上 下
1 / 20
プロローグ

私の人生はなんだったのかな

しおりを挟む
「はぁ…疲れた…」

私は当直明けの久しい日の光の下で大きなため息を吐いた。
去年、県内の個人病院に看護師として就職し、日々の激務にすでにフラフラだ。
看護師はブラックだという話を聞いたことがあったけど、その説は正しいとまさに1年間で身をもって体験している。

昔からなんの取り柄もない私でも人の命を少しでも助けられる職に就きたいと思い看護師になったけど…さすがに向いていなかったのかな…。
こんなことで挫けてはいけないと思いつつ、日を重ねるごとにやることも増えてだんだん息をつく時間が減っていく。

とりあえず今日はもう早く帰って明日の夜勤に備えないと…。

私は歩いて駅に向かう途中、1つのボールが公園から私の目の前を通過し、それを追うように3歳くらいの男の子は道路に飛び出していく。
ぼんやりとしている頭の中でその危険な状況に気がつくのは少し遅かった。

ボールを拾い上げた男の子に今まさにトラックが猛スピードで近づいているのだ。
私はそれに気がついて持っているカバンを投げ出して男の子に向かって走り出す。
手を引っ張るには時間がないし、距離がもう道路の反対側の方が近い位置に男の子がいる時点でその選択肢はない。
私はとにかく男の子を道路の奥まで押して、男の子は転んでしまったが、歩道まで出られた。
しかし、押した私もバランスを崩して転びかける。
地面に到達する前に目の前にはトラックがいた。
チラッと見た運転席にはスマホ片手に急ブレーキを踏んだであろう茶髪あんちゃんが目に入った。

私はまさに、トラックに轢かれたのだ。
なんというか、どこがぶつかったのかはわからないがとにかく痛いし、体が動かないし、目の前には患者さんではなく私の血が道路を赤く染めている。
近くの人達の叫び声が聞こえるが、どうでもいい感じになっている。

体がだんだん冷たくなっていくのがわかる。熱がある時とは違い、寒気ではなく冷たいと感じる。
意識もどんどん遠くなって、まるで眠りにつくように私は意識を失った。

あーあ…ブラックまがいの職に就いて、最後はチャラ男の不注意によって轢かれて死ぬ…。
私の人生…なんだったんだろう。
まぁ、小さな男の子が死んじゃうところが、擦りむき程度で済んだのだ。まったくムダではなかっただろう…。

もっと次の人生はみんなに必要にされる人になりたいなぁ…。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家族と移住した先で隠しキャラ拾いました

狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「はい、ちゅーもーっく! 本日わたしは、とうとう王太子殿下から婚約破棄をされました! これがその証拠です!」  ヴィルヘルミーネ・フェルゼンシュタインは、そう言って家族に王太子から届いた手紙を見せた。  「「「やっぱりかー」」」  すぐさま合いの手を入れる家族は、前世から家族である。  日本で死んで、この世界――前世でヴィルヘルミーネがはまっていた乙女ゲームの世界に転生したのだ。  しかも、ヴィルヘルミーネは悪役令嬢、そして家族は当然悪役令嬢の家族として。  ゆえに、王太子から婚約破棄を突きつけられることもわかっていた。  前世の記憶を取り戻した一年前から準備に準備を重ね、婚約破棄後の身の振り方を決めていたヴィルヘルミーネたちは慌てず、こう宣言した。 「船に乗ってシュティリエ国へ逃亡するぞー!」「「「おー!」」」  前世も今も、実に能天気な家族たちは、こうして断罪される前にそそくさと海を挟んだ隣国シュティリエ国へ逃亡したのである。  そして、シュティリエ国へ逃亡し、新しい生活をはじめた矢先、ヴィルヘルミーネは庭先で真っ黒い兎を見つけて保護をする。  まさかこの兎が、乙女ゲームのラスボスであるとは気づかづに――

前世は魔法使いです。(家族では最弱でした)

初昔 茶ノ介
ファンタジー
どこにでもあるような幸せな家庭の末っ子として生まれた鞠(まり)。 家族みんなに愛されて育てられた彼女は6歳の誕生日と入学式の前日に変わった夢を見る。 そして、迎えた入学式で鞠は…。 ____________________________________ 途中で聞いたことのある歴史上の人物等が出てきますが、このお話はフィクションです。 実際の歴史と違っていてもお気になさらず、「この世界の〇〇はこういう設定なんだなぁ」くらいで思ってください。

誰にも愛されずに死んだ侯爵令嬢は一度だけ時間を遡る

ファンタジー
癒しの能力を持つコンフォート侯爵家の娘であるシアは、何年経っても能力の発現がなかった。 能力が発現しないせいで辛い思いをして過ごしていたが、ある日突然、フレイアという女性とその娘であるソフィアが侯爵家へとやって来た。 しかも、ソフィアは侯爵家の直系にしか使えないはずの能力を突然発現させた。 ——それも、多くの使用人が見ている中で。 シアは侯爵家での肩身がますます狭くなっていった。 そして十八歳のある日、身に覚えのない罪で監獄に幽閉されてしまう。 父も、兄も、誰も会いに来てくれない。 生きる希望をなくしてしまったシアはフレイアから渡された毒を飲んで死んでしまう。 意識がなくなる前、会いたいと願った父と兄の姿が。 そして死んだはずなのに、十年前に時間が遡っていた。 一度目の人生も、二度目の人生も懸命に生きたシア。 自分の力を取り戻すため、家族に愛してもらうため、同じ過ちを繰り返さないようにまた"シアとして"生きていくと決意する。

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~

遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」 戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。 周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。 「……わかりました、旦那様」 反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。 その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。

私はいつか、理想の本で涙する

初昔 茶ノ介
恋愛
本が好きな立花 陽菜乃(たちばな ひなの)はいつものように公園で読書を楽しんでいた。 そんな陽菜乃は同じく公園で読書をしようとする鹿野 考(かの こう)に声をかけられて…。 本が結ぶ二人の恋物語です。 ゆっくり書いていけたらと思います。 良かったら感想等、お願いします。 恋愛小説は初めてなので、アドバイスなどもいただけると嬉しいです。

★★★★★★六つ星ユニークスキル【ダウジング】は伝説級~雑魚だと追放されたので、もふもふ白虎と自由気ままなスローライフ~

いぬがみとうま
ファンタジー
■あらすじ 主人公ライカは、この国始まって以来、史上初の六つ星ユニークスキル『ダウジング』を授かる。しかし、使い方がわからずに、西の地を治める大貴族である、ホワイトス公爵家を追放されてしまう。 森で魔獣に襲われている猫を助けた主人公。実は、この猫はこの地を守護する伝説の四聖獣『白虎』であった。 この白虎にダウジングの使い方を教わり、自由気ままなスローライフを求めてる。しかし、待ち構えていたのは、度重なり降りかかる災難。それは、ライカがダウジングで無双していく日々の始まりであった。

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

処理中です...