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アグネッタ・ヴィクストレーム
事情聴取
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ヴィクストレームとアーレンス警部は警察本部内のある小部屋で机を挟んで座っていた。
アーレンス警部は不思議そうにヴィクストレームを見た。大抵、こういうところに呼び出されたら、少しはおどおどするものだが、彼女は、何にも動じていないという風に静かに座ってアーレンス警部を見つめている。
アーレンス警部はゆっくりとヴィクストレームに質問する。
「お名前を伺っても?」
「アグネッタ・ヴィクストレームです」
「あなたは、旧共和国でも、帝国の方でもないですね?」
「ええ。私はヴィット王国の者です」
「入国の許可は?」
「もちろんあります。貿易関係の許可証があります」
ヴィクストレームは、ポケットからその許可証を取り出してアーレンス警部に手渡した。
アーレンスはそれを受け取り、一瞥してから話をする。
「なるほど。それで、貿易関係の方がなぜ犯罪者の委任状を持っているのですか?」
「貸金庫の中身に興味があったので、彼にお願いして委任状を書いてもらいました」
「なぜ、興味があるのですか?」
「あの魔術書は、本当は国外に持ち出してはいけない物なのです。なので、国に持ち帰らなければなりません」
「なるほど、そうですか。そう言う任務についているということですか?」
「違います。ヴィット王国の国民は、違法に持ち出された魔術書の存在を知った時は、それを回収して国に戻すのが義務なのです」
「なるほど。それで、ローゼンベルガーと知り合った経緯を教えてください」
「オストハーフェンシュタットの食堂で知り合いました」
「なんという食堂ですか?」
「港のそばの“オアーゼ”です」
「“オアーゼ”ですね」
ヴィクストレームはとっさに嘘の店の名前を言った。アーレンス警部は嘘と気付かず店の名前を復唱して、メモを取った。
メモを書き終わると、アーレンス警部はおもむろに貸金庫である金属の箱を机の上に置いて、ふたを開けた。
「行員にお願いして鍵を開けてもらいました」
箱の中には、ヴィクストレームが予め聞いていた通りの加速魔術の魔術書が入っていた。
アーレンス警部を魔術書を指さして言った。
「この魔術書ですね?」
「そうです、間違いありません」
「あなたは、これをローゼンベルガーに取ってくるようにお願いされたのですか?」
「いえ、先ほども言いましたが、違法に持ち出された魔術書を国に持ち帰らなければいけないのです。彼にこれを譲ってもらえるということで、私が代わりに取りに来ました。今、移動禁止令がありますので、彼はここに来ることができません。なので、仕方なく、移動ができる私が取りに来ることになり、彼には委任状を書いてもらいました」
「ローゼンベルガーがこれまでに関わった犯罪に関係している可能性もあるので、この魔術書の中身を詳しいものに読んでもらって確認します。それで、どうするか決めることになります」
アグネッタは、ローゼンベルガーがこの魔術を使って現金輸送馬車を襲撃したという風に聞いていので、警察はすんなりと渡してくれるとは思えなかった。しかし、予想していた事なので、一旦、この場は「わかりました」とだけ答えた。
その後、ヴィクストレームは、アーレンス警部には、普段どのような貿易の仕事に関わっているかなど、根掘り葉掘り聞かれた。
だいぶ時間が経っただろうか、取り調べは終わった。アーレンス警部曰く、ローゼンベルガーが過去に関わった犯罪にはヴィクストレームは関係ないだろうとのことで、ヴィクストレームは一旦は解放されることになった。ただし、しばらくは街を出るなと言われた。
ヴィクストレームは、これ見よがしにため息をついて部屋を出る。アーレンス警部が宿屋まで馬車で送ってくれるように手配してくれたのでそれに乗って宿屋に向かう。
宿屋の自室についたのは、午後の早い時間だった。ヴィクストレームは、今日の残りの時間は自室で休むことにした。
アーレンス警部は不思議そうにヴィクストレームを見た。大抵、こういうところに呼び出されたら、少しはおどおどするものだが、彼女は、何にも動じていないという風に静かに座ってアーレンス警部を見つめている。
アーレンス警部はゆっくりとヴィクストレームに質問する。
「お名前を伺っても?」
「アグネッタ・ヴィクストレームです」
「あなたは、旧共和国でも、帝国の方でもないですね?」
「ええ。私はヴィット王国の者です」
「入国の許可は?」
「もちろんあります。貿易関係の許可証があります」
ヴィクストレームは、ポケットからその許可証を取り出してアーレンス警部に手渡した。
アーレンスはそれを受け取り、一瞥してから話をする。
「なるほど。それで、貿易関係の方がなぜ犯罪者の委任状を持っているのですか?」
「貸金庫の中身に興味があったので、彼にお願いして委任状を書いてもらいました」
「なぜ、興味があるのですか?」
「あの魔術書は、本当は国外に持ち出してはいけない物なのです。なので、国に持ち帰らなければなりません」
「なるほど、そうですか。そう言う任務についているということですか?」
「違います。ヴィット王国の国民は、違法に持ち出された魔術書の存在を知った時は、それを回収して国に戻すのが義務なのです」
「なるほど。それで、ローゼンベルガーと知り合った経緯を教えてください」
「オストハーフェンシュタットの食堂で知り合いました」
「なんという食堂ですか?」
「港のそばの“オアーゼ”です」
「“オアーゼ”ですね」
ヴィクストレームはとっさに嘘の店の名前を言った。アーレンス警部は嘘と気付かず店の名前を復唱して、メモを取った。
メモを書き終わると、アーレンス警部はおもむろに貸金庫である金属の箱を机の上に置いて、ふたを開けた。
「行員にお願いして鍵を開けてもらいました」
箱の中には、ヴィクストレームが予め聞いていた通りの加速魔術の魔術書が入っていた。
アーレンス警部を魔術書を指さして言った。
「この魔術書ですね?」
「そうです、間違いありません」
「あなたは、これをローゼンベルガーに取ってくるようにお願いされたのですか?」
「いえ、先ほども言いましたが、違法に持ち出された魔術書を国に持ち帰らなければいけないのです。彼にこれを譲ってもらえるということで、私が代わりに取りに来ました。今、移動禁止令がありますので、彼はここに来ることができません。なので、仕方なく、移動ができる私が取りに来ることになり、彼には委任状を書いてもらいました」
「ローゼンベルガーがこれまでに関わった犯罪に関係している可能性もあるので、この魔術書の中身を詳しいものに読んでもらって確認します。それで、どうするか決めることになります」
アグネッタは、ローゼンベルガーがこの魔術を使って現金輸送馬車を襲撃したという風に聞いていので、警察はすんなりと渡してくれるとは思えなかった。しかし、予想していた事なので、一旦、この場は「わかりました」とだけ答えた。
その後、ヴィクストレームは、アーレンス警部には、普段どのような貿易の仕事に関わっているかなど、根掘り葉掘り聞かれた。
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