魔法の数字

初昔 茶ノ介

文字の大きさ
上 下
31 / 70
2章:学園生活

先生の実力は

しおりを挟む
ママに連れられて私達は訓練室と書かれた所へ来ていた。
訓練室はけっこう広く50m先くらいにいくつか入学式の時の的が置いてあった。

「みなさん、ここは生徒が魔法の練習をしたり、授業で魔法を試したりと…まぁ要するに自由に魔法を撃っていい部屋です」

そう言ってママは1つの的の前に立った。

「先生の得意属性は火と水と風です。ほら」

ママが魔筆を持って線をまっすぐ引くとたしかに3色の色が順番に出て、それを見て生徒達がおぉと感心したような声をだした。

「では、まずどんな魔法から…」

「はいはーい!先生の卒業試験の魔法がみたいですにゃー!」

クレアちゃんが言うとみんながまたざわつき始めた。

「卒業…試験…?」

「魔法学園では勉強したことの成果を見せるために、卒業の時に自分の最高の魔法を見せるんです。しかし、魔法の出来が悪かったからと卒業できないなんてことはないらしいので、一種の儀式のようなものですね。しかし、ほとんどの人が本気の本気で魔法を撃つらしいですよ」

私は卒業試験と聞いてなんのことかわからなかったが、ルナちゃん教えてくれた。
なるほど、ということは卒業試験は今までの魔法の集大成というわけだ。

「あらあら、残念だけどそれは見せられないわ」

「えーなんでにゃー?」

「だって、訓練室を壊しちゃったら先生が怒られちゃうでしょう?」

…え?訓練室壊れるの?

「んー…じゃあ1番早い魔法が見たいにゃー!」

「1番早い魔法…いいわよー、はい」

ママの『はい』の言葉と同時に向こうの的が細切れになった。

「え?」
「は?」

おそらくみんなだと思うけど…式の展開すら見えなかった。
気がついたら細切れみたいな…。
もう早いとか遅いとかそういうレベルじゃない。
クロくんの魔法が詠唱付きで真っ二つだったのに、ママの魔法はもうぱっと当たり前のように細切れにしているんだから格の違いというものを感じた。

「すごいにゃすごいにゃー!あんな早い魔法初めて見たにゃ!」

クレアちゃんがママに向かって走っていきぴょんぴょん跳ねながら感動していた。

「あらあら、そんなに言われるとなんだか照れちゃうわね」

クレアちゃんとママは明るく笑いあっているが、ほかの人達は正直反応に困っている。

「さて、他に今日やりたいことはあるかしら?」

「えっと…先生にいろいろ質問したいです」

「あらあら、じゃあもう1度教室に戻りましょうか」

ルナちゃんの提案で質問会ということになったので、私達はまた教室に戻ることにした。

「それでは質問のある方は手をあげてどうぞ」

「はい」

「はい、ルナちゃん」

ルナちゃん、ママにどんな質問するんだろう…。
私はママとずっといたから質問って言われてもピンとこないし、他の人の質問はちょっと興味あるかもしれない…。

「先生はこの学校で次席卒業だったんですよね?」

「はい、そうですよ。正確には次席が2人いましたが、そのうちの1人です」

「では、先生の薬学と魔法工学の成績はよかったですか!?」

ルナちゃんの質問に周りのみんなが「は…?」みたいな雰囲気になっている。

「そうですね…悪くはない…という感じでしょうか。あ、でも中等部時代に作った薬を1度褒めていただいて、その時ちょっとしたブームになりましたね」

「ブームになるほどの薬!?それはなんという薬ですか!?」

「えっと…たしか…『サユス』という名前です」

「サユスといえば飲ませれば落とせない異性はいないとまで言われた惚れ薬の頂点じゃないですかっ!!まさか先生がそれの開発者だったとは!」

ルナちゃんなんで知ってるの!?っていうかママ惚れ薬なんて作ってたの!?まさかパパも…。

「そうなんです、お友達にどうしても落としたい相手がいると言われまして…特に作りたい薬もなかったですし…あ、ちなみにそのお友達はそのお相手と結婚して幸せみたいですよ」

なんだ…友達のためか…よかった…。

「他にも何か作ったりは…」

「せ、先生!私も質問!」

ルナちゃんがヒートアップしてきたのでそれを止めるためにハナちゃんが手をあげた。

「あ、はい。ハナちゃん。ルナちゃんは後で私の学生時代の薬学のノートを貸してあげますね」

「ほんとですか!?ありがとうございます!」

そう言ってルナちゃんは満面の笑みで席についた。

「それではハナちゃん。質問をどうぞ」

「先生はどうして今まで先生になるのを断っていたんですか?」

ハナちゃんの質問はたしかに気になる。前々から誘われていたならすぐに先生をしたらよかったのに…。

「それは…秘密です」

ママはそう言ってニコッと笑った。

「な、なんでですか!?」

「そうですね…理由は強いて言うなら恥ずかしいからです。」

「は、はい?」

「機会があれば教えてあげますね。他に質問のある方はいますか?」

その後も質問会は続き、終わる頃には授業終了予定時刻を過ぎていた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓
恋愛
 十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。  だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。  そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。  しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

処理中です...