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第二章

ご心配をおかけしました

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「はっ…」

女神様との会話の後、私は目が覚めた。
最初に目に入ったのは座ったまま眠ってしまっているライラだった。

ゆっくりと起き上がるとなつかしい布団に眠っていたと気がついた。
どのくらい眠っていたのだろう…。それを聞くためにはまずライラを起こさなくては。

「ライラ、ライラ」

ライラの肩を軽く叩いて、ライラはゆっくり目を開けた。

「おじょうさま…?お嬢様!」

私を見るや否や、抱きしめるライラ。ちょっと苦しい。

「もう!急に倒れられるから心配したじゃないですか!」

「ご、ごめんねライラ。私どのくらい眠ってた?」

「3日ほどですよ…みんな心配してたんですから…」

そう言ってライラは涙を右手で拭き取った。

「3日…そんなに…」

うむ…これはほんとにリーフェ不足に気をつけよう…。

「リーシャはどこ?」

「今お嬢様が帰るための馬車を用意しています。1度王国に戻って医者に見せたほうがいいとの判断だったので」

「そうなんだ。ルリちゃん達は?」

「ルリちゃん達は奥の道場に行かれたはずです。ルリちゃんなんかお嬢様が倒れた日にわんわん泣いてほんとに心配してました」

「そっか…じゃあ謝りに行かないとね」

私は立ち上がると、自分が浴衣のような服を着ていることに気がついた。

「この服どうしたの?」

「ケンセイさんが近所の方に言って貸していただいたそうです。とてもお似合いですよ」

なるほど…浴衣をまさか着ることになるとは…。
とりあえず奥の道場に行こう…。

私は道場の方へ行き、扉を開けるとルリちゃんが木刀を持ってケンセイさんと向き合っていた。
あれ、でもケンセイさん、なんか白髪増えた?

「あ…おねーちゃん!」

ルリちゃんが私に気がつき、こっちに来ようと向きを変えるとケンセイさんが木刀を上げた。

「隙ありじゃあ!」

ルリちゃんがそれを木刀で受け止める。

「ルリに…隙なんてないもん」

ルリちゃんがそのまま下にケンセイさんの木刀をいなすと、3歩後ろへ下がって距離を取る。

「ムラサメ流…イカヅチ」

ルリちゃんがすごいスピードでジグザグにケンセイさんに向かっていく。

「ムラサメ流、ウキグモ」

しかし、ケンセイさんにルリちゃんの木刀が当たるはずが、ルリちゃんの木刀はそのまま通り過ぎた。
まるですり抜けたように見えたけど…。

「すごいですね…避けるのが速すぎてまるですり抜けたようです」

ライラに言われてわかった。ぎりぎりでルリちゃんの木刀を避けたのだ。
そして、通り過ぎたルリちゃんの木刀は持ち手のところから綺麗に切れた。

……いやいや、どっちも木刀だよね!?なんで切れるの!?

「まだまだじゃのぉ、ルリよ」

「むー…おねーちゃんが来たところで攻撃するのは…ずるい」

「いやいや!なに当たり前みたいな会話してるの!?」

はっ…耐えられずについツッコミを…。

「おねーちゃん…よかったぁ…」

ルリちゃんが木刀を捨てて私に抱きつく。

「ごめんねルリちゃん…心配かけて」

「うん…でも、起きたからいい…」

「おぬしがスノウちゃんかね?」

ケンセイさんが私に近づいて言う。
え?ケンセイさんは何回も私と…。

「あぁ、すまんすまん。わしはケンセイの父、名をケンゴウという。おぬしの菓子を食べたらすっかり元気になったのじゃ」

え!?ケンセイさんそっくり!?しかもピンピンしてる!?
あぁ…そっか…そう言えばおまじないしちゃったもんね…元気になりますようにって。

「おかげで可愛いひ孫と剣をうち合えとるわい」

「そ、そう言えばルリちゃん…そんなに強かったの?」

「ルリは…別に強くない」

ルリちゃんが私を見上げて言うけど…あのスピードで動ける5歳児を普通と認めるのは私の常識が許さない。
そんな私を見て、ケンゴウさんが私に耳打ちした。

「ルリはこう言っておるが、ルリは5歳でムラサメ流剣術の技を全て覚えた天才じゃ。驚くのも無理はない」

ムラサメ流剣術がどんなものかよくわからないけど…うん、ルリちゃんがすごいのはわかった。

「あ、そうだ…おねーちゃん、ちょっと待ってて」

そう言ってルリちゃんは厨房の方へトコトコ走っていって、しばらくして帰ってきた。

「はい…おねーちゃんも、これで元気になって?」

ルリちゃんは手にお椀を持ってきて、私にスプーンと一緒に渡した。

「もしかして…お粥?」

「うん…おじいちゃんが病気の時にはこれがいいって…薬草粥…ルリが薬草を取ってきたの」

「へぇ…ありがとうルリちゃん。でも立ちながらじゃお行儀が悪いから、あっちで食べるね」

私はそう言ってルリちゃんの頭を撫でる。

「そろそろお昼じゃ。出ていった者も帰ってくるじゃろう。わしらも昼食にするとしよう」

ケンゴウさんの読み通り、リーシャとケンセイさんが帰ってくる音がした。

こうして、ケンゴウさんが元気になった事で用がなくなったため、次の日には私達はラインバルトへ帰ることになった。

ちなみに、私はご飯の後でリーシャにとても怒られて、リーフェの配分をほんとにしっかりしようと心に誓うのだった。
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