137 / 145
番外編
episode R & L 5
しおりを挟む
初めてラロックさんを見たのは、四学年クラス対抗戦だった。
お父様とお母様、長女のタリア姉様と一緒に、次女のセニア姉様の対抗戦の観戦をしている時、セニア姉様のチームで活躍していたのがラロックさんだった。
ラロックさんは他の四学年の中でも頭ひとつ抜け出た実力を持っていて、その時の私はセニア姉様の応援をそっちのけでラロックさんばかりを目で追っていた。
風のように速く、力強い魔法を様々な工夫で繰り出し、相性が悪い相手も倒すラロックさんの戦い方は、カトリー家の習わし通りに雷魔法ばかりを練習していた私には輝いて見えた。
私も三学年の対抗戦を前日に行っているが、大した活躍もできず、雷魔法が効かない相手になす術がなかった。
そういうこともあり、私はラロックさんの魔法を、戦略を、工夫を、すべてを知りたいと思った。
そんなラロックさんはMVP発表で四学年MVPとなり、私は心から拍手を送っていたが、ラロックさんがMVPであることを快く思わない人たちもいた。
後からセニア姉様に聞いた話によれば、ラロックさんは『侯爵家の落ちこぼれ』と噂されていたのだ。
そんな落ちこぼれと言われる理由は、草魔法の名家であるブロクディス家の次男であるのに草魔法がうまく使えない、たったそれだけのことだった。
しかも、彼の実兄であるヒュリック様でさえ、ラロックさんのことを落ちこぼれと罵っておられるんだとか。
その話を聞いた私は部屋に戻ってからつい声を出してしまった…くだらないと…。
得意属性が使えないだけで落ちこぼれ?MVPを獲れるほどの魔法力があるのに侯爵家として恥ずかしい?本当にくだらない。
ラロックさんの実力を、努力を、才能を、どうして草魔法が使えないというだけで認めないのかと、不思議でしょうがなかった。
そして、私は学園である噂を聞いた。
ラロックさんが代表戦に向けて毎日訓練室で特訓をしていると。
気になって…こんな私なんかが力になんてなれないとは思うけど、せめてお茶くらいはとずっと影で見ては渡せずにいる日々が続いていた。
そんなあるときラロックさんは話かけてくれて、お茶を受け取ってくれるようになり、少しではあるけど話をできるようになった。
恥ずかしすぎて、水筒渡して走り去ってばかりだったけど…。
そして代表戦まで一ヶ月となった日、いつもなら水筒を渡して終わりなのに、その日はラロックさんは私に相手をしてくれと言ってきた。
私は喜んで相手を引き受けた。
少しでもこの人の役に立てる…そう思うだけで私は胸躍っていた。
カトリー家に伝わる移動の魔法の靴を持ってラロックさんの相手をして、とても楽しかったけど、やっぱりラロックさんはすごくて、あっさり私は負けてしまった。いや…ほとんど自滅かもしれないけど…。
壁に衝突して頭が少しくらくらしていたけど、大したことはないと思う。
でも…ラロックさんは私のことを…抱っこ…そう、いつぞやタリア姉様からお借りした本で読んだお、お、お姫様抱っこなるものをして医務室まで運んでくださったのです。
そこで少しの話をして…私はベットに横になった。
ここまで運んでくれた素敵な姿、照れながら出ていく可愛い姿、私と真剣に向き合って訓練をするかっこいい姿、いろんなラロックさんの姿を思い浮かべて、私ははっきりと自覚してしまった。
数ヶ月姿を追い、ちゃんと話をしたのは数日だけ…でも、はっきりとわかった…私は…ラロックさんが好きなのだと…。
好き…好き…はうぅ…。
私は一人で勝手に恥ずかしくなって、毛布の中に潜り込んだ。
お父様とお母様、長女のタリア姉様と一緒に、次女のセニア姉様の対抗戦の観戦をしている時、セニア姉様のチームで活躍していたのがラロックさんだった。
ラロックさんは他の四学年の中でも頭ひとつ抜け出た実力を持っていて、その時の私はセニア姉様の応援をそっちのけでラロックさんばかりを目で追っていた。
風のように速く、力強い魔法を様々な工夫で繰り出し、相性が悪い相手も倒すラロックさんの戦い方は、カトリー家の習わし通りに雷魔法ばかりを練習していた私には輝いて見えた。
私も三学年の対抗戦を前日に行っているが、大した活躍もできず、雷魔法が効かない相手になす術がなかった。
そういうこともあり、私はラロックさんの魔法を、戦略を、工夫を、すべてを知りたいと思った。
そんなラロックさんはMVP発表で四学年MVPとなり、私は心から拍手を送っていたが、ラロックさんがMVPであることを快く思わない人たちもいた。
後からセニア姉様に聞いた話によれば、ラロックさんは『侯爵家の落ちこぼれ』と噂されていたのだ。
そんな落ちこぼれと言われる理由は、草魔法の名家であるブロクディス家の次男であるのに草魔法がうまく使えない、たったそれだけのことだった。
しかも、彼の実兄であるヒュリック様でさえ、ラロックさんのことを落ちこぼれと罵っておられるんだとか。
その話を聞いた私は部屋に戻ってからつい声を出してしまった…くだらないと…。
得意属性が使えないだけで落ちこぼれ?MVPを獲れるほどの魔法力があるのに侯爵家として恥ずかしい?本当にくだらない。
ラロックさんの実力を、努力を、才能を、どうして草魔法が使えないというだけで認めないのかと、不思議でしょうがなかった。
そして、私は学園である噂を聞いた。
ラロックさんが代表戦に向けて毎日訓練室で特訓をしていると。
気になって…こんな私なんかが力になんてなれないとは思うけど、せめてお茶くらいはとずっと影で見ては渡せずにいる日々が続いていた。
そんなあるときラロックさんは話かけてくれて、お茶を受け取ってくれるようになり、少しではあるけど話をできるようになった。
恥ずかしすぎて、水筒渡して走り去ってばかりだったけど…。
そして代表戦まで一ヶ月となった日、いつもなら水筒を渡して終わりなのに、その日はラロックさんは私に相手をしてくれと言ってきた。
私は喜んで相手を引き受けた。
少しでもこの人の役に立てる…そう思うだけで私は胸躍っていた。
カトリー家に伝わる移動の魔法の靴を持ってラロックさんの相手をして、とても楽しかったけど、やっぱりラロックさんはすごくて、あっさり私は負けてしまった。いや…ほとんど自滅かもしれないけど…。
壁に衝突して頭が少しくらくらしていたけど、大したことはないと思う。
でも…ラロックさんは私のことを…抱っこ…そう、いつぞやタリア姉様からお借りした本で読んだお、お、お姫様抱っこなるものをして医務室まで運んでくださったのです。
そこで少しの話をして…私はベットに横になった。
ここまで運んでくれた素敵な姿、照れながら出ていく可愛い姿、私と真剣に向き合って訓練をするかっこいい姿、いろんなラロックさんの姿を思い浮かべて、私ははっきりと自覚してしまった。
数ヶ月姿を追い、ちゃんと話をしたのは数日だけ…でも、はっきりとわかった…私は…ラロックさんが好きなのだと…。
好き…好き…はうぅ…。
私は一人で勝手に恥ずかしくなって、毛布の中に潜り込んだ。
2
お気に入りに追加
11,609
あなたにおすすめの小説
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
神に愛された子
鈴木 カタル
ファンタジー
日本で善行を重ねた老人は、その生を終え、異世界のとある国王の孫・リーンオルゴットとして転生した。
家族に愛情を注がれて育った彼は、ある日、自分に『神に愛された子』という称号が付与されている事に気付く。一時はそれを忘れて過ごしていたものの、次第に自分の能力の異常性が明らかになる。
常人を遥かに凌ぐ魔力に、植物との会話……それらはやはり称号が原因だった!
平穏な日常を望むリーンオルゴットだったが、ある夜、伝説の聖獣に呼び出され人生が一変する――!
感想欄にネタバレ補正はしてません。閲覧は御自身で判断して下さいませ。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。