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69話 治術陣始めました
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学校での授業も終わり、俺と神父様、そしてウチのじーさんと棟梁は、大衆浴場の拡張された新しいロビーに集まっていた。
日はまだまだ高く、大衆浴場が開業するには随分早い時間だ。
実は、ついさっきまで荷物の搬入を手伝ってくれていたクマのおっさんも一緒にいたのだが、他にすることがあるからと、早々に帰ってしまっていた。
クマのおっさんにも是非とも体感して欲しかったのだが、用事とあらば仕方ない。
「お前の言う通りに作ってはみたが……」
「一体なんでぇこりゃ? 寝るにしても、座るにしても、どっちつかずで中途半端だろ……
こんなん何に使うってんだ?」
棟梁とウチのじーさんが、出来上がったものを目の前にして、そんな事を聞いて来た。
「一言で言うなら、両方の間の子ってとこだな」
俺たちの前には、椅子があった。
その外見は言うなれば、ビーチチェアだとかサマーベッドと呼ばれている物……一般にプールサイドや、砂浜に置いてあるあの一人掛け用の長いベッドみたいな椅子、あれによく似ていた。
ていうかまんまだな。
そもそもあれをイメージしてデザインした訳だし。
全体を木製のフレームによって構成されており、座る部分や、背もたれの部分には、長時間座っていてもケツや背中が痛くならないように、なんぞ得体の知れない動物の革を細くして編んで作ったシートが張ってあった。
固い椅子に長い事座っているってのは、それはそれできついものがあるからな。
で、そんな椅子が計五脚。
それが大衆浴場の拡張された第二ロビーの隅っこの方に設置されることになった。
一見ただのビーチチェアだが、張られた革になにやら模様がびっしりと書き込まれており、それがただの椅子ではないことは一目瞭然だった。
まぁ、この模様が魔術回路であると分かる人間は俺と神父様くらいなものだが、この村の住人であるなら、今までの経験からそれだけで普通の椅子ではないと勘づくことだろう。
「で、こいつは一体何なんだ?
お前が関わっているということは、ただの椅子、なんてことはないんだろ?」
棟梁もその一人で、出来上がた椅子の背もたれ部分をこつこつと叩きながら、俺に聞く。
「でゅふふふっ!
まぁまぁ、百聞は一見に如かずと申します。
取り敢えず、二人とも座ってみてくださいな」
俺がそう勧めると、三人はゆっくりと椅子に腰を落とした。
……って神父様、アンタ俺と一緒になって実験中に散々試乗したでしょうに……まぁ、いいけどさ。
当然だが、これを作ったのはこの二人だ。
しかし、用途も碌に説明せずに“こんな感じの物を作って欲しい”と、簡単なイメージ図と説明文を書いた紙だけを渡して制作に当たってもらっていたので、作った本人たちも完成品を見るまでは何を作っていたのかよく分かっていなかったのだ。
別に、説明するのが面倒くさかったから省いていた……という訳ではない。
まぁ多少はそう思わなくもなかったが、一番の理由としては驚かそうと思ってのことだ。
そう! サプライズってやつだな!
二人とも、こいつを体験したなら心底驚くこと間違いなしだっ!
俺が二人にこの椅子の制作を依頼してから、骨組みが完成するまでたったの数日だった。
元々、この手の寝ながら座るタイプの椅子、所謂安楽椅子だとかリクライニングチェアの類は一般的ではないらしく、イメージを伝えるのに随分と苦労した。
そんな物を彼らは、本業の傍ら手探り状態で作業を進めていたはずなのに、短期間で仕上げて来たのだ
……職人ってマジパネェよな。
まぁ、そこからいろいろと魔術陣の試行錯誤やら、革のシートを張ったりで、完成には更に数日掛かってしまった訳だけど……
特に設置場所が銭湯なだけに、汗や水分で革が痛まないよう、撥水加工を施すのに時間がかかってしまった。
まぁ、おかげで水で丸洗いが可能になったため、手入れ自体は簡単楽々になった訳だが。
なぜそこまでして銭湯を設置場所に選んだかというと、多くの人たちにこの椅子を利用してもらいたいと思ってのことだ。
銭湯は村で一番人が集まる所だからな。
この意見については、俺も神父様も共通の考えだった。
なんだかんだとぶつくさ言いながら作ったものだが、作ったからには沢山の人に利用してもらいたいと思うのが制作者としての心情だ。
で、本日めでたく完成となったので、クマのおっさんたち自警団員の方々に椅子の搬入を頼んで運び込んでもらい、この椅子の制作に携わったお二方には、他の人たちよりも一足早くお披露目と相成った次第である。
「んっ……なんぞふにょふにょしてケツの下が落ち着かんな……」
「慣れない感覚だな……」
じーさんも棟梁も、普通の椅子との感覚の違いに落ち着かないのか、もぞもぞと細かく身じろぎをしていた。
まぁ、ハンモックみたいなものなので確かに安定感はないわな。
こればっかりは慣れなのでどうしようもないが、きっとすぐ慣れるだろう。
「注目っ!
では、この椅子の使い方を説明したいと思いますっ!」
「おっおう……」
「ふむ……」
「では、まず全身の力を抜いてリラックスしてください。そうしたらシートにしっかり体を預けます。
そして最後に、肘掛の先端部分を掴みます。
少しだけ魔力が抜けていく感覚がありますが、気にせず完了するまではそのままでいてください。
すぐに終わります。
で、終わったら手は放してもらって結構です。
あとは勝手に始まって、勝手に終わるので座っているだけでオーケーです!」
俺の説明に目と耳を傾けていた二人が、ぎこちなくだが言われた通りに操作を始める。
その隣で……
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ……」
早速この椅子を堪能している人が一人いた。
なに一人くつろいでんですか神父様ぁ……
「おっ!? おおおっ!?
なんだなんだ!? なんか背中がドンドンされるぞコレ!?」
「っ!?
それになんだか急に体が熱くなってきたような……」
突然現れた変化に、じーさんも棟梁もハトが豆鉄砲を喰らったように驚いていた。
じーさんなんぞ、慌てて降りようとしたくらいだ。
「ぐっふっふっふっふ~!
まぁまぁ、体に害があるものでもないので、そのままの姿勢で聞いてくださいな。
では、これが何かを説明致しましょう!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ……」
神父様……うるさいっす……
今回作った物は、有り体に行ってしまえば健康椅子とでも言うのか……まぁ、“マッサージチェア”の類だと思えば概ね間違いではないだろう。
当初の設計では、体の調子を整えるだけの健康器具的なものを作る予定だったのだが、魔術陣の実験中に俺と神父様があれもこれもと調子に乗って機能を拡張した結果、こんなものが仕上がってしまったのだった。
そんなワルノリから生まれた健康椅子だが、主な機能は次の三つだ。
一つは本来の目的である、魔力の整調効果。
魔力が停滞するから体調が悪くなるのか、体調が悪いから魔力が停滞するのか……
細かいことはよく分からないが、とにかく全身に魔力を循環させていれば体調が悪くなる、ということはないらしい。
この辺りは以前、ミーシャのところの牛さんで実験した時のままだ。
多少魔術回路に手は加え、魔力の循環を体内の魔力密度の低い所を重点的に巡るようにしたくらいで本質的なところは変わっていない。
二つ目は、マッサージ機能の追加だ。
ただ寝転がっているだけでは退屈だろう、という神父様の意見から新たに加えられた機能の一つだ。
軽く叩かれた程度の微弱な衝撃波を、短時間で連続して発生させて体へとぶつけている。
按摩でいうところの、叩打法に近いのではないだろうか?
子どもが両親の肩をトントントン、と叩いているあれだな。
実はこれ、鎧熊を吹き飛ばした魔術陣、破術陣とほぼ魔術回路が同じなのだ。
威力を上げるとあれになるって考えると、なんとも奇妙な気分だ……
ついでなので、機能にも無駄に拘ってみましたっ!
なんとモードを二つも搭載することに成功したのだ。
一つは、打面が移動する“ムーブモード”。
範囲は成人男性(神父様基準)で、大体首下からふくらはぎくらいまで。
これ間を行ったり来たりと繰り返すのだ。
勿論、ストップ機能も完備しているので、自分の都合のいいところで、打面の移動を停止すことも出来る。
そしてもう一つが、全面打撃“フルモード”だ。
通常のマッサージチェアは、揉んだり叩いたりしたりする部位があり、それが移動することでマッサージする部分を変動させている。
しかし、この健康椅子は少し違う。
衝撃波を発生させる魔術回路は、革張りのシートの至る所に配置されている。
無数に衝撃を発生させる部分が存在するが故に、従来のマッサージチェアでは再現不可能な全面を同時にマッサージするということがこの健康椅子では可能なのである。
これらのモードの切り替えは、肘掛にあるコンパネからいつでも変更可能だ。
ちなみにだが……
“ムーブモード”も正確には、打面が移動しているのではなく規則正しく配列された回路が順番にON・OFFを繰り返すことで、“移動しているように”感じているに過ぎないのだ。
電光掲示板の文字や絵が、流れている様に見えるのと理屈としては同じだ。
あれは一つのランプだけを見ていると、ただ点滅しているだけにしか見えないが、全体として見た時、初めて“動いている”という錯覚を感じるのだ。
正直な話、この“ムーブモード”が作っていて一番面倒だったのは秘密の話だ。
もうON・OFFする接点が多すぎて多すぎて……
そして最後の三つ目が、熱的作用だ。
棟梁も言っていたが、この椅子は座っているだけで体が暖かくなってくる。
これは銭湯の風呂釜にも使われている熱術陣・加と同じものが使われているからに他ならない。
魔術陣で発生させた熱量を、直接人体へと送っているのだ。
最も、その出力は風呂釜に使っているものと比較したら微々たるものだがな。
このアイデアの発案は俺だ。
この健康椅子を風呂上りに利用する人もいるだろうから、湯冷めしないようにという配慮からだ。
特にこれからは冬に向けてどんどん寒くなっていくからな、健康椅子といいながら使っていたら風邪ひいたとあっては目も当てられない。
利用方法は一人一回十分程度の時間交代制にした。
治術陣においては、未だ不明な点も多いので、長時間の利用で人体にどんな影響が出るか分からない以上、長時間の利用は避けた方が無難だろうと、神父様との話し合いによって決まったことだ。
まぁ、牛で実験した時は一日の連続使用では特に問題らしい問題も出ていなかったので大丈夫だとは思うが、人と牛では違いもあるだろうし、念には念をということだ。
なので、牛用に作った時は、常時魔力を吸収し、即時魔術陣へ送る連続稼働方式を採用していたが、今回は使用前に一定量の魔力を吸収した上で一時的に保存し、貯めた魔力の分だけ稼働するというタイマー方式を採用している。
それが大体十分ほど持続する、という事だ。
まぁ、時間無制限にして、一人に長々と占有されても困りものだから、という理由もある。
一応対策としては、利用に関してルールを設けて守らない奴は出禁とか、一回当たり低額だが利用料を取ることで一人の連続使用を抑止している。
低額だが、回数がかさめば懐に響くというものだ。
俺としては、出来る限り多くの人に利用して欲しいからな。
それに、通常のマッサージチェアだって長時間の利用はむしろ体に悪いから止めるように注意書きにも書いてあることだ。
どんなに良いものであっても、過ぎたるは猶及ばざるが如し、である。
用法・容量は正しく守って使いましょう。
……で、十分後……
「おおぉぉーー! 肩が軽くなっとるわっ!」
と、椅子から降りたじーさんが肩をぐるぐる回して叫んでいた。
「驚いたなこれは……村の連中が騒いでいたのにも納得だ……
腰の痛みが、嘘のように引いている」
棟梁は棟梁で、上半身をツイストさせながら感想を述べた。
で、神父様はというと……
「すぅー……」
寝てるし……
この椅子を一番堪能しているのは、もしかしてこの人ではなかろうか……別にいいけど……
で、健康椅子を実体験してもらった二人から、何か思う点はないか聞いたところ、
「もっとガツン! と来ないもんか? こう、ガツンッ! と」
じーさんの言葉を要約すると、“打撃の強さが弱いからもっと強くせい”という事らしい。
棟梁も同じ意見だった。
そういえば打撃の強度設定とか入れてなかったなぁ。
変なところに拘って作っていた所為で、その部分をすっかり忘れていた。
まぁ、銭湯の開店までまだ多少時間もある、その程度の改造なら時間までには済むだろう。
二人とも、今日はまだやることがあるとかで、俺に礼を言うと、早々にここを後にした。
まぁ、考えてもみれば今日は平日の昼過ぎだ。
普段ならまだ仕事中であることを思えば、そんな中俺の呼び出しに応えてくれた二人の人付き合いのよさに頭が下がるものがあった。
二人と別れたあと、俺は早速椅子の機能追加の改造作業を始めたのだった。
一人椅子に座ったままグースカ寝こけている神父様を横目にして……
で、その日の夜……
朝一から、健康椅子の導入については村の掲示板を使って告知していたので、結構な人が銭湯に来ているだろうことは予想出来ていたのだが……
「わぁお……なんじゃこれ……」
銭湯から人、はみ出てんじゃん……
そこには、銭湯の開店当初を彷彿とさせるほどの人の行列が出来上がっていた。
いや、たぶんそれ以上か……
ってか、この村のどこにこれだけの人がいたのだろうか……?
「あら? すごい人ね……」
その光景を見て、うちのママンがぽつりとつぶやいていた。
まぁ、どうせ目当てはあの健康椅子だろうから、風呂に入りに来た俺たちにはあまり関係がないといえば関係はない話なのだが……
ちなみに、今ここにいるのは俺とママン、レティとアーリー、ノーラおばさんとミーシャとグライブだ。
パパンズはというと、健康椅子目当てに開店早々銭湯に乗り込んで行った。
ママンたちはというと、“どうせ初めの頃は混雑するだろうから、利用者が少なくなってきたら使う”と言っていた。
賢明な判断だ。
案の定、中に入ってしまえば浴室へと向かう方には人は少なく、第二ロビーの方に向かって人がずらりと並んでいた。
俺が銭湯の玄関口を潜ると、すでに利用が済んだ人たちから“肩が軽くなった”とか“腰の痛みが引いた”とか“膝の曲げ伸ばしが出来るようになって、杖なしで歩けるようになった”とかとか……
感謝やお礼の言葉を、沢山の人から掛けられた。
もともとは、催促される前に作ってしまおう、と始めたことだが、これだけ感謝されると悪い気はしないものだ。
前世では、作った機械はメーカーに納品して終了だったが、こうして自分の作ったものが人から感謝されるというのは、結構……いやかなり嬉しいものがある。
まさに、製作者冥利に尽きるというものだ。
だからといって、すぐ人を持ち上げて、褒め殺しにするのは正直止めて欲しいものがある……
あれ、やられてる方はかなり恥ずかしいのだ。
まぁ、そんなこんなで、この健康椅子ブームはしばらく続き……
この椅子のお陰か、その因果関係は定かではないが、この冬、村では風邪をひいて寝込む者は一人も出なかったのだった。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
楽しみにしてくれている方・・・がいるかどうかは分かりませんが、更新が遅れて申し訳ありません。ごめんなさい。
と、いうのも数年ぶりに風邪で熱を出して寝込んでおりました。
病院に行って薬をもらったら、すぐによくなりましたけど。
インフルでなかったのが、不幸中の幸いでしょうか。
これからの時期、インフルが猛威を振るうようになりますので、皆様もご自愛のほどを。
手洗いうがいは地味だけど効果的だと、お医者様も申しておりました。あと、マスクね。
体調の方はすっかり元通りなので、次回からはまた以前のペースに戻るかと思います。
てなわけで、今回の話はここで一区切りで次回からはまた別の話です。
日はまだまだ高く、大衆浴場が開業するには随分早い時間だ。
実は、ついさっきまで荷物の搬入を手伝ってくれていたクマのおっさんも一緒にいたのだが、他にすることがあるからと、早々に帰ってしまっていた。
クマのおっさんにも是非とも体感して欲しかったのだが、用事とあらば仕方ない。
「お前の言う通りに作ってはみたが……」
「一体なんでぇこりゃ? 寝るにしても、座るにしても、どっちつかずで中途半端だろ……
こんなん何に使うってんだ?」
棟梁とウチのじーさんが、出来上がったものを目の前にして、そんな事を聞いて来た。
「一言で言うなら、両方の間の子ってとこだな」
俺たちの前には、椅子があった。
その外見は言うなれば、ビーチチェアだとかサマーベッドと呼ばれている物……一般にプールサイドや、砂浜に置いてあるあの一人掛け用の長いベッドみたいな椅子、あれによく似ていた。
ていうかまんまだな。
そもそもあれをイメージしてデザインした訳だし。
全体を木製のフレームによって構成されており、座る部分や、背もたれの部分には、長時間座っていてもケツや背中が痛くならないように、なんぞ得体の知れない動物の革を細くして編んで作ったシートが張ってあった。
固い椅子に長い事座っているってのは、それはそれできついものがあるからな。
で、そんな椅子が計五脚。
それが大衆浴場の拡張された第二ロビーの隅っこの方に設置されることになった。
一見ただのビーチチェアだが、張られた革になにやら模様がびっしりと書き込まれており、それがただの椅子ではないことは一目瞭然だった。
まぁ、この模様が魔術回路であると分かる人間は俺と神父様くらいなものだが、この村の住人であるなら、今までの経験からそれだけで普通の椅子ではないと勘づくことだろう。
「で、こいつは一体何なんだ?
お前が関わっているということは、ただの椅子、なんてことはないんだろ?」
棟梁もその一人で、出来上がた椅子の背もたれ部分をこつこつと叩きながら、俺に聞く。
「でゅふふふっ!
まぁまぁ、百聞は一見に如かずと申します。
取り敢えず、二人とも座ってみてくださいな」
俺がそう勧めると、三人はゆっくりと椅子に腰を落とした。
……って神父様、アンタ俺と一緒になって実験中に散々試乗したでしょうに……まぁ、いいけどさ。
当然だが、これを作ったのはこの二人だ。
しかし、用途も碌に説明せずに“こんな感じの物を作って欲しい”と、簡単なイメージ図と説明文を書いた紙だけを渡して制作に当たってもらっていたので、作った本人たちも完成品を見るまでは何を作っていたのかよく分かっていなかったのだ。
別に、説明するのが面倒くさかったから省いていた……という訳ではない。
まぁ多少はそう思わなくもなかったが、一番の理由としては驚かそうと思ってのことだ。
そう! サプライズってやつだな!
二人とも、こいつを体験したなら心底驚くこと間違いなしだっ!
俺が二人にこの椅子の制作を依頼してから、骨組みが完成するまでたったの数日だった。
元々、この手の寝ながら座るタイプの椅子、所謂安楽椅子だとかリクライニングチェアの類は一般的ではないらしく、イメージを伝えるのに随分と苦労した。
そんな物を彼らは、本業の傍ら手探り状態で作業を進めていたはずなのに、短期間で仕上げて来たのだ
……職人ってマジパネェよな。
まぁ、そこからいろいろと魔術陣の試行錯誤やら、革のシートを張ったりで、完成には更に数日掛かってしまった訳だけど……
特に設置場所が銭湯なだけに、汗や水分で革が痛まないよう、撥水加工を施すのに時間がかかってしまった。
まぁ、おかげで水で丸洗いが可能になったため、手入れ自体は簡単楽々になった訳だが。
なぜそこまでして銭湯を設置場所に選んだかというと、多くの人たちにこの椅子を利用してもらいたいと思ってのことだ。
銭湯は村で一番人が集まる所だからな。
この意見については、俺も神父様も共通の考えだった。
なんだかんだとぶつくさ言いながら作ったものだが、作ったからには沢山の人に利用してもらいたいと思うのが制作者としての心情だ。
で、本日めでたく完成となったので、クマのおっさんたち自警団員の方々に椅子の搬入を頼んで運び込んでもらい、この椅子の制作に携わったお二方には、他の人たちよりも一足早くお披露目と相成った次第である。
「んっ……なんぞふにょふにょしてケツの下が落ち着かんな……」
「慣れない感覚だな……」
じーさんも棟梁も、普通の椅子との感覚の違いに落ち着かないのか、もぞもぞと細かく身じろぎをしていた。
まぁ、ハンモックみたいなものなので確かに安定感はないわな。
こればっかりは慣れなのでどうしようもないが、きっとすぐ慣れるだろう。
「注目っ!
では、この椅子の使い方を説明したいと思いますっ!」
「おっおう……」
「ふむ……」
「では、まず全身の力を抜いてリラックスしてください。そうしたらシートにしっかり体を預けます。
そして最後に、肘掛の先端部分を掴みます。
少しだけ魔力が抜けていく感覚がありますが、気にせず完了するまではそのままでいてください。
すぐに終わります。
で、終わったら手は放してもらって結構です。
あとは勝手に始まって、勝手に終わるので座っているだけでオーケーです!」
俺の説明に目と耳を傾けていた二人が、ぎこちなくだが言われた通りに操作を始める。
その隣で……
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ……」
早速この椅子を堪能している人が一人いた。
なに一人くつろいでんですか神父様ぁ……
「おっ!? おおおっ!?
なんだなんだ!? なんか背中がドンドンされるぞコレ!?」
「っ!?
それになんだか急に体が熱くなってきたような……」
突然現れた変化に、じーさんも棟梁もハトが豆鉄砲を喰らったように驚いていた。
じーさんなんぞ、慌てて降りようとしたくらいだ。
「ぐっふっふっふっふ~!
まぁまぁ、体に害があるものでもないので、そのままの姿勢で聞いてくださいな。
では、これが何かを説明致しましょう!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ……」
神父様……うるさいっす……
今回作った物は、有り体に行ってしまえば健康椅子とでも言うのか……まぁ、“マッサージチェア”の類だと思えば概ね間違いではないだろう。
当初の設計では、体の調子を整えるだけの健康器具的なものを作る予定だったのだが、魔術陣の実験中に俺と神父様があれもこれもと調子に乗って機能を拡張した結果、こんなものが仕上がってしまったのだった。
そんなワルノリから生まれた健康椅子だが、主な機能は次の三つだ。
一つは本来の目的である、魔力の整調効果。
魔力が停滞するから体調が悪くなるのか、体調が悪いから魔力が停滞するのか……
細かいことはよく分からないが、とにかく全身に魔力を循環させていれば体調が悪くなる、ということはないらしい。
この辺りは以前、ミーシャのところの牛さんで実験した時のままだ。
多少魔術回路に手は加え、魔力の循環を体内の魔力密度の低い所を重点的に巡るようにしたくらいで本質的なところは変わっていない。
二つ目は、マッサージ機能の追加だ。
ただ寝転がっているだけでは退屈だろう、という神父様の意見から新たに加えられた機能の一つだ。
軽く叩かれた程度の微弱な衝撃波を、短時間で連続して発生させて体へとぶつけている。
按摩でいうところの、叩打法に近いのではないだろうか?
子どもが両親の肩をトントントン、と叩いているあれだな。
実はこれ、鎧熊を吹き飛ばした魔術陣、破術陣とほぼ魔術回路が同じなのだ。
威力を上げるとあれになるって考えると、なんとも奇妙な気分だ……
ついでなので、機能にも無駄に拘ってみましたっ!
なんとモードを二つも搭載することに成功したのだ。
一つは、打面が移動する“ムーブモード”。
範囲は成人男性(神父様基準)で、大体首下からふくらはぎくらいまで。
これ間を行ったり来たりと繰り返すのだ。
勿論、ストップ機能も完備しているので、自分の都合のいいところで、打面の移動を停止すことも出来る。
そしてもう一つが、全面打撃“フルモード”だ。
通常のマッサージチェアは、揉んだり叩いたりしたりする部位があり、それが移動することでマッサージする部分を変動させている。
しかし、この健康椅子は少し違う。
衝撃波を発生させる魔術回路は、革張りのシートの至る所に配置されている。
無数に衝撃を発生させる部分が存在するが故に、従来のマッサージチェアでは再現不可能な全面を同時にマッサージするということがこの健康椅子では可能なのである。
これらのモードの切り替えは、肘掛にあるコンパネからいつでも変更可能だ。
ちなみにだが……
“ムーブモード”も正確には、打面が移動しているのではなく規則正しく配列された回路が順番にON・OFFを繰り返すことで、“移動しているように”感じているに過ぎないのだ。
電光掲示板の文字や絵が、流れている様に見えるのと理屈としては同じだ。
あれは一つのランプだけを見ていると、ただ点滅しているだけにしか見えないが、全体として見た時、初めて“動いている”という錯覚を感じるのだ。
正直な話、この“ムーブモード”が作っていて一番面倒だったのは秘密の話だ。
もうON・OFFする接点が多すぎて多すぎて……
そして最後の三つ目が、熱的作用だ。
棟梁も言っていたが、この椅子は座っているだけで体が暖かくなってくる。
これは銭湯の風呂釜にも使われている熱術陣・加と同じものが使われているからに他ならない。
魔術陣で発生させた熱量を、直接人体へと送っているのだ。
最も、その出力は風呂釜に使っているものと比較したら微々たるものだがな。
このアイデアの発案は俺だ。
この健康椅子を風呂上りに利用する人もいるだろうから、湯冷めしないようにという配慮からだ。
特にこれからは冬に向けてどんどん寒くなっていくからな、健康椅子といいながら使っていたら風邪ひいたとあっては目も当てられない。
利用方法は一人一回十分程度の時間交代制にした。
治術陣においては、未だ不明な点も多いので、長時間の利用で人体にどんな影響が出るか分からない以上、長時間の利用は避けた方が無難だろうと、神父様との話し合いによって決まったことだ。
まぁ、牛で実験した時は一日の連続使用では特に問題らしい問題も出ていなかったので大丈夫だとは思うが、人と牛では違いもあるだろうし、念には念をということだ。
なので、牛用に作った時は、常時魔力を吸収し、即時魔術陣へ送る連続稼働方式を採用していたが、今回は使用前に一定量の魔力を吸収した上で一時的に保存し、貯めた魔力の分だけ稼働するというタイマー方式を採用している。
それが大体十分ほど持続する、という事だ。
まぁ、時間無制限にして、一人に長々と占有されても困りものだから、という理由もある。
一応対策としては、利用に関してルールを設けて守らない奴は出禁とか、一回当たり低額だが利用料を取ることで一人の連続使用を抑止している。
低額だが、回数がかさめば懐に響くというものだ。
俺としては、出来る限り多くの人に利用して欲しいからな。
それに、通常のマッサージチェアだって長時間の利用はむしろ体に悪いから止めるように注意書きにも書いてあることだ。
どんなに良いものであっても、過ぎたるは猶及ばざるが如し、である。
用法・容量は正しく守って使いましょう。
……で、十分後……
「おおぉぉーー! 肩が軽くなっとるわっ!」
と、椅子から降りたじーさんが肩をぐるぐる回して叫んでいた。
「驚いたなこれは……村の連中が騒いでいたのにも納得だ……
腰の痛みが、嘘のように引いている」
棟梁は棟梁で、上半身をツイストさせながら感想を述べた。
で、神父様はというと……
「すぅー……」
寝てるし……
この椅子を一番堪能しているのは、もしかしてこの人ではなかろうか……別にいいけど……
で、健康椅子を実体験してもらった二人から、何か思う点はないか聞いたところ、
「もっとガツン! と来ないもんか? こう、ガツンッ! と」
じーさんの言葉を要約すると、“打撃の強さが弱いからもっと強くせい”という事らしい。
棟梁も同じ意見だった。
そういえば打撃の強度設定とか入れてなかったなぁ。
変なところに拘って作っていた所為で、その部分をすっかり忘れていた。
まぁ、銭湯の開店までまだ多少時間もある、その程度の改造なら時間までには済むだろう。
二人とも、今日はまだやることがあるとかで、俺に礼を言うと、早々にここを後にした。
まぁ、考えてもみれば今日は平日の昼過ぎだ。
普段ならまだ仕事中であることを思えば、そんな中俺の呼び出しに応えてくれた二人の人付き合いのよさに頭が下がるものがあった。
二人と別れたあと、俺は早速椅子の機能追加の改造作業を始めたのだった。
一人椅子に座ったままグースカ寝こけている神父様を横目にして……
で、その日の夜……
朝一から、健康椅子の導入については村の掲示板を使って告知していたので、結構な人が銭湯に来ているだろうことは予想出来ていたのだが……
「わぁお……なんじゃこれ……」
銭湯から人、はみ出てんじゃん……
そこには、銭湯の開店当初を彷彿とさせるほどの人の行列が出来上がっていた。
いや、たぶんそれ以上か……
ってか、この村のどこにこれだけの人がいたのだろうか……?
「あら? すごい人ね……」
その光景を見て、うちのママンがぽつりとつぶやいていた。
まぁ、どうせ目当てはあの健康椅子だろうから、風呂に入りに来た俺たちにはあまり関係がないといえば関係はない話なのだが……
ちなみに、今ここにいるのは俺とママン、レティとアーリー、ノーラおばさんとミーシャとグライブだ。
パパンズはというと、健康椅子目当てに開店早々銭湯に乗り込んで行った。
ママンたちはというと、“どうせ初めの頃は混雑するだろうから、利用者が少なくなってきたら使う”と言っていた。
賢明な判断だ。
案の定、中に入ってしまえば浴室へと向かう方には人は少なく、第二ロビーの方に向かって人がずらりと並んでいた。
俺が銭湯の玄関口を潜ると、すでに利用が済んだ人たちから“肩が軽くなった”とか“腰の痛みが引いた”とか“膝の曲げ伸ばしが出来るようになって、杖なしで歩けるようになった”とかとか……
感謝やお礼の言葉を、沢山の人から掛けられた。
もともとは、催促される前に作ってしまおう、と始めたことだが、これだけ感謝されると悪い気はしないものだ。
前世では、作った機械はメーカーに納品して終了だったが、こうして自分の作ったものが人から感謝されるというのは、結構……いやかなり嬉しいものがある。
まさに、製作者冥利に尽きるというものだ。
だからといって、すぐ人を持ち上げて、褒め殺しにするのは正直止めて欲しいものがある……
あれ、やられてる方はかなり恥ずかしいのだ。
まぁ、そんなこんなで、この健康椅子ブームはしばらく続き……
この椅子のお陰か、その因果関係は定かではないが、この冬、村では風邪をひいて寝込む者は一人も出なかったのだった。
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楽しみにしてくれている方・・・がいるかどうかは分かりませんが、更新が遅れて申し訳ありません。ごめんなさい。
と、いうのも数年ぶりに風邪で熱を出して寝込んでおりました。
病院に行って薬をもらったら、すぐによくなりましたけど。
インフルでなかったのが、不幸中の幸いでしょうか。
これからの時期、インフルが猛威を振るうようになりますので、皆様もご自愛のほどを。
手洗いうがいは地味だけど効果的だと、お医者様も申しておりました。あと、マスクね。
体調の方はすっかり元通りなので、次回からはまた以前のペースに戻るかと思います。
てなわけで、今回の話はここで一区切りで次回からはまた別の話です。
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魔法公証人ルロイ・フェヘールは、
そんなレッジョで真実を司る神ウェルスの御名の元、
証書と魔法により真実を見極める力「プロバティオ」をもって、
トラブルを抱えた依頼人たちを助けてゆく。
異世界公証人ファンタジー。
基本章ごとの短編集なので、
各章のごとに独立したお話として読めます。
カクヨムにて一度公開した作品ですが、
要所を手直し推敲して再アップしたものを連載しています。
最終話までは既に書いてあるので、
小説の完結は確約できます。
【完結】ヒトリぼっちの陰キャなEランク冒険者
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人間、亜人、獣人、魔物といった様々な種族が生きる大陸『リトーレス』。
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彼女の名前はヒトリ、ひとりぼっちで陰キャでEランク冒険者。
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ひとりぼっちで陰キャでEランク冒険者の彼女の秘密とは――。
※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さん、「ノベルアップ+」さん、「ノベリズム」さん、「ネオページ」さんとのマルチ投稿です。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
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『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
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あまたある産声の中で‼~『氏名・使命』を奪われた最凶の男は、過去を追い求めない~
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※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。
※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。
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四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
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・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
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