』という看板が掲げれられていた。
 副校長が斜めに重厚な鉄扉を見やると、かちっという音とともに鉄扉が開く。
「ようこそ、『異世界想像部』の部室に」
 副校長が振り返って、四名を見やり、そう宣言する。
「君たちの成長をぜひ、見てみたい。今日は先輩が、相手をしてくれる。歴史シミュレーション『アリストテレス=システム』の仮想対戦で、常に高校全国大会で上位に食い込んでいるわが校の『異世界想像部』の先輩と対戦してもらおう!」
 大広間。正面の扉がゆっくりと開く。
 その扉から、ゆっくりと歩みを進める人影。何やら長い何かを掲げて。
「『異世界想像部』二年、梁川 宗世と名乗せてもらおう。一年生、いざ尋常に勝負……させていただこうか……」
 長物が虚空の闇を一閃する。そのひと振りは、燭台切光忠。かの名刀の一閃とともに、空間に明かりがともる。
 それに反応して、後ろ手からモーゼルC96を抜き出し構える、墨子。反射的な反応のようだ。
(銃刀法って知ってる?……)
 奈穂はそう心の中でつぶやく。
『聖リュケイオン女学園校則修正条項第二条 正当に実施されたアリストテレスシシステム内での武装は禁止されてはならず、したがって、自己の武器を保有し携帯する権利もまた、日本国政府によって侵害されてはならない』
 知恵が情報携帯端末でその一文を奈穂に示す。奈穂はそれを訝しげに見つめる。
 刀を肩に担ぎ、ゆっくりと近づいてくる二年生。長い黒髪をなびかせ、直立不動でその姿を現す——梁川宗世。右目には刀の鍔の眼帯をつけて。
「一年生、お手合わせねがう。『アリストテレス=システム』シミュレーション、舞台は一六00年、日本——天下分け目の合戦、『関ヶ原の戦い』で!」
 大広間に、起動音が響き渡る。新たなる戦い——その火ぶたが切られる——
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