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「あ、おいし!」
超高級△堂のチョコレート。味は噂通り、ただただ美味い。口に入れた瞬間に歯を立てる前にトロリと溶ける。見た目も可愛らしいバラを形どり、その上にまぶされた銀の粉の輝きは光にかざし見入っていまうほど。食べるのを忘れて眺めていると、セルジュは笑いながら香りのよい紅茶を差し出した。
玻璃の東屋に甘い香りが広がる。
離れたところに見張りなのか、護衛なのかが見え、二人きりじゃないことにも安心し気を許すアズラエル。
「わ、おいし!」
高級げな味のするお茶に声がでる。
「これもどうぞ」
それはただ四角いだけのチョコではなく、包むように繊細なレース模様がチョコで描かれていた。
見た目からめっさ高げだね。と一つ摘まむ。
「んんっ!? これ、中なんか出てきた、んんー! うま! なにこれ」
「それ、中にチェリー酒が入ってるんだよ」
「お酒?」
「大丈夫、キツイ酒じゃないから、こっちは桃酒だよ、はい」
とセルジュはアズラエルの口に入れようとするから、両の手の平を差し出してやった。
「ぷ、くく、まだダメか―」
チョコレートはそっと手のひらに置かれた。
あったりまえだろ! 何考えてる! 軽率にオレに初あーんを奪おうとするなし。初あーんは可愛い女子からされたいわ!
「君はマルティナ王女とよく似ているね」
あぁ、そりゃ本人だからな、もぐもぐもぐ。
「ハシノ国は淡水パールの生産国なんだね、初めて知ったよ……」
「この国の野菜も二割がうちの国からなんですよー、ここも大事なとこっ!」
「すまない、不勉強だな」
「いいですよ、うちは大陸の端っこで、弱小、小国ですからー」
「そんなことはない、弱小などではないだろう、君の国はこの大陸になくてはならない国なのだから」
「……」
ふーん、嬉しいこと言ってくれるじゃん、このイケメンも。
ちょっと気分良くなった。
「ふふ、ありがとうございます」
「──っ」
なぜにか驚いたように目をそらせるセルジュをのぞき込んでみる。なぜか耳が赤い。
「どうしたんですか? 顔真っ赤ですよ? チョコレートで酔っ払ったんですか?」
「それは君だろうっ」
えー? オレ酔ってんの? ふわふわして気持ちいいの、これが酔うってこと?
「ふふ、ふわふわして気持ちいいですねー」
「あー、もう。あぁ、これはリンゴ酒だな」
え? リンゴ? リンゴはめっさ好き。
ぱく。
口元に差し出されたチョコレートを食べてしまった。口に広がる爽やかなリンゴを味わって気づいた。
「あ! あー!! なんで、あーんするかなー!」
「いいじゃないか、それくらい」
「よくない! そゆことは、好きな人からされたいものなんですよ! あー、もう! 初あーんが!」
「はは、それは良かった」
「いや、良くないし!」
「ふふふ、君は面白いな」
と、髪へと伸ばされた手を当然ペンと払いのける。
「おさわり禁止ー」
「む、厳しいな……」
これだからイケメンは、自然にすぐ手が出る!
「そーいうことも恋人同士でするもんですよ」
「恋人同士になれば許されるんだな」
「そうです、恋人同士ならゆるされるんですー」
「そうか」
「りんご、もいっこ!」
今度はしっかり両手を出した。
超高級△堂のチョコレート。味は噂通り、ただただ美味い。口に入れた瞬間に歯を立てる前にトロリと溶ける。見た目も可愛らしいバラを形どり、その上にまぶされた銀の粉の輝きは光にかざし見入っていまうほど。食べるのを忘れて眺めていると、セルジュは笑いながら香りのよい紅茶を差し出した。
玻璃の東屋に甘い香りが広がる。
離れたところに見張りなのか、護衛なのかが見え、二人きりじゃないことにも安心し気を許すアズラエル。
「わ、おいし!」
高級げな味のするお茶に声がでる。
「これもどうぞ」
それはただ四角いだけのチョコではなく、包むように繊細なレース模様がチョコで描かれていた。
見た目からめっさ高げだね。と一つ摘まむ。
「んんっ!? これ、中なんか出てきた、んんー! うま! なにこれ」
「それ、中にチェリー酒が入ってるんだよ」
「お酒?」
「大丈夫、キツイ酒じゃないから、こっちは桃酒だよ、はい」
とセルジュはアズラエルの口に入れようとするから、両の手の平を差し出してやった。
「ぷ、くく、まだダメか―」
チョコレートはそっと手のひらに置かれた。
あったりまえだろ! 何考えてる! 軽率にオレに初あーんを奪おうとするなし。初あーんは可愛い女子からされたいわ!
「君はマルティナ王女とよく似ているね」
あぁ、そりゃ本人だからな、もぐもぐもぐ。
「ハシノ国は淡水パールの生産国なんだね、初めて知ったよ……」
「この国の野菜も二割がうちの国からなんですよー、ここも大事なとこっ!」
「すまない、不勉強だな」
「いいですよ、うちは大陸の端っこで、弱小、小国ですからー」
「そんなことはない、弱小などではないだろう、君の国はこの大陸になくてはならない国なのだから」
「……」
ふーん、嬉しいこと言ってくれるじゃん、このイケメンも。
ちょっと気分良くなった。
「ふふ、ありがとうございます」
「──っ」
なぜにか驚いたように目をそらせるセルジュをのぞき込んでみる。なぜか耳が赤い。
「どうしたんですか? 顔真っ赤ですよ? チョコレートで酔っ払ったんですか?」
「それは君だろうっ」
えー? オレ酔ってんの? ふわふわして気持ちいいの、これが酔うってこと?
「ふふ、ふわふわして気持ちいいですねー」
「あー、もう。あぁ、これはリンゴ酒だな」
え? リンゴ? リンゴはめっさ好き。
ぱく。
口元に差し出されたチョコレートを食べてしまった。口に広がる爽やかなリンゴを味わって気づいた。
「あ! あー!! なんで、あーんするかなー!」
「いいじゃないか、それくらい」
「よくない! そゆことは、好きな人からされたいものなんですよ! あー、もう! 初あーんが!」
「はは、それは良かった」
「いや、良くないし!」
「ふふふ、君は面白いな」
と、髪へと伸ばされた手を当然ペンと払いのける。
「おさわり禁止ー」
「む、厳しいな……」
これだからイケメンは、自然にすぐ手が出る!
「そーいうことも恋人同士でするもんですよ」
「恋人同士になれば許されるんだな」
「そうです、恋人同士ならゆるされるんですー」
「そうか」
「りんご、もいっこ!」
今度はしっかり両手を出した。
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