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41話 配管は地面に埋めています
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翌朝、俺が自分の作業現場へと向かう途中で、早速土建組みの連中が作業に取り掛かっている姿を見かけた。
ホント、仕事熱心な事で感心感心。
作業の内容は、昨日棟梁が言っていた通り、送水管となる竹の組み付け作業だった。
「おいっ! こっち全然足んねぇぞっ! もっと持って来いっ!!」
「はっ、はひぃっ!!」
道すがら、俺が見たのは遠目からでも一目で分かるくらい巨漢であるクマのおっさんが、若いにぃーちゃんを怒鳴り飛ばしているところだった。
そのにぃーちゃんの顔には見覚えがないので、たぶん移住組みの人だな。
増えた人数が人数なので、正直俺自身まだ見た事、会った事がない人たちが結構いたりする。
このにぃーちゃんもその一人……と言う訳だ。
怒鳴られたにぃーちゃんは、慌しく駆け出すと近くに停めてあった竹材を山と積んだ荷車から3~4本の竹を抱えて、クマのおっさんの所へと戻って行った。
その足取りはよたよたと心許なく、ふらふらとしていた。
そんな姿は見ているだけで“大丈夫か?”と不安になってくるものがあった。
筋骨隆々な土建組みの中にいる所為か、普通の体形であるはずのにぃーちゃんが、一際華奢見えてしょうがない……
にぃーちゃんは、クマのおっさんの所まで竹材を運ぶと、また荷車へ向かって走っていった。
「あんまり、いじめんじゃねぇーぞ、おっさん」
「ん? なんだ、ロディフィスか……
いじめている、とか人聞きの悪い事を言うな」
別に用があったわけではないのが、なんとなくそう声をかけると、クマのおっさんは作業の手を止めて俺の方へと振り返った。
「あんなもん、土建組みじゃ普通の事だ。
特別に厳しくしている訳でもない。
多少頼りないところはあるが、早く慣れてもらわにゃ困る」
なんだか土建組みの空気って言うのは、一に筋肉、二に筋肉、三四も筋肉、五も筋肉の体育会系のノリと似ている様な気がするんだよなぁ……
実は、俺ってばああいうのが少し苦手だったりする。
昔は……と言うか、前世の頃は、ただのデブだったので、体を動かすのとかあまり得意じゃなかったしなぁ……
「それより、今日のお前の持ち場はここじゃないだろ?
こんな所で何をしてんだ?」
「今から向かうところだよ。
ただ、おっさんの姿が見えたから、ちょっと声を掛けただけ」
「だったら、こんな所でサボっていないで、さっさと行け。
お前が行う作業は、お前しか出来ないのだろ?
だったら、自分の責務をしっかり果たせ」
その表情は、何時になく真剣で冗談を言っている様には見えなかった。
クマのおっさんに怒られてしまった……うへぇ、ヤブヘビだった……
ほっといて、さっさと行くべきだったな。
「別に、そんなに怒んなくたっていいじゃないかよ……」
「お前は……いや、お前だけじゃないが、近頃は不作の時の恐怖を知らない奴が多すぎていかん……
凶作にならないのはいい事だが、危機意識も一緒に下がっているのはどうかと思うが……
とにかく、この作業には村の命運が掛かっているんだ。
その事だけは忘れるな。
お前だって、暖炉に焼べる薪もない寒い冬を、ひもじい思いをしながら過ごすのなんて嫌だろ?」
麦が採れなかったらお金を出して、他の食べ物を買えばいいじゃない……とか、燃やす薪がないなら、魔術陣で暖を取ればいいじゃない……とか、思うところはあったが、クマのおっさんが言いたいのは多分そう言う事ではないのだろと思い、話の腰を折る事無く素直に聞く事にした。
そんな話をしているうちに、にぃーちゃんが両手一杯に竹材を抱えて戻ってきた。
にぃーちゃんは持って来た竹材を、クマのおっさんの近くに置くとまた荷車の方へと駆けて行った。
がんばれよ、若人よ……
今は普通の体形でしかないが、このままがんばればそのうち他の土建組みの連中の様に、筋骨隆々なマッシブなボディを手に入れる事が出来るだろう……
で、今にぃーちゃんが必死になって運んでいるのが、今日のクマのおっさんたちの作業に使う竹パイプだ。
この竹パイプを継いで、貯水池間を結ぶのだ。
一見、ただ竹を切り倒した持って来ただけの様に見えるが、そうではない。
これでもちゃんとした加工品だ。
それも、普通に作ったなら恐ろしく手間の掛かる品だったりする。
何をしてあるかと言えば、両端に凹凸加工が施されているのだ。
片側の端に、外側を削った凸加工を施し、反対側の端は内側を削った凹加工が施されている。
これを繋ぎ合わせる事で、送水管とするのだ。
水を送る。
そう一言に言っても、実際そう簡単なものじゃない。
ただ単に、ある地点へ水を送るだけなら、流しそうめんの様に竹を半分に割って、端を少しだけ重ねてたものを目的地まで延々と引き延ばせばいいだけだ。
だが、今回の件に関してはその方法は使えない
村の中では、荷物を運ぶために、頻繁に牛が荷車をひいて歩いている。
彼らの通行を妨げる事は、つまりは村民の生活を妨げる事に他ならないのだ。
だから、交通の邪魔になる様なものを、村中に設置する訳にはいかない。
故に、送水用の配管は邪魔にならないように埋設する必要があった。
地面に埋めても外部から異物が侵入することなく、そして送水する水が外部に漏れないよう加工するためにはどうすればいいか……
と言うわけで、取られた手段がこのはめ込み式の連結方法だった。
のだが……
この凹凸加工、人力でやろうとすると恐ろしく面倒臭い。
まず、先端部分を凸部凹部共に均等で滑らかな円状に削らなければならない。
表面が波を打っていては隙間が出来てしまい、水漏れの原因になってはまうからだ。
そもそもこれがもう難しいのなんの……
他にも、凸部の外径と凹部の内径を合わせる必要もあった。
でなければ、連結する事など不可能だからな。
なるべく近いサイズのものを選んで伐採していたが、そこは植物。多少の個体差はどうしても存在する。
だから一つ一つを目で見て、個体にあった加工をする必要があった。
これが手間がかかる要因の一つだった。
と言うわけで、それらの作業を容易にするための魔道具を、俺は銭湯建設時に作っていたのだ。
それが何かと言えば、一言で言ってしまえば旋盤の様なものだった。
旋盤とは被切削物を回転させ、固定されたバイトと呼ばれる工具で切削加工をする工作機械の一つだ。
外丸削り加工や、中ぐり加工などを行う際に大変重宝する。
銭湯の送水管も全て、この魔道具によって製作されていた。
外見は小さな物干し台に似ている、と思う……
両端に逆V字の脚が付いていて、頂点部分が細い台で繋がっているのだ。
天板部分には、台の上に乗っている物を回転させる魔術陣が施されており、両端には、被切削物を乗せる台が設けられている。
使うときは、被切削体の大きさに合わせたガイドをセットする事で、回転を安定化させると共に、切削時の力が逃げないように被切削体を押さえる役割も果たしている。
使い方はシンプルに、この回転している被切削体に人間が直接ノミを押し当てるだけだ。
この旋盤型魔道具の全ての脚には、裏に吸着の魔術陣が彫ってあるので稼動中は何があっても絶対に動く事はない様に出来ている。
だから、どれだけ力を加えても台座がずれると言うことは、決して起きないのである。
それこそ、全速力で走ってきた牛が体当たりしてきても動くことはないだろう。
ちなみに、被切削体を押さえているガイドも、この吸着魔術陣によって固定されているので、一度セットすれば解除するか、マナが尽きるまでまず動かない。
いっその事ノミも固定して、ネジの機構を取り入れた切削量を調整出来る構造にしようかと思ったが、非金属でネジを作るのが思いのほか大変そうなので、そこは後回しになっていた。
金属加工が出来れば楽なのだろうが、溶鉱炉は魔術陣で代用するからいいとしても、肝心の金属が手に入らないのでは今のところは諦める他ない……
手作業であるため、多少扱いが難しいかと思ったのだが、旋盤型魔道具をじーさんに渡して2~3日した頃にはすっかり使いこなしていたので、まぁ、問題はないのだろう。
てな訳で、出来上がったのがこの竹パイプと言う訳だ。
俺は、クマのおっさんと別れると、本日の作業場へと向かった。
やる事は昨日と同じで、残りの貯水池の底に魔術陣を書くだけだ。
何とか残っていた貯水池全てに、魔術陣を書き終えた段階で今日の作業は終了となった。
本日の報告会も、特に問題らしい問題の報告もないまま終了となった。
これで一旦、俺のやる事は終わりだ。
次の工程に移るのに、必要な部品がまだ出来ていないのだ。
部品の完成を待って、いよいよ最終工程に取り掛かる事になるのだが……
取り敢えず、明日は取り急ぎする事もないので、ミーシャたちと畑の水やりにでも行こう。
ついでに、各所の進捗状況も目で見ておきたいしな。
報告会に、情報としては上がっては来ているが、こう言うのは実際に自分の目で見るのが一番正確だ。
てな訳で、翌日はミーシャたちと一緒に畑の水やりに精を出した。
その日は俺がいたので、神父様に同行してもらう必要はなかったのだが、神父様は何故か一緒に付いて来た。
悪い訳ではないが、どうしてだろうか? と思っていたら、理由は直ぐに分かった。
それは、グライブが水撒きを始めた時だ。
神父様は、ここぞとばかりに俺に“何故、竹が回転しているのか?”と言う事について根掘り葉掘りと聞いてきたのだった。
神父様的には、回転系統の論理回路もないのにこの竹スプリンクラーが回転している事が、不思議でならなかったらしい。
ミーシャやグライブは、理解出来ない事は全て“不思議な事”で済ませてしまっていたが、その“不思議な事”の理屈を多少なりとも知っている神父様にとって魔術ではなく、物理によって回っているこの竹スプリンクラーが一種異様な物に見えたのだろう。
なので、俺はミーシャとグライブに作業を任せて、神父様相手に作用と反作用についての物理の講義を行ったのだった。
神父様は俺の話しに“なるほど”っと、頻りに頷いていたが、そんな話をする俺たちにミーシャもグライブも決して声を掛け様とはせず、ただ黙々と作業をこなしていた。
2人の顔を見ると……
そこには“自分を巻き込むなよっ!”と、でかでかと書かれていた。
要は、小難しい話なんかに興味はない、と言う事らしい。
結局この日は、神父様と物理学について語り合って終わってしまった。
そして、その日の報告会にて、俺が頼んでいた例の部品が完成したという報告を受けたのだった。
ホント、仕事熱心な事で感心感心。
作業の内容は、昨日棟梁が言っていた通り、送水管となる竹の組み付け作業だった。
「おいっ! こっち全然足んねぇぞっ! もっと持って来いっ!!」
「はっ、はひぃっ!!」
道すがら、俺が見たのは遠目からでも一目で分かるくらい巨漢であるクマのおっさんが、若いにぃーちゃんを怒鳴り飛ばしているところだった。
そのにぃーちゃんの顔には見覚えがないので、たぶん移住組みの人だな。
増えた人数が人数なので、正直俺自身まだ見た事、会った事がない人たちが結構いたりする。
このにぃーちゃんもその一人……と言う訳だ。
怒鳴られたにぃーちゃんは、慌しく駆け出すと近くに停めてあった竹材を山と積んだ荷車から3~4本の竹を抱えて、クマのおっさんの所へと戻って行った。
その足取りはよたよたと心許なく、ふらふらとしていた。
そんな姿は見ているだけで“大丈夫か?”と不安になってくるものがあった。
筋骨隆々な土建組みの中にいる所為か、普通の体形であるはずのにぃーちゃんが、一際華奢見えてしょうがない……
にぃーちゃんは、クマのおっさんの所まで竹材を運ぶと、また荷車へ向かって走っていった。
「あんまり、いじめんじゃねぇーぞ、おっさん」
「ん? なんだ、ロディフィスか……
いじめている、とか人聞きの悪い事を言うな」
別に用があったわけではないのが、なんとなくそう声をかけると、クマのおっさんは作業の手を止めて俺の方へと振り返った。
「あんなもん、土建組みじゃ普通の事だ。
特別に厳しくしている訳でもない。
多少頼りないところはあるが、早く慣れてもらわにゃ困る」
なんだか土建組みの空気って言うのは、一に筋肉、二に筋肉、三四も筋肉、五も筋肉の体育会系のノリと似ている様な気がするんだよなぁ……
実は、俺ってばああいうのが少し苦手だったりする。
昔は……と言うか、前世の頃は、ただのデブだったので、体を動かすのとかあまり得意じゃなかったしなぁ……
「それより、今日のお前の持ち場はここじゃないだろ?
こんな所で何をしてんだ?」
「今から向かうところだよ。
ただ、おっさんの姿が見えたから、ちょっと声を掛けただけ」
「だったら、こんな所でサボっていないで、さっさと行け。
お前が行う作業は、お前しか出来ないのだろ?
だったら、自分の責務をしっかり果たせ」
その表情は、何時になく真剣で冗談を言っている様には見えなかった。
クマのおっさんに怒られてしまった……うへぇ、ヤブヘビだった……
ほっといて、さっさと行くべきだったな。
「別に、そんなに怒んなくたっていいじゃないかよ……」
「お前は……いや、お前だけじゃないが、近頃は不作の時の恐怖を知らない奴が多すぎていかん……
凶作にならないのはいい事だが、危機意識も一緒に下がっているのはどうかと思うが……
とにかく、この作業には村の命運が掛かっているんだ。
その事だけは忘れるな。
お前だって、暖炉に焼べる薪もない寒い冬を、ひもじい思いをしながら過ごすのなんて嫌だろ?」
麦が採れなかったらお金を出して、他の食べ物を買えばいいじゃない……とか、燃やす薪がないなら、魔術陣で暖を取ればいいじゃない……とか、思うところはあったが、クマのおっさんが言いたいのは多分そう言う事ではないのだろと思い、話の腰を折る事無く素直に聞く事にした。
そんな話をしているうちに、にぃーちゃんが両手一杯に竹材を抱えて戻ってきた。
にぃーちゃんは持って来た竹材を、クマのおっさんの近くに置くとまた荷車の方へと駆けて行った。
がんばれよ、若人よ……
今は普通の体形でしかないが、このままがんばればそのうち他の土建組みの連中の様に、筋骨隆々なマッシブなボディを手に入れる事が出来るだろう……
で、今にぃーちゃんが必死になって運んでいるのが、今日のクマのおっさんたちの作業に使う竹パイプだ。
この竹パイプを継いで、貯水池間を結ぶのだ。
一見、ただ竹を切り倒した持って来ただけの様に見えるが、そうではない。
これでもちゃんとした加工品だ。
それも、普通に作ったなら恐ろしく手間の掛かる品だったりする。
何をしてあるかと言えば、両端に凹凸加工が施されているのだ。
片側の端に、外側を削った凸加工を施し、反対側の端は内側を削った凹加工が施されている。
これを繋ぎ合わせる事で、送水管とするのだ。
水を送る。
そう一言に言っても、実際そう簡単なものじゃない。
ただ単に、ある地点へ水を送るだけなら、流しそうめんの様に竹を半分に割って、端を少しだけ重ねてたものを目的地まで延々と引き延ばせばいいだけだ。
だが、今回の件に関してはその方法は使えない
村の中では、荷物を運ぶために、頻繁に牛が荷車をひいて歩いている。
彼らの通行を妨げる事は、つまりは村民の生活を妨げる事に他ならないのだ。
だから、交通の邪魔になる様なものを、村中に設置する訳にはいかない。
故に、送水用の配管は邪魔にならないように埋設する必要があった。
地面に埋めても外部から異物が侵入することなく、そして送水する水が外部に漏れないよう加工するためにはどうすればいいか……
と言うわけで、取られた手段がこのはめ込み式の連結方法だった。
のだが……
この凹凸加工、人力でやろうとすると恐ろしく面倒臭い。
まず、先端部分を凸部凹部共に均等で滑らかな円状に削らなければならない。
表面が波を打っていては隙間が出来てしまい、水漏れの原因になってはまうからだ。
そもそもこれがもう難しいのなんの……
他にも、凸部の外径と凹部の内径を合わせる必要もあった。
でなければ、連結する事など不可能だからな。
なるべく近いサイズのものを選んで伐採していたが、そこは植物。多少の個体差はどうしても存在する。
だから一つ一つを目で見て、個体にあった加工をする必要があった。
これが手間がかかる要因の一つだった。
と言うわけで、それらの作業を容易にするための魔道具を、俺は銭湯建設時に作っていたのだ。
それが何かと言えば、一言で言ってしまえば旋盤の様なものだった。
旋盤とは被切削物を回転させ、固定されたバイトと呼ばれる工具で切削加工をする工作機械の一つだ。
外丸削り加工や、中ぐり加工などを行う際に大変重宝する。
銭湯の送水管も全て、この魔道具によって製作されていた。
外見は小さな物干し台に似ている、と思う……
両端に逆V字の脚が付いていて、頂点部分が細い台で繋がっているのだ。
天板部分には、台の上に乗っている物を回転させる魔術陣が施されており、両端には、被切削物を乗せる台が設けられている。
使うときは、被切削体の大きさに合わせたガイドをセットする事で、回転を安定化させると共に、切削時の力が逃げないように被切削体を押さえる役割も果たしている。
使い方はシンプルに、この回転している被切削体に人間が直接ノミを押し当てるだけだ。
この旋盤型魔道具の全ての脚には、裏に吸着の魔術陣が彫ってあるので稼動中は何があっても絶対に動く事はない様に出来ている。
だから、どれだけ力を加えても台座がずれると言うことは、決して起きないのである。
それこそ、全速力で走ってきた牛が体当たりしてきても動くことはないだろう。
ちなみに、被切削体を押さえているガイドも、この吸着魔術陣によって固定されているので、一度セットすれば解除するか、マナが尽きるまでまず動かない。
いっその事ノミも固定して、ネジの機構を取り入れた切削量を調整出来る構造にしようかと思ったが、非金属でネジを作るのが思いのほか大変そうなので、そこは後回しになっていた。
金属加工が出来れば楽なのだろうが、溶鉱炉は魔術陣で代用するからいいとしても、肝心の金属が手に入らないのでは今のところは諦める他ない……
手作業であるため、多少扱いが難しいかと思ったのだが、旋盤型魔道具をじーさんに渡して2~3日した頃にはすっかり使いこなしていたので、まぁ、問題はないのだろう。
てな訳で、出来上がったのがこの竹パイプと言う訳だ。
俺は、クマのおっさんと別れると、本日の作業場へと向かった。
やる事は昨日と同じで、残りの貯水池の底に魔術陣を書くだけだ。
何とか残っていた貯水池全てに、魔術陣を書き終えた段階で今日の作業は終了となった。
本日の報告会も、特に問題らしい問題の報告もないまま終了となった。
これで一旦、俺のやる事は終わりだ。
次の工程に移るのに、必要な部品がまだ出来ていないのだ。
部品の完成を待って、いよいよ最終工程に取り掛かる事になるのだが……
取り敢えず、明日は取り急ぎする事もないので、ミーシャたちと畑の水やりにでも行こう。
ついでに、各所の進捗状況も目で見ておきたいしな。
報告会に、情報としては上がっては来ているが、こう言うのは実際に自分の目で見るのが一番正確だ。
てな訳で、翌日はミーシャたちと一緒に畑の水やりに精を出した。
その日は俺がいたので、神父様に同行してもらう必要はなかったのだが、神父様は何故か一緒に付いて来た。
悪い訳ではないが、どうしてだろうか? と思っていたら、理由は直ぐに分かった。
それは、グライブが水撒きを始めた時だ。
神父様は、ここぞとばかりに俺に“何故、竹が回転しているのか?”と言う事について根掘り葉掘りと聞いてきたのだった。
神父様的には、回転系統の論理回路もないのにこの竹スプリンクラーが回転している事が、不思議でならなかったらしい。
ミーシャやグライブは、理解出来ない事は全て“不思議な事”で済ませてしまっていたが、その“不思議な事”の理屈を多少なりとも知っている神父様にとって魔術ではなく、物理によって回っているこの竹スプリンクラーが一種異様な物に見えたのだろう。
なので、俺はミーシャとグライブに作業を任せて、神父様相手に作用と反作用についての物理の講義を行ったのだった。
神父様は俺の話しに“なるほど”っと、頻りに頷いていたが、そんな話をする俺たちにミーシャもグライブも決して声を掛け様とはせず、ただ黙々と作業をこなしていた。
2人の顔を見ると……
そこには“自分を巻き込むなよっ!”と、でかでかと書かれていた。
要は、小難しい話なんかに興味はない、と言う事らしい。
結局この日は、神父様と物理学について語り合って終わってしまった。
そして、その日の報告会にて、俺が頼んでいた例の部品が完成したという報告を受けたのだった。
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