10 / 85
26話 1000万で用意しろ
しおりを挟む
今日は、ソロバンの2回目の支払日。そして、場所はいつもの村長の家で、時刻は昼下がり……
「……で、こいつが、今回のそっちの取り分な、っと!」
イスュはテーブルの上にドカリと皮袋を置くと、次に明細を差し出した。
村長が皮袋を受け取り、口紐を解いて中身を確認して俺が明細を受け取り目を通す。
「……なんか今回はまた、随分と細かいな?」
渡された明細には、いくらでいくつ売ったと言う事が複数行に渡って長々と記されていた。
初めのうちこそ、前回と同じ1万RDで販売していた様だが、売れたのは数個止まりとなっていた。
そこからは少しずつ値が下がって行き、一番最後の行では8000RDほどで落ち着いていた。
しかし、値が下がったとは言え、どうやら今回も無事完売となったようで良かった良かった。
で、ウチの取り分はっと……1000万と少しか。
売り上げが下がる下がると、脅されていたからかなり覚悟はしていたのだが、思った以上ではなかった。
「いやぁ~、まさかこんなに早く複製されるとは思わなかったぜ。
しかもっ! 大手商会がいくつも乗り出してきてよぉ!
もぅ、値下げに次ぐ、値下げ合戦が続いてなっ!
ウチは初めから値下げ金額を細かく決めていたって事もあるが、所詮相手さんは苦し紛れの少数生産。
相手の出方に合わせて動けるこっちの物量の前じゃ、敵じゃなかったって訳よっ!
オレ様の華麗なる采配によって、こっちは盛況向こうは閑古鳥ってな!
あいつらの悔しそうな顔ったらよぉ……ぐふっ、ぐふっ、ぐふふふっ……
思い出しただけで、笑いが込み上げてくらぁ!
お前にも見せてやりたかったぜ、ロディフィス!」
「あ~、はいはい、ご苦労さんご苦労さん」
と、自慢げに自分の武勇伝を熱く語るイスュを軽くあしらって、俺は頭の中のソロバンを弾く。
今回の支払い分から、作業に当たった村人たちの手当てを引いて、それに前回の繰越金を足して……
「おいおい、ちょっと冷たいんじゃないのぉ~、ロディフィスくんよぉ~
今回完売させたのって、ぶっちゃけオレ様の手腕よ?
何てたってあの“メルディア商会”を押さえて……クドクド……」
ええーい! ウザイっ! 計算が狂うだろうがっ!
なんと言うか……今日のイスュは何時にも増してウザかった。
上機嫌と言うか、テンションが異様に高いと言うか……
大手商会と張り合って勝ったと言っていたが、それが余程うれしかったのかもしれないな……
いや、んな事は俺にはどうでもいい事か。
サクッと計算を済ますと、現在村にある蓄えは全部で2200万と少しと言う事になる。
さて……俺としては、むしろここからが本番だな。
「っと……本当はもっと話したい事があるんだが、今日はちっと急がなくちゃならなくてな。
前線の商品が尽きちまって、早いとこ送ってやりたいんだよ。
商品の確認は済んでるから、このままもらって行くぜ」
経緯までは知らないが、なんでもイスュが現在手掛けているソロバン販売の事業を、親父と兄たちが全面的に手伝ってくれる事になった、とさっきイスュが話していた。
今、ハロリア商会は一時的ではあったが、イスュを中心とした運営体制を取っている事になる。
それは勿論、家族ゆえの無償の協力などという心温まる話ではなく、ハロリア商会の持つ流通網をイスュにレンタルしていると言うことらしい。
そのため、売り上げの一部はハロリア商会に収めなければならないようなのだが、それでも自由に動かす事ができる隊商を手に入れた事で、流通をより円滑に進める事が出来るようになったとイスュは自慢げに語っていた。
親子共々、商売に精が出るこって……
が、こいつを行かせる前に、どうしても聞いてもらわなければならない話があった。
「イシュタード。急ぎの所、悪いんだが、少し聞いてもらいたい話があるんだ」
俺は、テキバキと撤収の準備を進めるイスュに声をかけた。
イスュは、作業の手を止めて俺の方へと顔を向ける。
「ん? なんだよ急に改まって……気味が悪いな……
まぁ、少しくらいならいいけどよ?」
「おいっ! テメェ、気味が悪いってのは……まぁ、いい。
残念だけど、直ぐ済む話じゃない。
……取り敢えず、こいつを見てくれないか」
怪訝な表情を浮かべるイスュに、俺は大量の資材の一覧を書いたメモ用紙を渡した。
「なんだこりゃ? 木材にレンガ……それに食料?」
「それだけの資材を揃えるのに、お前の所でいくら掛かる?」
「おいおい……また随分とでかい買い物をするな……なんか造んのか?」
「ちょっとな……」
「“ちょっと”なんて量じゃねぇーだろ……」
探りを入れるような目つきで、イスュが訊ねてきたが細かく説明するつもりは俺にはなかった。
たぶん、イスュも他の人たち同様、口でどれだけ説明しても日本式の“風呂”を理解してくれないだろうしな。
どう言った物かは、出来上がりを見てもらった方が全然早いだろう。
「で? いくらになるんだよ?」
「ったく、答える気は無しってか?
まぁ、どうせ出来ちまえば分かる事だからいいけどよ……
そうだな……軽く見積もってざっと2000万ってとこだな。
あっ! 言っておくが、こいつはかなりの“良心価格”だからなっ!
俺はロディフィス、お前相手に金を取るような商売はする気はない。
この価格だって、原価ギリギリでもそれくらいかかるって事だ。
他の所なら、軽く今の倍の値段は言われるからな?」
2000万……か。
思ったより高額だな……
払えない金額ではなかったが、払ってしまえば村の蓄えが底を突いてしまう金額ではあった。
いくら、ソロバンの支払いがまだ数回残っているとしても、支払金が今のまま安定するとは限らないのだ。
今回は、大きく値下がりする事はなかったが、だからと言って次回も大丈夫という保証はどこにもない。
いつどこで、大きく値下がりするか分からないのだ。
村の今後の事を考えたら、蓄えは多いに越したことはない。
と、なるれば……
「んじゃ、1000万で一式揃えてくれないか?」
「……悪い。
聞き間違いかもしれないから、もう一度言ってくれないか?」
「1000万で一式揃えてくれ」
イスュは俺の言葉を聴くと、額に手をやり大仰に天を仰いで見せた。
「おいおい……ふざけんなよロディフィス?
今言った事、聞いてなかったのか?
オレは2000万かかるって言ってんだ! それも利益度外視の原価販売でだっ!
それを半額ってお前なぁ……
オレがお前から金を取る様なマネをしないのは、お互い良いビジネスパートナーでいたいからだ。
それをお前は……」
「まぁ、落ち着きたまえよイスュ君」
目くじらを立てて、詰め寄るイスュを取り敢えず宥める。
俺だってそれが無茶振りなのは、重々心得ている。
それに、何も無条件にイスュに1000万もの大金を被れなんて鬼のような事は言うつもりはない。
こちらにもその対価となりえるものがある、と言う事だ。
「落ち着けって……これが落ち着いていられるとっ……」
「まぁまぁ、これは一種の投資だと思ってもらいたい」
「……投資だぁ?」
一層怪訝な表情を強めるイスュ。
「ああ。近いうちに、村の住人が増える予定があってな……」
「んだよ? ベビーラッシュでも来るのか?」
「この村の何処に、そんな大量の妊婦が居るってんだ?」
話の腰を折る様に、茶々を入れてきたが、俺は一言ツッコンでから話を続けた。
「ちげーよ。訳あって、今は村を離れているこの村の出身者を呼び戻そうって話があってな。
それも結構な人数が戻ってくる予定なんだよ。
……村の人口が増えたら、お前だって嬉しいんじゃないか? なぁ、イスュ?」
「何でオレが……」
そこまで言いかけて、イスュの言葉がピタリと止まった。
そして、幾ばくかの沈黙の後、突然ニヤリとあの不気味な笑みを浮べた。
「……なるほど、そう言う事か……
ああっ、そう言う事だなっ!
お前の言いたい事が分った。
今回はお前の口車に乗っかってやるよ、ロディフィス。
差分の1000万はオレ様が用立ててやる。
だが……そっちこそ分ってるんだろうな?」
「ああ、損はさせないさ」
「資材の搬入はどうする?」
「早ければ早いだけいいな。全部揃って無くても、まとまった数が用意できたら直ぐにでも欲しい」
「分った。直ぐに調達させよう」
ホント、こいつは金の事になると頭の回転が異様に速くて助かる。
俺たちが話していたのは、村の生産体制の話だった。
村の人口が増える→製作作業員の増加→生産数UP・流通量の増加→市場への安定供給→売り上げの安定化→収入の増加、と言う流れをイスュはたったアレだけの会話で理解したのだ。
たぶん、その流れの中には、現状人手不足が理由で先送りになっているリバーシの生産もイスュの頭の中ではしっかりと組み込まれている事だろう。
どういう事かと言うと……
銭湯の建設に当たり、村長は各地に散っている村の出身者に参加の是非を問う遣いを出していた。
そして、昨日帰ってきたその遣いたちの話からすると、かなりの数の者たちが参加を希望しているらしい事が分ったのだ。
村を出た者たちは、外で余裕のある生活を送っている……とは、とても言いがたい状態らしく、給料が出ると言った途端、一も二も無く飛びついてきたらしい。
で、俺はこの遣いの人たちに、もう一つ彼らに聞いてきて欲しい事を頼んでいた。
それが“もし、村での生活に戻れるとしたら、村に帰ってくる気があるか?”と言う物だった。
殆どが、好き好んで村を出た者たちではないため、これも多くの者たちから“戻りたい”と言う返答が返ってきていた。
そこで、急遽、村長以下村の重鎮を集めて、彼らの村での生活を認めるかどうかについての話し合いが行われる事となったのだ。
元は村で養える人数のキャパシティの限界の所為で、追い出されてしまっていた人たちだ。
今更戻したとして、村で養えるのか? と言う声がチラホラ上がったが、そんな事は最早なんの問題でもなかった。
今や村にはソロバン製作と言う一大産業がある。
ましてや、リバーシの製作など人手不足が理由で、未だ手付かずのままになってしまっている状態だ。
もし、彼らが戻ってきてくれるのであれば、それらの製作を任せる事が出来るようになる、と俺は考えたのだ。
そしてそれは、そのまま村の収入となり、彼ら自身の食い扶持となる。
今や村は人が多ければ多いほど、収入が増える。そんな状態だった。
村を追い出されていた人たちは、村に帰れてハッピー。
村は作業員増加で、生産能力がUPして収入UPでハッピー。
イスュは、売り上げ数UPプラス新商品の製造開始で収入ダブルUPでハッピー。
win&winの関係を超えた3winの関係がこうして出来上がったのだった。
ただ、彼らが村で生活を送る事になると、住居の問題は無視できないものがあった。
何時までも、親類の家にご厄介になってるわけにもいかないからな。
だから、銭湯を造るついでに彼らの家も造ってしまおう、と言う話になったのだ。
村には、空き家となって放置されている家が少なくない数存在する。
今のままでは、とても人が住める状態ではないが多少リフォームすれば問題なく住めるようになるだろう。
それで、足りない分に関しては新築すればいい。
その分の資材は、今回の発注分にしっかり含まれている。
それに、戻ってくる者の中の多くは一人身だと言う。
一人住まいの家なら大きい必要もなく、比較的簡素な造りでいいため工期が短くてすむのだ。
俺がイスュに求めたのは、作業員の増加に伴う資金援助。見返りは生産能力の向上だ。
それも、予定通りの人数が戻ってくるとなると、村の生産能力はざっと2倍に膨れ上がる。
この人数には所帯を持った者の配偶者……要は嫁とか旦那だな……や子どもは含まれて居ないので、一家で村に移住となると、村の人口は更に増える事になる。
この村も賑やかになりそうだ。
「んじゃ、資材の調達と領主への木材購入の交渉は任せろ。
資材は集まり次第届けさせるようにしよう。
オレは隊商について、各地を回らなきゃならないから、資材の搬送の時にはいないが、何かあればバッカス……あの菓子を配ってたヤツを付けるから、そいつに何でも言ってくれ」
ああ、あの頼りないおっちゃんか……
言われて、菓子を配っていたおっちゃんの顔を思い出す。
ガキんちょには、絶大な人気があるんだよなぁ、あのおっちゃん。
資材の料金として、今回のソロバンの売り上げを丸々イスュに渡す事にした。
今回の取り分が丁度1000万RDほどになったので、都合が良かったのだ。
多少多くはあったが、誤差だ誤差。気にする程じゃない。
イスュと村長がその場で略式ではあったが証文を作り(正式な物は後日、改めてと言う話になった)、証印。
イスュは金の詰まった皮袋と、出来上がった商品を持って帰っていった。
相変わらず村長のヤム(牛)車を借りて、だ。
ってか、いい加減自前の荷車に乗って来いよな……
その日の夜……
村長は村人を集会場に集めて、作業に当たった村人たちに給料を支払うと共に、銭湯建設計画の説明をした。
製造作業に当たった村人だけでなく、今回は直接関係ない村人まで招集したのはこのためだった。
勿論、村中の全ての住人を呼び集められる施設などないので、今回は世帯主……要はお父さん連中だな……だけを集めての説明会となった。そこにはウチのパパンの姿もあった。
説明会の内容は主に3つ。
一つは、作業に協力した者には、相応の報酬が出ると言うこと。
そして、もう一つは、村を出ていた者たちを一時的に呼び戻すと言うこと。
それに付随して、家族親類はしばらくの間、空き部屋の提供など彼らの滞在を支援してあげて欲しい事を告げた。
勿論、今回は村の要請で戻ってきてもらっているので、工事の期間中に関する彼らの食費等は村が……言ってしまえば、村長が全て負担する事は明言しておいた。
その金は、ソロバンの売り上げから出ている訳だけど……
そして、最後の3つ目は村人たちに直接関係することではなかったが、戻り組みの中から村への帰郷を望むものには、そのまま村への滞在を許可する旨を伝えた。
報酬が出るとあって喜ぶ者、数年ぶりに家族親族に会えることを喜ぶ者、住人が増えることで生活が苦しくなるのではと不安がる者、今は農業以外の収入があるから大丈夫だと笑う者……
三者三様、十人十色な反応ではあったが、これと言った反対はなかった。
村の人たちは良くも悪くも従順なのだ。
余程酷い内容でもない限り、反対する様な事はない。
リバーシで負けると直ぐにムキになる子どもの様な村長だが、これでも村では人格者として通っている。
それに、ご意見番である神父様への信頼も厚い。
彼らが村長の決定に異議を唱えないのは、“この人に任せておけば大丈夫”そう言った信頼感の現われなのだろう。
日頃の行いって重要なんだなって思いました。小並感。
翌日……
早速、村の決定を村の外で暮らしいる人たちに伝えるために、遣いの人たちが出される事になっている。
予定では数日後に、イスュに頼んでおいた資材と、戻り組みが到着するはずだ。
それまでに進められる部分は進めてしまおう。
やるべき事は意外に多いのだ。
それに、現在村ではちょっとした問題も起きていた。
戻り組みが帰ってくる前に、その問題は早々に解決してしまいたい。
そのための対策会議には、俺も呼ばれているので後で顔を出すことになっていた。
と、大層な事は言っても、いつもの村長と神父様と俺でガイドラインを生成して、あとの細かい部分は村長を含めた重役(?)の方々に話し合って決めてもらえばいい。
大体、俺には俺でやる事が多いのだ。
ボイラーに使う加熱魔術陣を、もっと高効率なものにバージョンUPさせたいし、窯元に魔術陣の刻印されたレンガの発注もしなくちゃいけない。
そのためには、新規のスタンプの製作をじーさんに頼まないといけないし、魔術陣の下書きも用意しなくちゃいけない。
そうそう、銭湯の基本デザインも決めないといけないんだった……
それに、風呂上りのお楽しみは絶対に外す事が出来ない要素の一つだから、あとは、アレとアレとアレを用意しないといけないのか。
……なんか、生前より忙しくなってね、俺?
「……で、こいつが、今回のそっちの取り分な、っと!」
イスュはテーブルの上にドカリと皮袋を置くと、次に明細を差し出した。
村長が皮袋を受け取り、口紐を解いて中身を確認して俺が明細を受け取り目を通す。
「……なんか今回はまた、随分と細かいな?」
渡された明細には、いくらでいくつ売ったと言う事が複数行に渡って長々と記されていた。
初めのうちこそ、前回と同じ1万RDで販売していた様だが、売れたのは数個止まりとなっていた。
そこからは少しずつ値が下がって行き、一番最後の行では8000RDほどで落ち着いていた。
しかし、値が下がったとは言え、どうやら今回も無事完売となったようで良かった良かった。
で、ウチの取り分はっと……1000万と少しか。
売り上げが下がる下がると、脅されていたからかなり覚悟はしていたのだが、思った以上ではなかった。
「いやぁ~、まさかこんなに早く複製されるとは思わなかったぜ。
しかもっ! 大手商会がいくつも乗り出してきてよぉ!
もぅ、値下げに次ぐ、値下げ合戦が続いてなっ!
ウチは初めから値下げ金額を細かく決めていたって事もあるが、所詮相手さんは苦し紛れの少数生産。
相手の出方に合わせて動けるこっちの物量の前じゃ、敵じゃなかったって訳よっ!
オレ様の華麗なる采配によって、こっちは盛況向こうは閑古鳥ってな!
あいつらの悔しそうな顔ったらよぉ……ぐふっ、ぐふっ、ぐふふふっ……
思い出しただけで、笑いが込み上げてくらぁ!
お前にも見せてやりたかったぜ、ロディフィス!」
「あ~、はいはい、ご苦労さんご苦労さん」
と、自慢げに自分の武勇伝を熱く語るイスュを軽くあしらって、俺は頭の中のソロバンを弾く。
今回の支払い分から、作業に当たった村人たちの手当てを引いて、それに前回の繰越金を足して……
「おいおい、ちょっと冷たいんじゃないのぉ~、ロディフィスくんよぉ~
今回完売させたのって、ぶっちゃけオレ様の手腕よ?
何てたってあの“メルディア商会”を押さえて……クドクド……」
ええーい! ウザイっ! 計算が狂うだろうがっ!
なんと言うか……今日のイスュは何時にも増してウザかった。
上機嫌と言うか、テンションが異様に高いと言うか……
大手商会と張り合って勝ったと言っていたが、それが余程うれしかったのかもしれないな……
いや、んな事は俺にはどうでもいい事か。
サクッと計算を済ますと、現在村にある蓄えは全部で2200万と少しと言う事になる。
さて……俺としては、むしろここからが本番だな。
「っと……本当はもっと話したい事があるんだが、今日はちっと急がなくちゃならなくてな。
前線の商品が尽きちまって、早いとこ送ってやりたいんだよ。
商品の確認は済んでるから、このままもらって行くぜ」
経緯までは知らないが、なんでもイスュが現在手掛けているソロバン販売の事業を、親父と兄たちが全面的に手伝ってくれる事になった、とさっきイスュが話していた。
今、ハロリア商会は一時的ではあったが、イスュを中心とした運営体制を取っている事になる。
それは勿論、家族ゆえの無償の協力などという心温まる話ではなく、ハロリア商会の持つ流通網をイスュにレンタルしていると言うことらしい。
そのため、売り上げの一部はハロリア商会に収めなければならないようなのだが、それでも自由に動かす事ができる隊商を手に入れた事で、流通をより円滑に進める事が出来るようになったとイスュは自慢げに語っていた。
親子共々、商売に精が出るこって……
が、こいつを行かせる前に、どうしても聞いてもらわなければならない話があった。
「イシュタード。急ぎの所、悪いんだが、少し聞いてもらいたい話があるんだ」
俺は、テキバキと撤収の準備を進めるイスュに声をかけた。
イスュは、作業の手を止めて俺の方へと顔を向ける。
「ん? なんだよ急に改まって……気味が悪いな……
まぁ、少しくらいならいいけどよ?」
「おいっ! テメェ、気味が悪いってのは……まぁ、いい。
残念だけど、直ぐ済む話じゃない。
……取り敢えず、こいつを見てくれないか」
怪訝な表情を浮かべるイスュに、俺は大量の資材の一覧を書いたメモ用紙を渡した。
「なんだこりゃ? 木材にレンガ……それに食料?」
「それだけの資材を揃えるのに、お前の所でいくら掛かる?」
「おいおい……また随分とでかい買い物をするな……なんか造んのか?」
「ちょっとな……」
「“ちょっと”なんて量じゃねぇーだろ……」
探りを入れるような目つきで、イスュが訊ねてきたが細かく説明するつもりは俺にはなかった。
たぶん、イスュも他の人たち同様、口でどれだけ説明しても日本式の“風呂”を理解してくれないだろうしな。
どう言った物かは、出来上がりを見てもらった方が全然早いだろう。
「で? いくらになるんだよ?」
「ったく、答える気は無しってか?
まぁ、どうせ出来ちまえば分かる事だからいいけどよ……
そうだな……軽く見積もってざっと2000万ってとこだな。
あっ! 言っておくが、こいつはかなりの“良心価格”だからなっ!
俺はロディフィス、お前相手に金を取るような商売はする気はない。
この価格だって、原価ギリギリでもそれくらいかかるって事だ。
他の所なら、軽く今の倍の値段は言われるからな?」
2000万……か。
思ったより高額だな……
払えない金額ではなかったが、払ってしまえば村の蓄えが底を突いてしまう金額ではあった。
いくら、ソロバンの支払いがまだ数回残っているとしても、支払金が今のまま安定するとは限らないのだ。
今回は、大きく値下がりする事はなかったが、だからと言って次回も大丈夫という保証はどこにもない。
いつどこで、大きく値下がりするか分からないのだ。
村の今後の事を考えたら、蓄えは多いに越したことはない。
と、なるれば……
「んじゃ、1000万で一式揃えてくれないか?」
「……悪い。
聞き間違いかもしれないから、もう一度言ってくれないか?」
「1000万で一式揃えてくれ」
イスュは俺の言葉を聴くと、額に手をやり大仰に天を仰いで見せた。
「おいおい……ふざけんなよロディフィス?
今言った事、聞いてなかったのか?
オレは2000万かかるって言ってんだ! それも利益度外視の原価販売でだっ!
それを半額ってお前なぁ……
オレがお前から金を取る様なマネをしないのは、お互い良いビジネスパートナーでいたいからだ。
それをお前は……」
「まぁ、落ち着きたまえよイスュ君」
目くじらを立てて、詰め寄るイスュを取り敢えず宥める。
俺だってそれが無茶振りなのは、重々心得ている。
それに、何も無条件にイスュに1000万もの大金を被れなんて鬼のような事は言うつもりはない。
こちらにもその対価となりえるものがある、と言う事だ。
「落ち着けって……これが落ち着いていられるとっ……」
「まぁまぁ、これは一種の投資だと思ってもらいたい」
「……投資だぁ?」
一層怪訝な表情を強めるイスュ。
「ああ。近いうちに、村の住人が増える予定があってな……」
「んだよ? ベビーラッシュでも来るのか?」
「この村の何処に、そんな大量の妊婦が居るってんだ?」
話の腰を折る様に、茶々を入れてきたが、俺は一言ツッコンでから話を続けた。
「ちげーよ。訳あって、今は村を離れているこの村の出身者を呼び戻そうって話があってな。
それも結構な人数が戻ってくる予定なんだよ。
……村の人口が増えたら、お前だって嬉しいんじゃないか? なぁ、イスュ?」
「何でオレが……」
そこまで言いかけて、イスュの言葉がピタリと止まった。
そして、幾ばくかの沈黙の後、突然ニヤリとあの不気味な笑みを浮べた。
「……なるほど、そう言う事か……
ああっ、そう言う事だなっ!
お前の言いたい事が分った。
今回はお前の口車に乗っかってやるよ、ロディフィス。
差分の1000万はオレ様が用立ててやる。
だが……そっちこそ分ってるんだろうな?」
「ああ、損はさせないさ」
「資材の搬入はどうする?」
「早ければ早いだけいいな。全部揃って無くても、まとまった数が用意できたら直ぐにでも欲しい」
「分った。直ぐに調達させよう」
ホント、こいつは金の事になると頭の回転が異様に速くて助かる。
俺たちが話していたのは、村の生産体制の話だった。
村の人口が増える→製作作業員の増加→生産数UP・流通量の増加→市場への安定供給→売り上げの安定化→収入の増加、と言う流れをイスュはたったアレだけの会話で理解したのだ。
たぶん、その流れの中には、現状人手不足が理由で先送りになっているリバーシの生産もイスュの頭の中ではしっかりと組み込まれている事だろう。
どういう事かと言うと……
銭湯の建設に当たり、村長は各地に散っている村の出身者に参加の是非を問う遣いを出していた。
そして、昨日帰ってきたその遣いたちの話からすると、かなりの数の者たちが参加を希望しているらしい事が分ったのだ。
村を出た者たちは、外で余裕のある生活を送っている……とは、とても言いがたい状態らしく、給料が出ると言った途端、一も二も無く飛びついてきたらしい。
で、俺はこの遣いの人たちに、もう一つ彼らに聞いてきて欲しい事を頼んでいた。
それが“もし、村での生活に戻れるとしたら、村に帰ってくる気があるか?”と言う物だった。
殆どが、好き好んで村を出た者たちではないため、これも多くの者たちから“戻りたい”と言う返答が返ってきていた。
そこで、急遽、村長以下村の重鎮を集めて、彼らの村での生活を認めるかどうかについての話し合いが行われる事となったのだ。
元は村で養える人数のキャパシティの限界の所為で、追い出されてしまっていた人たちだ。
今更戻したとして、村で養えるのか? と言う声がチラホラ上がったが、そんな事は最早なんの問題でもなかった。
今や村にはソロバン製作と言う一大産業がある。
ましてや、リバーシの製作など人手不足が理由で、未だ手付かずのままになってしまっている状態だ。
もし、彼らが戻ってきてくれるのであれば、それらの製作を任せる事が出来るようになる、と俺は考えたのだ。
そしてそれは、そのまま村の収入となり、彼ら自身の食い扶持となる。
今や村は人が多ければ多いほど、収入が増える。そんな状態だった。
村を追い出されていた人たちは、村に帰れてハッピー。
村は作業員増加で、生産能力がUPして収入UPでハッピー。
イスュは、売り上げ数UPプラス新商品の製造開始で収入ダブルUPでハッピー。
win&winの関係を超えた3winの関係がこうして出来上がったのだった。
ただ、彼らが村で生活を送る事になると、住居の問題は無視できないものがあった。
何時までも、親類の家にご厄介になってるわけにもいかないからな。
だから、銭湯を造るついでに彼らの家も造ってしまおう、と言う話になったのだ。
村には、空き家となって放置されている家が少なくない数存在する。
今のままでは、とても人が住める状態ではないが多少リフォームすれば問題なく住めるようになるだろう。
それで、足りない分に関しては新築すればいい。
その分の資材は、今回の発注分にしっかり含まれている。
それに、戻ってくる者の中の多くは一人身だと言う。
一人住まいの家なら大きい必要もなく、比較的簡素な造りでいいため工期が短くてすむのだ。
俺がイスュに求めたのは、作業員の増加に伴う資金援助。見返りは生産能力の向上だ。
それも、予定通りの人数が戻ってくるとなると、村の生産能力はざっと2倍に膨れ上がる。
この人数には所帯を持った者の配偶者……要は嫁とか旦那だな……や子どもは含まれて居ないので、一家で村に移住となると、村の人口は更に増える事になる。
この村も賑やかになりそうだ。
「んじゃ、資材の調達と領主への木材購入の交渉は任せろ。
資材は集まり次第届けさせるようにしよう。
オレは隊商について、各地を回らなきゃならないから、資材の搬送の時にはいないが、何かあればバッカス……あの菓子を配ってたヤツを付けるから、そいつに何でも言ってくれ」
ああ、あの頼りないおっちゃんか……
言われて、菓子を配っていたおっちゃんの顔を思い出す。
ガキんちょには、絶大な人気があるんだよなぁ、あのおっちゃん。
資材の料金として、今回のソロバンの売り上げを丸々イスュに渡す事にした。
今回の取り分が丁度1000万RDほどになったので、都合が良かったのだ。
多少多くはあったが、誤差だ誤差。気にする程じゃない。
イスュと村長がその場で略式ではあったが証文を作り(正式な物は後日、改めてと言う話になった)、証印。
イスュは金の詰まった皮袋と、出来上がった商品を持って帰っていった。
相変わらず村長のヤム(牛)車を借りて、だ。
ってか、いい加減自前の荷車に乗って来いよな……
その日の夜……
村長は村人を集会場に集めて、作業に当たった村人たちに給料を支払うと共に、銭湯建設計画の説明をした。
製造作業に当たった村人だけでなく、今回は直接関係ない村人まで招集したのはこのためだった。
勿論、村中の全ての住人を呼び集められる施設などないので、今回は世帯主……要はお父さん連中だな……だけを集めての説明会となった。そこにはウチのパパンの姿もあった。
説明会の内容は主に3つ。
一つは、作業に協力した者には、相応の報酬が出ると言うこと。
そして、もう一つは、村を出ていた者たちを一時的に呼び戻すと言うこと。
それに付随して、家族親類はしばらくの間、空き部屋の提供など彼らの滞在を支援してあげて欲しい事を告げた。
勿論、今回は村の要請で戻ってきてもらっているので、工事の期間中に関する彼らの食費等は村が……言ってしまえば、村長が全て負担する事は明言しておいた。
その金は、ソロバンの売り上げから出ている訳だけど……
そして、最後の3つ目は村人たちに直接関係することではなかったが、戻り組みの中から村への帰郷を望むものには、そのまま村への滞在を許可する旨を伝えた。
報酬が出るとあって喜ぶ者、数年ぶりに家族親族に会えることを喜ぶ者、住人が増えることで生活が苦しくなるのではと不安がる者、今は農業以外の収入があるから大丈夫だと笑う者……
三者三様、十人十色な反応ではあったが、これと言った反対はなかった。
村の人たちは良くも悪くも従順なのだ。
余程酷い内容でもない限り、反対する様な事はない。
リバーシで負けると直ぐにムキになる子どもの様な村長だが、これでも村では人格者として通っている。
それに、ご意見番である神父様への信頼も厚い。
彼らが村長の決定に異議を唱えないのは、“この人に任せておけば大丈夫”そう言った信頼感の現われなのだろう。
日頃の行いって重要なんだなって思いました。小並感。
翌日……
早速、村の決定を村の外で暮らしいる人たちに伝えるために、遣いの人たちが出される事になっている。
予定では数日後に、イスュに頼んでおいた資材と、戻り組みが到着するはずだ。
それまでに進められる部分は進めてしまおう。
やるべき事は意外に多いのだ。
それに、現在村ではちょっとした問題も起きていた。
戻り組みが帰ってくる前に、その問題は早々に解決してしまいたい。
そのための対策会議には、俺も呼ばれているので後で顔を出すことになっていた。
と、大層な事は言っても、いつもの村長と神父様と俺でガイドラインを生成して、あとの細かい部分は村長を含めた重役(?)の方々に話し合って決めてもらえばいい。
大体、俺には俺でやる事が多いのだ。
ボイラーに使う加熱魔術陣を、もっと高効率なものにバージョンUPさせたいし、窯元に魔術陣の刻印されたレンガの発注もしなくちゃいけない。
そのためには、新規のスタンプの製作をじーさんに頼まないといけないし、魔術陣の下書きも用意しなくちゃいけない。
そうそう、銭湯の基本デザインも決めないといけないんだった……
それに、風呂上りのお楽しみは絶対に外す事が出来ない要素の一つだから、あとは、アレとアレとアレを用意しないといけないのか。
……なんか、生前より忙しくなってね、俺?
0
お気に入りに追加
1,247
あなたにおすすめの小説
新人神様のまったり天界生活
源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。
「異世界で勇者をやってほしい」
「お断りします」
「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」
「・・・え?」
神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!?
新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる!
ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。
果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。
一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。
まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!
僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~
SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。
ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。
『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』
『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』
そんな感じ。
『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
隔週日曜日に更新予定。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
創星のレクイエム
有永 ナギサ
ファンタジー
2024年、今や世界中の人々が魔法を使えるようになった時代。世界はレイヴァ―スが創設した星葬機構と、神代が創設した大財閥クロノス。この二陣営が己が悲願のために争っていた。
そんな中最強クラスの魔法使いである四条陣は、禁忌の力に飢えながらも裏の仕事をこなす日々を送っていた。しかし一人の少女との出会いをきっかけに、陣は見つけてしまう。かつてこの混沌に満ちた世界を生み出した元凶。サイファス・フォルトナーの遺産を。
元四条家次期当主としての因縁、これまで姿をくらませていたレーヴェンガルトの復活、謎の少女と結ぶ禁忌の契約。陣が辿り着く果ては己が破滅か、それとも……。これは魔都神代特区を舞台に描かれる、星を歌う者たちの物語。
小説家になろう様、アルファポリス様にも掲載しています。
半身転生
片山瑛二朗
ファンタジー
忘れたい過去、ありますか。やり直したい過去、ありますか。
元高校球児の大学一年生、千葉新(ちばあらた)は通り魔に刺され意識を失った。
気が付くと何もない真っ白な空間にいた新は隣にもう1人、自分自身がいることに理解が追い付かないまま神を自称する女に問われる。
「どちらが元の世界に残り、どちらが異世界に転生しますか」
実質的に帰還不可能となった剣と魔術の異世界で、青年は何を思い、何を成すのか。
消し去りたい過去と向き合い、その上で彼はもう一度立ち上がることが出来るのか。
異世界人アラタ・チバは生きる、ただがむしゃらに、精一杯。
少なくとも始めのうちは主人公は強くないです。
強くなれる素養はありますが強くなるかどうかは別問題、無双が見たい人は主人公が強くなることを信じてその過程をお楽しみください、保証はしかねますが。
異世界は日本と比較して厳しい環境です。
日常的に人が死ぬことはありませんがそれに近いことはままありますし日本に比べればどうしても命の危険は大きいです。
主人公死亡で主人公交代! なんてこともあり得るかもしれません。
つまり主人公だから最強! 主人公だから死なない! そう言ったことは保証できません。
最初の主人公は普通の青年です。
大した学もなければ異世界で役立つ知識があるわけではありません。
神を自称する女に異世界に飛ばされますがすべてを無に帰すチートをもらえるわけではないです。
もしかしたらチートを手にすることなく物語を終える、そんな結末もあるかもです。
ここまで何も確定的なことを言っていませんが最後に、この物語は必ず「完結」します。
長くなるかもしれませんし大して話数は多くならないかもしれません。
ただ必ず完結しますので安心してお読みください。
ブックマーク、評価、感想などいつでもお待ちしています。
この小説は同じ題名、作者名で「小説家になろう」、「カクヨム」様にも掲載しています。
3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜
I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。
レベル、ステータス、その他もろもろ
最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。
彼の役目は異世界の危機を救うこと。
異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。
彼はそんな人生で何よりも
人との別れの連続が辛かった。
だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。
しかし、彼は自分の強さを強すぎる
が故に、隠しきることができない。
そしてまた、この異世界でも、
服部隼人の強さが人々にばれていく
のだった。
「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「近接は戦士に劣って、魔法は魔法使いに劣って、回復は回復術師に劣る勇者とか、居ても邪魔なだけだ」
パーティを組んでBランク冒険者になったアンリ。
彼は世界でも稀有なる才能である、全てのスキルを使う事が出来るユニークスキル「オールラウンダー」の持ち主である。
彼は「オールラウンダー」を持つ者だけがなれる、全てのスキルに適性を持つ「勇者」職についていた。
あらゆるスキルを使いこなしていた彼だが、専門職に劣っているという理由でパーティを追放されてしまう。
元パーティメンバーから装備を奪われ、「アイツはパーティの金を盗んだ」と悪評を流された事により、誰も彼を受け入れてくれなかった。
孤児であるアンリは帰る場所などなく、途方にくれているとギルド職員から新人の教官になる提案をされる。
「誰も組んでくれないなら、新人を育て上げてパーティを組んだ方が良いかもな」
アンリには夢があった。かつて災害で家族を失い、自らも死ぬ寸前の所を助けてくれた冒険者に礼を言うという夢。
しかし助けてくれた冒険者が居る場所は、Sランク冒険者しか踏み入ることが許されない危険な土地。夢を叶えるためにはSランクになる必要があった。
誰もパーティを組んでくれないのなら、多少遠回りになるが、育て上げた新人とパーティを組みSランクを目指そう。
そう思い提案を受け、新人とパーティを組み心機一転を図るアンリ。だが彼の元に来た新人は。
モンスターに追いかけ回されて泣き出すタンク。
拳に攻撃魔法を乗せて戦う殴りマジシャン。
ケガに対して、気合いで治せと無茶振りをする体育会系ヒーラー。
どいつもこいつも一癖も二癖もある問題児に頭を抱えるアンリだが、彼は持ち前の万能っぷりで次々と問題を解決し、仲間たちとSランクを目指してランクを上げていった。
彼が新人教育に頭を抱える一方で、彼を追放したパーティは段々とパーティ崩壊の道を辿ることになる。彼らは気付いていなかった、アンリが近接、遠距離、補助、“それ以外”の全てを1人でこなしてくれていた事に。
※ 人間、エルフ、獣人等の複数ヒロインのハーレム物です。
※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。
※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。
魔力0の俺は王家から追放された挙句なぜか体にドラゴンが棲みついた~伝説のドラゴンの魔力を手に入れた俺はちょっと王家を懲らしめようと思います~
きょろ
ファンタジー
この異世界には人間、動物を始め様々な種族が存在している。
ドラゴン、エルフ、ドワーフにゴブリン…多岐に渡る生物が棲むここは異世界「ソウルエンド」。
この世界で一番権力を持っていると言われる王族の“ロックロス家”は、その千年以上続く歴史の中で過去最大のピンチにぶつかっていた。
「――このロックロス家からこんな奴が生まれるとは…!!この歳まで本当に魔力0とは…貴様なんぞ一族の恥だ!出ていけッ!」
ソウルエンドの王でもある父親にそう言われた青年“レイ・ロックロス”。
十六歳の彼はロックロス家の歴史上……いや、人類が初めて魔力を生み出してから初の“魔力0”の人間だった―。
森羅万象、命ある全てのものに魔力が流れている。その魔力の大きさや強さに変化はあれど魔力0はあり得なかったのだ。
庶民ならいざ知らず、王族の、それもこの異世界トップのロックロス家にとってはあってはならない事態。
レイの父親は、面子も権力も失ってはならぬと極秘に“養子”を迎えた―。
成績優秀、魔力レベルも高い。見捨てた我が子よりも優秀な養子を存分に可愛がった父。
そして――。
魔力“0”と名前の“レイ”を掛けて魔法学校でも馬鹿にされ成績も一番下の“本当の息子”だったはずのレイ・ロックロスは十六歳になったこの日……遂に家から追放された―。
絶望と悲しみに打ちひしがれる………
事はなく、レイ・ロックロスは清々しい顔で家を出て行った。
「ああ~~~めちゃくちゃいい天気!やっと自由を手に入れたぜ俺は!」
十六年の人生の中で一番解放感を得たこの日。
実はレイには昔から一つ気になっていたことがあった。その真実を探る為レイはある場所へと向かっていたのだが、道中お腹が減ったレイは子供の頃から仲が良い近くの農場でご飯を貰った。
「うめぇ~~!ここの卵かけご飯は最高だぜ!」
しかし、レイが食べたその卵は何と“伝説の古代竜の卵”だった――。
レイの気になっている事とは―?
食べた卵のせいでドラゴンが棲みついた―⁉
縁を切ったはずのロックロス家に隠された秘密とは―。
全ての真相に辿り着く為、レイとドラゴンはほのぼのダンジョンを攻略するつもりがどんどん仲間が増えて力も手にし異世界を脅かす程の最強パーティになっちゃいました。
あまりに強大な力を手にしたレイ達の前に、最高権力のロックロス家が次々と刺客を送り込む。
様々な展開が繰り広げられるファンタジー物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる