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番外編
episode R & L 2
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「ラロック、よくやった。落ちこぼれのお前にしては頑張った方だ」
クラス対抗戦が終わり、4学年MVPに選ばれた日に家に帰ると、廊下で運悪く兄貴に出会し、開口一番にそう言われた。
ブロクディス家は草魔法の名家で知られる侯爵家だ。
そんな家に生まれ、草魔法が使えない俺は草魔法を得意としている兄貴からすれば落ちこぼれ以外の何者でもないわけだ。
「……」
「何だその顔は。言っておくが私は」
「はいはい。兄貴はブロクディス家次期当主様で、俺はただの二男だよ」
「……ふん。分かっていればいいんだ。くれぐれも恥を晒すんじゃないぞ」
兄貴は俺を小馬鹿にするように鼻を鳴らして、自室の方へ歩いていった。
「…くそ」
相変わらずむかつく言い方をするやつだ。
俺は足早に自室へ行き、制服のブレザーを脱いでベットに叩きつけた後、その横にボフッと倒れ込む。
草魔法の名家であるブロクディス家の長男として、時期当主になるのは兄貴だ。
それ自体はどうも思ってない。俺みたいなやつが当主になんてなったところで領地をまとめる自信もないし、そのつもりもない。
でも、あの兄貴の態度だけは許せない。
草魔法をうまく使えない俺を小馬鹿にして、ただただ草魔法だけを覚える兄貴の姿が俺はあまり好きじゃない。
草魔法は確かに数ある魔法の中で相手の意表をつき、あらゆる恵みをもたらす重要な魔法だと思っている。
しかし、それだけしていればいいと言うわけではないだろう。
「はぁ……ウゼェ……」
俺は一言呟いて、そのまま一眠りした。
次の日から俺は先輩との特訓の他に、自主練習にも励むようになり、訓練室に入り浸るようになった。
ひたすらに土魔法と風魔法を練習し、工夫を考え、実行と反復を繰り返した。
例え草魔法が使えなくたって、俺は兄貴にも負けないくらいの魔法力を手に入れられると、証明したかった。
「はぁ…はぁ…ダメだ。風魔法で機動力を上げても、攻撃の土魔法が速度に追いつかねぇ…」
魔法の組み合わせ、使い所、使い方すべてを考え直して試す。
それしかできないんだ。だって俺には……『才能』がないから…。
「くそ…まだ速くできるはずだ…第四…ん?」
的に向かって魔法を放とうとした時、訓練室の入り口から視線を感じた。
「誰だ?出てこい」
「……!!」
俺は的に向けていた手を入り口に向けて、視線の正体に声をかけた。
まぁ、学園の中だから、怪しい人間ではないと思うが。
「あ…あ、あの!」
出てきたのはたぶん年下の女だった。
でもこいつどっかで……あ、そうだ。
俺は特訓を一旦やめて、入り口の女のところへ向かった。
「カトリー家のやつ…だったか?」
「…!そ、そうです!カトリー家三女のリリア・カトリーと申します」
やっぱりか…貴族家の集まりで見かけたのをなんとなく覚えていた。
「…ブロクディス家次男、ラロック・ブロクディスだ。それで、俺になんか用か?」
「あ、あの!私、対抗戦の時のラロック様の戦いを見て、感動しましたの!それで、最近ここで特訓をしていると聞いて、こ…これを…」
そう言ってリリアは飲み物の入った水筒を俺に差し出した。
「あ、あぁ。あんがとな」
「は、はいぃ~!」
俺が水筒を受け取ると、リリアはヒューッと走り去っていった。
何なんだ?まぁ…ちょうど喉も乾いてたし…。
俺は水筒の蓋を開け飲む。
「……ぬるっ」
中のお茶はすごくぬるかった。
いつから見てたんだよ…。
俺は水筒を入り口近くの壁際に置いて、特訓を再開した。
クラス対抗戦が終わり、4学年MVPに選ばれた日に家に帰ると、廊下で運悪く兄貴に出会し、開口一番にそう言われた。
ブロクディス家は草魔法の名家で知られる侯爵家だ。
そんな家に生まれ、草魔法が使えない俺は草魔法を得意としている兄貴からすれば落ちこぼれ以外の何者でもないわけだ。
「……」
「何だその顔は。言っておくが私は」
「はいはい。兄貴はブロクディス家次期当主様で、俺はただの二男だよ」
「……ふん。分かっていればいいんだ。くれぐれも恥を晒すんじゃないぞ」
兄貴は俺を小馬鹿にするように鼻を鳴らして、自室の方へ歩いていった。
「…くそ」
相変わらずむかつく言い方をするやつだ。
俺は足早に自室へ行き、制服のブレザーを脱いでベットに叩きつけた後、その横にボフッと倒れ込む。
草魔法の名家であるブロクディス家の長男として、時期当主になるのは兄貴だ。
それ自体はどうも思ってない。俺みたいなやつが当主になんてなったところで領地をまとめる自信もないし、そのつもりもない。
でも、あの兄貴の態度だけは許せない。
草魔法をうまく使えない俺を小馬鹿にして、ただただ草魔法だけを覚える兄貴の姿が俺はあまり好きじゃない。
草魔法は確かに数ある魔法の中で相手の意表をつき、あらゆる恵みをもたらす重要な魔法だと思っている。
しかし、それだけしていればいいと言うわけではないだろう。
「はぁ……ウゼェ……」
俺は一言呟いて、そのまま一眠りした。
次の日から俺は先輩との特訓の他に、自主練習にも励むようになり、訓練室に入り浸るようになった。
ひたすらに土魔法と風魔法を練習し、工夫を考え、実行と反復を繰り返した。
例え草魔法が使えなくたって、俺は兄貴にも負けないくらいの魔法力を手に入れられると、証明したかった。
「はぁ…はぁ…ダメだ。風魔法で機動力を上げても、攻撃の土魔法が速度に追いつかねぇ…」
魔法の組み合わせ、使い所、使い方すべてを考え直して試す。
それしかできないんだ。だって俺には……『才能』がないから…。
「くそ…まだ速くできるはずだ…第四…ん?」
的に向かって魔法を放とうとした時、訓練室の入り口から視線を感じた。
「誰だ?出てこい」
「……!!」
俺は的に向けていた手を入り口に向けて、視線の正体に声をかけた。
まぁ、学園の中だから、怪しい人間ではないと思うが。
「あ…あ、あの!」
出てきたのはたぶん年下の女だった。
でもこいつどっかで……あ、そうだ。
俺は特訓を一旦やめて、入り口の女のところへ向かった。
「カトリー家のやつ…だったか?」
「…!そ、そうです!カトリー家三女のリリア・カトリーと申します」
やっぱりか…貴族家の集まりで見かけたのをなんとなく覚えていた。
「…ブロクディス家次男、ラロック・ブロクディスだ。それで、俺になんか用か?」
「あ、あの!私、対抗戦の時のラロック様の戦いを見て、感動しましたの!それで、最近ここで特訓をしていると聞いて、こ…これを…」
そう言ってリリアは飲み物の入った水筒を俺に差し出した。
「あ、あぁ。あんがとな」
「は、はいぃ~!」
俺が水筒を受け取ると、リリアはヒューッと走り去っていった。
何なんだ?まぁ…ちょうど喉も乾いてたし…。
俺は水筒の蓋を開け飲む。
「……ぬるっ」
中のお茶はすごくぬるかった。
いつから見てたんだよ…。
俺は水筒を入り口近くの壁際に置いて、特訓を再開した。
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