42 / 85
58話 鎧熊 その4
しおりを挟む
バルディオは団員に向かって、鼓舞するように声を張り上げた。
そんなバルディオに応えるように、団員たちの地を揺るがさんばかりの鬨の声が響き渡る……ことは、残念ながらなかった。
それも無理からぬことなのだろう。
皆、恐怖で足が竦んでしまっていたのだ。
いくら鎧熊に対する訓練はしている、とはいってもそれはあくまで反撃をしてこない木偶相手の話しだ。
長年自警団に勤めているバルディオでさえ、生きた鎧熊と遭遇し、ましてや戦う事などこれが初めてなのだ。
普段、中型の獣の相手しかしたことがない彼らが、自身より遥かに大きな獣と対峙することの精神的負担は計り知れないものがあった。
彼らは辺境の戦士ではあったが、戦うことを本職としている本物の戦士ではない。
その本質は、多少戦い方を心得ている農夫でしかないのだ。
目の前で仲間が無残にやられて、それでも尚戦意を高揚させていられるほど戦い慣れしてはいない。
それでも、いく人かは辛うじてバルディオの指示に反応し、攻勢へと出るがそれも鎧熊の腕の一振りで吹き飛ばされてしまった。
その現状を目の当たりにして、更に団員たちは二の足を踏む……
「くっ……」
こういう事体を想定していなかった訳ではないが、さすがにタイミングが悪すぎた。
バルディオの口からも、ついいら立ちの声がもれる。
「うおおぉぉぉ!!」
そんな中、迅雷の気迫を纏って、鎧熊に一撃を入れんとその背後から攻め入る者の姿があった。
それは、巨大な戦斧を手にしたフェオドルだった。
フェオドルは戦斧を振り上げると、渾身の力を込めて振り下ろす。
しかし……
どっ! と肉を打つ鈍い音がしたのみで、その刃が鎧熊の肉を切り裂くことはなかった。
フェオドルとて、この一撃が鎧熊に効くなどと露ほども思っていない。
だからといって、何もせず見ているだけなど彼の性分ではなかった。
「臆するなとは言わんっ!
だが、その足を止めるなっ! その腕を止めるなっ!
考えることを手放すなっ! 勝つことを諦めるなっ!
どれか一つでも捨て去れば、待っているのは死だけだぞっ!
それは自分のことだけではないっ!
そこには守る者たちも含まれていることを忘れるなっ!」
フェオドルの激昂にも似た一喝が響く。
それを耳にした者たちは、己の手足の震えを押さえこみ代わりに心を奮い起こさせその得物の切っ先を鎧熊へと向けた。
前後をバルディオとフェオドルに挟まれ、更に自警団員たちで囲む。
そこに、隊列だの隊形だのといったものはなかった。
鎧熊に隊列を突き崩されたときから、どちらが先に倒れるかの総力戦となってしまっていた。
それは狩る者と狩る者との、意地のぶつかり合いだった。
バルディオの、そしてフェオドルの手にした得物が唸りを上げて鎧熊を襲い、お返しとばかりにその狂腕が振り回された。
そして、僅かにできた間隙を、透かさず他の団員が執拗に攻めたてる。
その中には、鎧熊の狂腕に薙ぎ払われる者、体当たりで吹き飛ばされる者、少なくない団員たちが次々と鎧熊の餌食となり戦線を離脱していった……
怖くない訳がなかった……それでも、自分たちには背負うもの、守るべき者たちがいるのだと自分で自分を焚きつけて、次の一歩を踏み出したのだ。
………
……
…
それが何人目の犠牲者なのか、もうバルディオは数えてはいなかった。
周囲に横たわる同胞の姿には目もくれず、バルディオは眼前の鎧熊を睨み据えていた。
現状、軽い被害だといえる状態では決してなかったが、しかし、出た被害に見合う成果は一目で分かるほどに鎧熊の体に現れていた。
鎧熊のその背に突き刺さるは無数の剣と槍。
その姿は、宛ら巨大なハリ鼠のようである。
それは団員たちが鎧熊に吹き飛ばされながらも、報いた一矢であった。
鎧熊の体から得物を伝い、鮮血がポタリポタリと大地を濡らす。
まさに満身創痍。
とはいえ、それはバルディオを始めとした自警団員も同じことだった。
無傷の者など誰一人としてなく、立っていられる団員も数える程度と残り僅かになてしまっていた。
特に、前衛で防御を担っていたバルディオとフェオドルの負傷は取り分け酷く、身に着けている鎧が、手にした武器が欠けたり、変形してしまっていることから、その激しさが窺い知れた。
そんな時……
向かい合っていた鎧熊の視線が、ふとバルディオから逸らされた。
何に気を取られたのか知らないが、戦場で敵から目を逸らすなど愚の骨頂。
これは千載一遇のチャンスだと、バルディオがそう思った時……
一体どこにそんな力が残っていたのか、鎧熊はあらぬ方へと向かって突然猛進しだしたのだった。
手薄となった穴だらけの包囲網を、鎧熊は容易に突破してみせる。
目の前のバルディオも他の団員たちも、全て無視して……何かを目指すように鎧熊は走った。
(逃げた? このタイミングで? なぜ?)
バルディオは鎧熊の行く先へと視線を滑らせる。
そして、その先にあったもの……いや、いた者の姿を捉えてバルディオは言葉を失った……
「っ!?」
バルディオが見たのは、置き去りにされた荷車の前で膝を抱えてうずくまる、一人の子どもの姿だった。
一瞬、なぜ? とも思ったが自分達は鎧熊と闘っているうちに知らず知らず避難途中の子どもたちの方へと近づいてしまっていたのだと、バルディオは理解した。
「しまったっ……!
逃げろおおぉぉぉ!!」
肺腑が張り裂けんばかりの声量で、バルディオは叫んだ。
それは警告でも勧告でもなく、ただ“助かって欲しい”という彼の願いの叫びだった。
-------------------------------------
鎧熊が姿を現して、十分くらいは経っただろうか……
思いの外自力で動ける子たちが少なかった所為で、避難行動は難航していた。
自警団のにーちゃんたちや、神父様やシスターたちが必死で誘導しているが、その成果はあまり芳しい様子ではない。
村で育った奴らはまだいい、自警団のにーちゃんたちや神父様の言う事をよく聞いている。
しかし、外から来た子たちは皆酷いものだった。
何処でもいいので逃げてくれればいのだが、最悪うずくまったまま動かなくなってしまう子が何人もいたのだ。
無理もないことだというのは分かる。
なにせ、ここに来る以前は町やラッセ村よりは内陸の比較的大きな村から来た子たちばかりだ。
獣に襲われる、なんて経験自体今までしたことはないだろうからな……
まぁ、かく言う俺たち村のガキだってこんな形で獣に、それも鎧熊に襲われたのなんて初めてな訳だが、そこは辺境住まいの子どもだ。
日ごろから親や神父様、それに自警団の連中から散々脅されているので、多少なりとも覚悟は出来ているし、いざという時のために剣術の稽古の時間に非常時において“どう対処するべきか、どうすれば助かるか”ということは先生たちからみっちり教え込まれている。
俺たちは戦いに加勢することは出来ないが、少なくとも邪魔になったり、足手まといにならないための行動は皆心得ているはずだ。
それが、実践できるかどうかは難しいところではあると思うが……
周囲を見渡せば、未だに人の姿が目に付いた。決して多くはなかったが、だからといって少ない訳でもない。
そのほとんどが自警団のにーちゃんたちだ。
皆、動けなくなってしまった子どもたちを抱えて、少しでも離れた場所へと移送している最中だった。
中には、一人で三人もの子どもを担いでいる兵もいた。
彼らはそうして子どもたちをある程度離れた場所まで移動させると、そうして運んだ子どもたちを別の団員に預けてはまた戻り、他に残っているの子たちの移送をする、というピストン輸送を繰り返していた。
今の俺に、子どもを担ぎあげて運ぶなんて力はない。
それでも、動けないでいる子を見つけて、自警団のにーちゃんたちの所へ連れていくなり、逆ににーちゃんたちへ知らせて連れて来てやる事くらいなら出来る。
俺とて、今、この子たちがここにいる事に、少なからず責任は感じているのだ。
本を正せば、俺が“銭湯を作ろう!”なんて言い出した事で集まった人たちの子どもなのだ。
これでも、一応社会人として働いていた身だ。
俺には関係ない、知らぬ存ぜぬで通してしまうほど無責任ではいたくはないし、恩を仇で返すようなまねもしたくはない。
だから、今、自分が出来る事の全部を全力でやる! ただそれだけだ。
「うおおぉぉぉ!!」
突然轟いた雄たけびに、一瞬体がビクッとした。
声のした方へと顔を向ければ、自警団の連中が鎧熊相手に必死に戦っているところだった。
俺のいる所からは見えなかったが、今のは声の調子からしてクマのおっさんだな……
熊みたいなおっさんが、ほんまもんの熊と戦ってんのか……なんて、くだらない事を考える場合じゃないな。
なんだか団員さんたちの人数が、最初よりずいぶん減っているような気がするが皆大丈夫だろうか……
戦線も初めに鎧熊がいた場所より、こっちに近づいてきているようだし、ここいるのもそろそろ限界かもしれない。
さっさと残っている子がいないか確認して、俺もとっととずらかろう。
俺は置き去りにされている数台の荷車の影を、一つ一つ見て回った。
これは、本来なら俺たちが引き上げる段階で、一緒に村へと持って帰るはずだった本日の戦利品の数々だ。
戦利品は、荷車にまとめて自警団が連れてい数頭の牛で引っ張って帰る手はずになっていたのだが、牛と荷車を繋ぐ前に鎧熊が現れてしまったので、肝心の牛さんは何処かへと逃げてしまっていた。
まぁ、繋げられたままだったら確実に鎧熊のエサになっていただろうから良かったといえば良かったのだろう。
村の牛はよく飼いならされているので、たとえ逃げたとしても数日もしないうちに勝手に村へと帰ってくるのだ。
彼らだって、村の外で自由気ままに生きていくより、村の中で働きながら生活した方が安全だということを理解しているらしい。
と、牛のことはさておき、今は取り残された子がいなかの確認が先だ。
………
……
…
ここまで数台見て回ったが、人影なし。
いいことだ。このまま誰もなければ俺も早々に逃げよう。
自警団の旗色もよろしくないようだし、なんだか雰囲気もヤバい。
子どもたちの避難が完了すれば、ディムリオ先生を始めとした若い団員も加勢に回れるだろうから、それまでもう少しの間なんとか持ちこたえて欲しい。
村長の話だと、神父様も昔はかなりのやり手の魔術師だったといことなので戦力としては十分に期待出来ると思うしな。
俺は、そんな事を考えながら残された最後の荷車へと向かった。
と、
……いた。
少し離れた所からではあったが、確かにそこには荷車の影に隠れるようにして、じっとうずくまってすすり泣く小さな子どもの姿があった。
年は俺と同じくらいだろうか……
見に来て本当によかった。
俺が来なければこの子は助からなかった、などと決めつけるつもりはないが、それでももしこれで、誰かに任せきりにして大けがや、最悪助からなかったなんて事になったら、寝覚めが悪すぎる。
ほっと、安堵の息を一つ。
「おーいっ! そこにいると危ないからこっちに……」
俺は声を掛けつつ、その子へと近づくために駆け出そうと足を踏み出したその時、
「逃げろおおぉぉぉ!!」
「へっ?」
悲鳴にも似た絶叫。
あまりに声がひび割れていた所為で、それが誰のものであるのか分からないほど、その叫びは悲痛に満ちていた。
声に引かれて顔を向ければ、そこにはこちらに向かって猛然と突き進んでくる鎧熊の姿が見えた。
正確には“こちら”ではなく“目の前の子ども”に向かって、だ。
なんでそこにお前がいるんだよっ!? さっきまでもっと遠くに居たはずなのにっ!?
鎧熊も自警団もさっきまではもう少し遠くにいたはずだ。
それがいつの間にかこんなに近くまできていたなんて……
おそらく、戦っているうちにまた場所が移動してしまったのだろう。
「くそっ!!」
兎にも角にも、俺は泣いている子どもに向かって全力で走り出していた。
辿り着いたとして、何が出来るかは分からない。
俺の力では担ぎ上げて逃げるなんてことは出来ないし、鎧熊を何とかするなんてもっと無理だ。
それでま、近づかなければ何も出来ない。
何をするかは、その時考えればいい。
だから、俺は走った。
しかし、こちらは子どもの足、向こうはかなり傷ついているようではあったが……なにせ、背中に剣とか槍とか生やしてたからな、自警団の人たちが頑張った証だろう……それでも獣であることに違いはない。
距離差と速度差を考えて、若干俺の方が早く辿り着くことが出来そうだったが、そこにほとんど差はないように俺には思えた。
傍まで行けたとしても時間がない……か。
だったら出来ることなんて一つしかない……
「うおおおぉぉぉぉ!!!」
俺は限界以上に足の回転速度を上げると、一目散にその子……小さな女の子に向かって走った。
そして……
全力で、渾身の力で、全身全霊の力でもって、俺はその幼女を突き飛ばしたのだった。
突然のことで、悲鳴すら上げずに吹っ飛んでいく幼女……
そして、勢いを殺しきれずにコロコロと転がっていくのが見えた。
……少しかわいそうな事をしたような気もするが、そのままここに残っているよりはずっといいだろう。
下も草なので、大きな怪我はしないと思う。
俺が持っていた運動エネルギーは全て彼女にくれてしまったので、今の俺は速度ゼロ。停止状態だ。
そんな俺にすっと影が差した。
顔を向ければ目の前にはでかくて黒い塊が、その丸太のような腕を振り上げて、振り下ろす……
まさにその瞬間だった。
あかん……これは、あかんやつや……
どっ!
「ごふっ!!」
そんな鈍い音と共に、ダンプカーにでも撥ねられたような衝撃が俺の全身を襲った。
体が引きちぎられるような痛みが奔り、そして世界から上も下も、右も左もなくなった……
あっ、これはたぶん死んだな……
そんなバルディオに応えるように、団員たちの地を揺るがさんばかりの鬨の声が響き渡る……ことは、残念ながらなかった。
それも無理からぬことなのだろう。
皆、恐怖で足が竦んでしまっていたのだ。
いくら鎧熊に対する訓練はしている、とはいってもそれはあくまで反撃をしてこない木偶相手の話しだ。
長年自警団に勤めているバルディオでさえ、生きた鎧熊と遭遇し、ましてや戦う事などこれが初めてなのだ。
普段、中型の獣の相手しかしたことがない彼らが、自身より遥かに大きな獣と対峙することの精神的負担は計り知れないものがあった。
彼らは辺境の戦士ではあったが、戦うことを本職としている本物の戦士ではない。
その本質は、多少戦い方を心得ている農夫でしかないのだ。
目の前で仲間が無残にやられて、それでも尚戦意を高揚させていられるほど戦い慣れしてはいない。
それでも、いく人かは辛うじてバルディオの指示に反応し、攻勢へと出るがそれも鎧熊の腕の一振りで吹き飛ばされてしまった。
その現状を目の当たりにして、更に団員たちは二の足を踏む……
「くっ……」
こういう事体を想定していなかった訳ではないが、さすがにタイミングが悪すぎた。
バルディオの口からも、ついいら立ちの声がもれる。
「うおおぉぉぉ!!」
そんな中、迅雷の気迫を纏って、鎧熊に一撃を入れんとその背後から攻め入る者の姿があった。
それは、巨大な戦斧を手にしたフェオドルだった。
フェオドルは戦斧を振り上げると、渾身の力を込めて振り下ろす。
しかし……
どっ! と肉を打つ鈍い音がしたのみで、その刃が鎧熊の肉を切り裂くことはなかった。
フェオドルとて、この一撃が鎧熊に効くなどと露ほども思っていない。
だからといって、何もせず見ているだけなど彼の性分ではなかった。
「臆するなとは言わんっ!
だが、その足を止めるなっ! その腕を止めるなっ!
考えることを手放すなっ! 勝つことを諦めるなっ!
どれか一つでも捨て去れば、待っているのは死だけだぞっ!
それは自分のことだけではないっ!
そこには守る者たちも含まれていることを忘れるなっ!」
フェオドルの激昂にも似た一喝が響く。
それを耳にした者たちは、己の手足の震えを押さえこみ代わりに心を奮い起こさせその得物の切っ先を鎧熊へと向けた。
前後をバルディオとフェオドルに挟まれ、更に自警団員たちで囲む。
そこに、隊列だの隊形だのといったものはなかった。
鎧熊に隊列を突き崩されたときから、どちらが先に倒れるかの総力戦となってしまっていた。
それは狩る者と狩る者との、意地のぶつかり合いだった。
バルディオの、そしてフェオドルの手にした得物が唸りを上げて鎧熊を襲い、お返しとばかりにその狂腕が振り回された。
そして、僅かにできた間隙を、透かさず他の団員が執拗に攻めたてる。
その中には、鎧熊の狂腕に薙ぎ払われる者、体当たりで吹き飛ばされる者、少なくない団員たちが次々と鎧熊の餌食となり戦線を離脱していった……
怖くない訳がなかった……それでも、自分たちには背負うもの、守るべき者たちがいるのだと自分で自分を焚きつけて、次の一歩を踏み出したのだ。
………
……
…
それが何人目の犠牲者なのか、もうバルディオは数えてはいなかった。
周囲に横たわる同胞の姿には目もくれず、バルディオは眼前の鎧熊を睨み据えていた。
現状、軽い被害だといえる状態では決してなかったが、しかし、出た被害に見合う成果は一目で分かるほどに鎧熊の体に現れていた。
鎧熊のその背に突き刺さるは無数の剣と槍。
その姿は、宛ら巨大なハリ鼠のようである。
それは団員たちが鎧熊に吹き飛ばされながらも、報いた一矢であった。
鎧熊の体から得物を伝い、鮮血がポタリポタリと大地を濡らす。
まさに満身創痍。
とはいえ、それはバルディオを始めとした自警団員も同じことだった。
無傷の者など誰一人としてなく、立っていられる団員も数える程度と残り僅かになてしまっていた。
特に、前衛で防御を担っていたバルディオとフェオドルの負傷は取り分け酷く、身に着けている鎧が、手にした武器が欠けたり、変形してしまっていることから、その激しさが窺い知れた。
そんな時……
向かい合っていた鎧熊の視線が、ふとバルディオから逸らされた。
何に気を取られたのか知らないが、戦場で敵から目を逸らすなど愚の骨頂。
これは千載一遇のチャンスだと、バルディオがそう思った時……
一体どこにそんな力が残っていたのか、鎧熊はあらぬ方へと向かって突然猛進しだしたのだった。
手薄となった穴だらけの包囲網を、鎧熊は容易に突破してみせる。
目の前のバルディオも他の団員たちも、全て無視して……何かを目指すように鎧熊は走った。
(逃げた? このタイミングで? なぜ?)
バルディオは鎧熊の行く先へと視線を滑らせる。
そして、その先にあったもの……いや、いた者の姿を捉えてバルディオは言葉を失った……
「っ!?」
バルディオが見たのは、置き去りにされた荷車の前で膝を抱えてうずくまる、一人の子どもの姿だった。
一瞬、なぜ? とも思ったが自分達は鎧熊と闘っているうちに知らず知らず避難途中の子どもたちの方へと近づいてしまっていたのだと、バルディオは理解した。
「しまったっ……!
逃げろおおぉぉぉ!!」
肺腑が張り裂けんばかりの声量で、バルディオは叫んだ。
それは警告でも勧告でもなく、ただ“助かって欲しい”という彼の願いの叫びだった。
-------------------------------------
鎧熊が姿を現して、十分くらいは経っただろうか……
思いの外自力で動ける子たちが少なかった所為で、避難行動は難航していた。
自警団のにーちゃんたちや、神父様やシスターたちが必死で誘導しているが、その成果はあまり芳しい様子ではない。
村で育った奴らはまだいい、自警団のにーちゃんたちや神父様の言う事をよく聞いている。
しかし、外から来た子たちは皆酷いものだった。
何処でもいいので逃げてくれればいのだが、最悪うずくまったまま動かなくなってしまう子が何人もいたのだ。
無理もないことだというのは分かる。
なにせ、ここに来る以前は町やラッセ村よりは内陸の比較的大きな村から来た子たちばかりだ。
獣に襲われる、なんて経験自体今までしたことはないだろうからな……
まぁ、かく言う俺たち村のガキだってこんな形で獣に、それも鎧熊に襲われたのなんて初めてな訳だが、そこは辺境住まいの子どもだ。
日ごろから親や神父様、それに自警団の連中から散々脅されているので、多少なりとも覚悟は出来ているし、いざという時のために剣術の稽古の時間に非常時において“どう対処するべきか、どうすれば助かるか”ということは先生たちからみっちり教え込まれている。
俺たちは戦いに加勢することは出来ないが、少なくとも邪魔になったり、足手まといにならないための行動は皆心得ているはずだ。
それが、実践できるかどうかは難しいところではあると思うが……
周囲を見渡せば、未だに人の姿が目に付いた。決して多くはなかったが、だからといって少ない訳でもない。
そのほとんどが自警団のにーちゃんたちだ。
皆、動けなくなってしまった子どもたちを抱えて、少しでも離れた場所へと移送している最中だった。
中には、一人で三人もの子どもを担いでいる兵もいた。
彼らはそうして子どもたちをある程度離れた場所まで移動させると、そうして運んだ子どもたちを別の団員に預けてはまた戻り、他に残っているの子たちの移送をする、というピストン輸送を繰り返していた。
今の俺に、子どもを担ぎあげて運ぶなんて力はない。
それでも、動けないでいる子を見つけて、自警団のにーちゃんたちの所へ連れていくなり、逆ににーちゃんたちへ知らせて連れて来てやる事くらいなら出来る。
俺とて、今、この子たちがここにいる事に、少なからず責任は感じているのだ。
本を正せば、俺が“銭湯を作ろう!”なんて言い出した事で集まった人たちの子どもなのだ。
これでも、一応社会人として働いていた身だ。
俺には関係ない、知らぬ存ぜぬで通してしまうほど無責任ではいたくはないし、恩を仇で返すようなまねもしたくはない。
だから、今、自分が出来る事の全部を全力でやる! ただそれだけだ。
「うおおぉぉぉ!!」
突然轟いた雄たけびに、一瞬体がビクッとした。
声のした方へと顔を向ければ、自警団の連中が鎧熊相手に必死に戦っているところだった。
俺のいる所からは見えなかったが、今のは声の調子からしてクマのおっさんだな……
熊みたいなおっさんが、ほんまもんの熊と戦ってんのか……なんて、くだらない事を考える場合じゃないな。
なんだか団員さんたちの人数が、最初よりずいぶん減っているような気がするが皆大丈夫だろうか……
戦線も初めに鎧熊がいた場所より、こっちに近づいてきているようだし、ここいるのもそろそろ限界かもしれない。
さっさと残っている子がいないか確認して、俺もとっととずらかろう。
俺は置き去りにされている数台の荷車の影を、一つ一つ見て回った。
これは、本来なら俺たちが引き上げる段階で、一緒に村へと持って帰るはずだった本日の戦利品の数々だ。
戦利品は、荷車にまとめて自警団が連れてい数頭の牛で引っ張って帰る手はずになっていたのだが、牛と荷車を繋ぐ前に鎧熊が現れてしまったので、肝心の牛さんは何処かへと逃げてしまっていた。
まぁ、繋げられたままだったら確実に鎧熊のエサになっていただろうから良かったといえば良かったのだろう。
村の牛はよく飼いならされているので、たとえ逃げたとしても数日もしないうちに勝手に村へと帰ってくるのだ。
彼らだって、村の外で自由気ままに生きていくより、村の中で働きながら生活した方が安全だということを理解しているらしい。
と、牛のことはさておき、今は取り残された子がいなかの確認が先だ。
………
……
…
ここまで数台見て回ったが、人影なし。
いいことだ。このまま誰もなければ俺も早々に逃げよう。
自警団の旗色もよろしくないようだし、なんだか雰囲気もヤバい。
子どもたちの避難が完了すれば、ディムリオ先生を始めとした若い団員も加勢に回れるだろうから、それまでもう少しの間なんとか持ちこたえて欲しい。
村長の話だと、神父様も昔はかなりのやり手の魔術師だったといことなので戦力としては十分に期待出来ると思うしな。
俺は、そんな事を考えながら残された最後の荷車へと向かった。
と、
……いた。
少し離れた所からではあったが、確かにそこには荷車の影に隠れるようにして、じっとうずくまってすすり泣く小さな子どもの姿があった。
年は俺と同じくらいだろうか……
見に来て本当によかった。
俺が来なければこの子は助からなかった、などと決めつけるつもりはないが、それでももしこれで、誰かに任せきりにして大けがや、最悪助からなかったなんて事になったら、寝覚めが悪すぎる。
ほっと、安堵の息を一つ。
「おーいっ! そこにいると危ないからこっちに……」
俺は声を掛けつつ、その子へと近づくために駆け出そうと足を踏み出したその時、
「逃げろおおぉぉぉ!!」
「へっ?」
悲鳴にも似た絶叫。
あまりに声がひび割れていた所為で、それが誰のものであるのか分からないほど、その叫びは悲痛に満ちていた。
声に引かれて顔を向ければ、そこにはこちらに向かって猛然と突き進んでくる鎧熊の姿が見えた。
正確には“こちら”ではなく“目の前の子ども”に向かって、だ。
なんでそこにお前がいるんだよっ!? さっきまでもっと遠くに居たはずなのにっ!?
鎧熊も自警団もさっきまではもう少し遠くにいたはずだ。
それがいつの間にかこんなに近くまできていたなんて……
おそらく、戦っているうちにまた場所が移動してしまったのだろう。
「くそっ!!」
兎にも角にも、俺は泣いている子どもに向かって全力で走り出していた。
辿り着いたとして、何が出来るかは分からない。
俺の力では担ぎ上げて逃げるなんてことは出来ないし、鎧熊を何とかするなんてもっと無理だ。
それでま、近づかなければ何も出来ない。
何をするかは、その時考えればいい。
だから、俺は走った。
しかし、こちらは子どもの足、向こうはかなり傷ついているようではあったが……なにせ、背中に剣とか槍とか生やしてたからな、自警団の人たちが頑張った証だろう……それでも獣であることに違いはない。
距離差と速度差を考えて、若干俺の方が早く辿り着くことが出来そうだったが、そこにほとんど差はないように俺には思えた。
傍まで行けたとしても時間がない……か。
だったら出来ることなんて一つしかない……
「うおおおぉぉぉぉ!!!」
俺は限界以上に足の回転速度を上げると、一目散にその子……小さな女の子に向かって走った。
そして……
全力で、渾身の力で、全身全霊の力でもって、俺はその幼女を突き飛ばしたのだった。
突然のことで、悲鳴すら上げずに吹っ飛んでいく幼女……
そして、勢いを殺しきれずにコロコロと転がっていくのが見えた。
……少しかわいそうな事をしたような気もするが、そのままここに残っているよりはずっといいだろう。
下も草なので、大きな怪我はしないと思う。
俺が持っていた運動エネルギーは全て彼女にくれてしまったので、今の俺は速度ゼロ。停止状態だ。
そんな俺にすっと影が差した。
顔を向ければ目の前にはでかくて黒い塊が、その丸太のような腕を振り上げて、振り下ろす……
まさにその瞬間だった。
あかん……これは、あかんやつや……
どっ!
「ごふっ!!」
そんな鈍い音と共に、ダンプカーにでも撥ねられたような衝撃が俺の全身を襲った。
体が引きちぎられるような痛みが奔り、そして世界から上も下も、右も左もなくなった……
あっ、これはたぶん死んだな……
0
お気に入りに追加
1,247
あなたにおすすめの小説
新人神様のまったり天界生活
源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。
「異世界で勇者をやってほしい」
「お断りします」
「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」
「・・・え?」
神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!?
新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる!
ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。
果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。
一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。
まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!
僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~
SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。
ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。
『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』
『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』
そんな感じ。
『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
隔週日曜日に更新予定。
創星のレクイエム
有永 ナギサ
ファンタジー
2024年、今や世界中の人々が魔法を使えるようになった時代。世界はレイヴァ―スが創設した星葬機構と、神代が創設した大財閥クロノス。この二陣営が己が悲願のために争っていた。
そんな中最強クラスの魔法使いである四条陣は、禁忌の力に飢えながらも裏の仕事をこなす日々を送っていた。しかし一人の少女との出会いをきっかけに、陣は見つけてしまう。かつてこの混沌に満ちた世界を生み出した元凶。サイファス・フォルトナーの遺産を。
元四条家次期当主としての因縁、これまで姿をくらませていたレーヴェンガルトの復活、謎の少女と結ぶ禁忌の契約。陣が辿り着く果ては己が破滅か、それとも……。これは魔都神代特区を舞台に描かれる、星を歌う者たちの物語。
小説家になろう様、アルファポリス様にも掲載しています。
半身転生
片山瑛二朗
ファンタジー
忘れたい過去、ありますか。やり直したい過去、ありますか。
元高校球児の大学一年生、千葉新(ちばあらた)は通り魔に刺され意識を失った。
気が付くと何もない真っ白な空間にいた新は隣にもう1人、自分自身がいることに理解が追い付かないまま神を自称する女に問われる。
「どちらが元の世界に残り、どちらが異世界に転生しますか」
実質的に帰還不可能となった剣と魔術の異世界で、青年は何を思い、何を成すのか。
消し去りたい過去と向き合い、その上で彼はもう一度立ち上がることが出来るのか。
異世界人アラタ・チバは生きる、ただがむしゃらに、精一杯。
少なくとも始めのうちは主人公は強くないです。
強くなれる素養はありますが強くなるかどうかは別問題、無双が見たい人は主人公が強くなることを信じてその過程をお楽しみください、保証はしかねますが。
異世界は日本と比較して厳しい環境です。
日常的に人が死ぬことはありませんがそれに近いことはままありますし日本に比べればどうしても命の危険は大きいです。
主人公死亡で主人公交代! なんてこともあり得るかもしれません。
つまり主人公だから最強! 主人公だから死なない! そう言ったことは保証できません。
最初の主人公は普通の青年です。
大した学もなければ異世界で役立つ知識があるわけではありません。
神を自称する女に異世界に飛ばされますがすべてを無に帰すチートをもらえるわけではないです。
もしかしたらチートを手にすることなく物語を終える、そんな結末もあるかもです。
ここまで何も確定的なことを言っていませんが最後に、この物語は必ず「完結」します。
長くなるかもしれませんし大して話数は多くならないかもしれません。
ただ必ず完結しますので安心してお読みください。
ブックマーク、評価、感想などいつでもお待ちしています。
この小説は同じ題名、作者名で「小説家になろう」、「カクヨム」様にも掲載しています。
3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜
I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。
レベル、ステータス、その他もろもろ
最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。
彼の役目は異世界の危機を救うこと。
異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。
彼はそんな人生で何よりも
人との別れの連続が辛かった。
だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。
しかし、彼は自分の強さを強すぎる
が故に、隠しきることができない。
そしてまた、この異世界でも、
服部隼人の強さが人々にばれていく
のだった。
「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「近接は戦士に劣って、魔法は魔法使いに劣って、回復は回復術師に劣る勇者とか、居ても邪魔なだけだ」
パーティを組んでBランク冒険者になったアンリ。
彼は世界でも稀有なる才能である、全てのスキルを使う事が出来るユニークスキル「オールラウンダー」の持ち主である。
彼は「オールラウンダー」を持つ者だけがなれる、全てのスキルに適性を持つ「勇者」職についていた。
あらゆるスキルを使いこなしていた彼だが、専門職に劣っているという理由でパーティを追放されてしまう。
元パーティメンバーから装備を奪われ、「アイツはパーティの金を盗んだ」と悪評を流された事により、誰も彼を受け入れてくれなかった。
孤児であるアンリは帰る場所などなく、途方にくれているとギルド職員から新人の教官になる提案をされる。
「誰も組んでくれないなら、新人を育て上げてパーティを組んだ方が良いかもな」
アンリには夢があった。かつて災害で家族を失い、自らも死ぬ寸前の所を助けてくれた冒険者に礼を言うという夢。
しかし助けてくれた冒険者が居る場所は、Sランク冒険者しか踏み入ることが許されない危険な土地。夢を叶えるためにはSランクになる必要があった。
誰もパーティを組んでくれないのなら、多少遠回りになるが、育て上げた新人とパーティを組みSランクを目指そう。
そう思い提案を受け、新人とパーティを組み心機一転を図るアンリ。だが彼の元に来た新人は。
モンスターに追いかけ回されて泣き出すタンク。
拳に攻撃魔法を乗せて戦う殴りマジシャン。
ケガに対して、気合いで治せと無茶振りをする体育会系ヒーラー。
どいつもこいつも一癖も二癖もある問題児に頭を抱えるアンリだが、彼は持ち前の万能っぷりで次々と問題を解決し、仲間たちとSランクを目指してランクを上げていった。
彼が新人教育に頭を抱える一方で、彼を追放したパーティは段々とパーティ崩壊の道を辿ることになる。彼らは気付いていなかった、アンリが近接、遠距離、補助、“それ以外”の全てを1人でこなしてくれていた事に。
※ 人間、エルフ、獣人等の複数ヒロインのハーレム物です。
※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。
※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。
魔力0の俺は王家から追放された挙句なぜか体にドラゴンが棲みついた~伝説のドラゴンの魔力を手に入れた俺はちょっと王家を懲らしめようと思います~
きょろ
ファンタジー
この異世界には人間、動物を始め様々な種族が存在している。
ドラゴン、エルフ、ドワーフにゴブリン…多岐に渡る生物が棲むここは異世界「ソウルエンド」。
この世界で一番権力を持っていると言われる王族の“ロックロス家”は、その千年以上続く歴史の中で過去最大のピンチにぶつかっていた。
「――このロックロス家からこんな奴が生まれるとは…!!この歳まで本当に魔力0とは…貴様なんぞ一族の恥だ!出ていけッ!」
ソウルエンドの王でもある父親にそう言われた青年“レイ・ロックロス”。
十六歳の彼はロックロス家の歴史上……いや、人類が初めて魔力を生み出してから初の“魔力0”の人間だった―。
森羅万象、命ある全てのものに魔力が流れている。その魔力の大きさや強さに変化はあれど魔力0はあり得なかったのだ。
庶民ならいざ知らず、王族の、それもこの異世界トップのロックロス家にとってはあってはならない事態。
レイの父親は、面子も権力も失ってはならぬと極秘に“養子”を迎えた―。
成績優秀、魔力レベルも高い。見捨てた我が子よりも優秀な養子を存分に可愛がった父。
そして――。
魔力“0”と名前の“レイ”を掛けて魔法学校でも馬鹿にされ成績も一番下の“本当の息子”だったはずのレイ・ロックロスは十六歳になったこの日……遂に家から追放された―。
絶望と悲しみに打ちひしがれる………
事はなく、レイ・ロックロスは清々しい顔で家を出て行った。
「ああ~~~めちゃくちゃいい天気!やっと自由を手に入れたぜ俺は!」
十六年の人生の中で一番解放感を得たこの日。
実はレイには昔から一つ気になっていたことがあった。その真実を探る為レイはある場所へと向かっていたのだが、道中お腹が減ったレイは子供の頃から仲が良い近くの農場でご飯を貰った。
「うめぇ~~!ここの卵かけご飯は最高だぜ!」
しかし、レイが食べたその卵は何と“伝説の古代竜の卵”だった――。
レイの気になっている事とは―?
食べた卵のせいでドラゴンが棲みついた―⁉
縁を切ったはずのロックロス家に隠された秘密とは―。
全ての真相に辿り着く為、レイとドラゴンはほのぼのダンジョンを攻略するつもりがどんどん仲間が増えて力も手にし異世界を脅かす程の最強パーティになっちゃいました。
あまりに強大な力を手にしたレイ達の前に、最高権力のロックロス家が次々と刺客を送り込む。
様々な展開が繰り広げられるファンタジー物語。
都市伝説と呼ばれて
松虫大
ファンタジー
アルテミラ王国の辺境カモフの地方都市サザン。
この街では十年程前からある人物の噂が囁かれていた。
曰く『領主様に隠し子がいるらしい』
曰く『領主様が密かに匿い、人知れず塩坑の奥で育てている子供がいるそうだ』
曰く『かつて暗殺された子供が、夜な夜な復習するため街を徘徊しているらしい』
曰く『路地裏や屋根裏から覗く目が、言うことを聞かない子供をさらっていく』
曰く『領主様の隠し子が、フォレスの姫様を救ったそうだ』等々・・・・
眉唾な噂が大半であったが、娯楽の少ない土地柄だけにその噂は尾鰭を付けて広く広まっていた。
しかし、その子供の姿を実際に見た者は誰もおらず、その存在を信じる者はほとんどいなかった。
いつしかその少年はこの街の都市伝説のひとつとなっていた。
ある年、サザンの春の市に現れた金髪の少年は、街の暴れん坊ユーリに目を付けられる。
この二人の出会いをきっかけに都市伝説と呼ばれた少年が、本当の伝説へと駆け上っていく異世界戦記。
小説家になろう、カクヨムでも公開してましたが、この度アルファポリスでも公開することにしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる