413 / 419
衝撃の新学年編
引継ぎ
しおりを挟む
放課後。
僕と毛利さんは教室を後にすると、連れ立って歴史研の部室として使われている校舎の4階、端の端、理科準備室へ向かう。
僕が部長になったのだから、歴史研の部室はこんな辺鄙な所じゃあなくて、もっと便利なところに移転できないものだろうか?
などと考えつつ、部室の扉を開けた。
中では、今日も伊達先輩と上杉先輩が、ポテチを肴にジュースを飲んでいた。
「いらっしゃい」
「来たね!」
伊達先輩と上杉先輩がいつもの挨拶をしてきたので、僕らは挨拶を返す。
「「こんにちは」」
僕と毛利さんは椅子に座る。
早速、僕は話を切り出す。
「ええと…。部長の引継ぎがあると聞いて来ました」
「ええ。このノートを渡すわ」
伊達先輩はそう言うと、古びたノートを手渡してきた。
僕はそれを受け取ると、開いて少しばかりペラペラめくって中を確認する。
お城巡りの経路と料金が大まかに書かれていた。
ちゃんと100つの城のルートなどが書かれているようだ。
「なかなか、すごいですね」
「中には何年も前の古い情報もあるから、どこかに訪問するときは念のため調べて」
「古い情報ですか?」
「鉄道料金や割引サービスが変更になってるから」
「なるほど…」
確か、この経路は鉄道研究部が協力してくれたと、学園祭の時に聞いたことがあったのを不意に思い出した。
面倒だから鉄道研究部に…、と思ったが鉄道研究部に知り合いがいなかった。
まあ、経路ぐらいネットで調べればいいか。
「訪問する順番と日程は、どうすればいいですか?」
「それは、部長が決めていいわ。これまでと同じように、夏休みとか長い連休の時にいくつも回った方が効率的よ。ノートにも効率的に回れるように書いてあるわ。時間のある時にじっくり読んでみて」
「わかりました」
ノートをさらに、ペラペラとめくってみる。
北海道と九州、沖縄は飛行機を使うのか…。
確かに沖縄は飛行機か船でしか行けないからな。
LCCの航空会社を使うように書いてある。
旅費の大部分は、歴史研OB、OGからの寄付で成り立っている。
とはいえ、旅費は足りるのだろうか…?
「ええと…。旅費はどうすれば?」
僕は尋ねた。
「顧問の島津先生が管理しているから、その都度申請して」
「わかりました…。しかし、旅費が足りなくなるということはないですか?」
「急に部員が沢山増えたりしなければ大丈夫よ。例年、新入部員は2人ぐらいだから、その程度だったら何とか足りるわね。グランクラスとか乗らなければ」
「グランクラス?」
「JR東日本の新幹線の最上級車両で、飛行機のファーストクラスみたいなものよ」
“飛行機のファーストクラス”が、どのようなものかわからないが、金持ちブルジョワが乗るのだろう。
きっと、金ピカな席だ。
お金とか、それ以外でも、困ったら毛利さんと相談して決めればいいか…。
そもそも、普段は特段やることもないし。
部長、何とかなるかな。
伊達先輩は続ける。
「新入部員と言えば、勧誘のための部活紹介のオリエンテーションが、体育館で今週金曜にあるから頑張ってね」
そうか。忘れる所だったが、全1年生向けに部活紹介オリエンテーションがあるんだった。さっきも島津先生が言っていたような。
大人数の前に立つのは、緊張するが仕方ないな。
話す内容を考えないと…。
少し世間話をして過ごしていると、上杉先輩が立ち上がった。
「アタシ、そろそろ行くわ」
突然なので、僕は少し驚いて尋ねた。
「え? どちらへ?」
「バイトの面接があるんだよ」
「バイト?」
「3年は、お城巡りがないからね。バイトでもして家計を助けないと」
「そうですか…」
上杉先輩みたいなギャルを雇ってくれるところがあるんだろうか?
「だから、部室にはあまり来れなくなるけど、寂しがらないでね」
上杉先輩はニヤつきながら言った。
別に寂しくはない。
「面接、頑張ってください」
僕は社交辞令的にそう言って、上杉先輩を送り出した。
「あと」
伊達先輩が話題を変えた。
「私も部室には、あまり頻繁に来ないようにするわ」
ということは新入部員が入るまでは、僕と毛利さんの2人きりか。
伊達先輩は話を続ける。
「生徒会の溜まっている案件があるから」
「そうですか」
「武田君にも、生徒会の仕事で手伝ってほしいものがあるのだけど」
「えっ? 何ですか?」
「古い書類をスキャンしてPDFデータ化していくという仕事があるのだけど」
ああ…、以前、松前先輩がそんなことをやると言っていたな。
PCを使う仕事は僕に回ってくるのだ。
仕方ないので、手伝うか。
「いつから始めますか?」
「なるべく早い方がいいわね」
「じゃあ、明日からでいいですか?」
「いいわよ。じゃあ、明日の放課後は生徒会室に来て」
「わかりました」
その後も、少し雑談をして、お昼になる前に解散となった。
僕と毛利さんは教室を後にすると、連れ立って歴史研の部室として使われている校舎の4階、端の端、理科準備室へ向かう。
僕が部長になったのだから、歴史研の部室はこんな辺鄙な所じゃあなくて、もっと便利なところに移転できないものだろうか?
などと考えつつ、部室の扉を開けた。
中では、今日も伊達先輩と上杉先輩が、ポテチを肴にジュースを飲んでいた。
「いらっしゃい」
「来たね!」
伊達先輩と上杉先輩がいつもの挨拶をしてきたので、僕らは挨拶を返す。
「「こんにちは」」
僕と毛利さんは椅子に座る。
早速、僕は話を切り出す。
「ええと…。部長の引継ぎがあると聞いて来ました」
「ええ。このノートを渡すわ」
伊達先輩はそう言うと、古びたノートを手渡してきた。
僕はそれを受け取ると、開いて少しばかりペラペラめくって中を確認する。
お城巡りの経路と料金が大まかに書かれていた。
ちゃんと100つの城のルートなどが書かれているようだ。
「なかなか、すごいですね」
「中には何年も前の古い情報もあるから、どこかに訪問するときは念のため調べて」
「古い情報ですか?」
「鉄道料金や割引サービスが変更になってるから」
「なるほど…」
確か、この経路は鉄道研究部が協力してくれたと、学園祭の時に聞いたことがあったのを不意に思い出した。
面倒だから鉄道研究部に…、と思ったが鉄道研究部に知り合いがいなかった。
まあ、経路ぐらいネットで調べればいいか。
「訪問する順番と日程は、どうすればいいですか?」
「それは、部長が決めていいわ。これまでと同じように、夏休みとか長い連休の時にいくつも回った方が効率的よ。ノートにも効率的に回れるように書いてあるわ。時間のある時にじっくり読んでみて」
「わかりました」
ノートをさらに、ペラペラとめくってみる。
北海道と九州、沖縄は飛行機を使うのか…。
確かに沖縄は飛行機か船でしか行けないからな。
LCCの航空会社を使うように書いてある。
旅費の大部分は、歴史研OB、OGからの寄付で成り立っている。
とはいえ、旅費は足りるのだろうか…?
「ええと…。旅費はどうすれば?」
僕は尋ねた。
「顧問の島津先生が管理しているから、その都度申請して」
「わかりました…。しかし、旅費が足りなくなるということはないですか?」
「急に部員が沢山増えたりしなければ大丈夫よ。例年、新入部員は2人ぐらいだから、その程度だったら何とか足りるわね。グランクラスとか乗らなければ」
「グランクラス?」
「JR東日本の新幹線の最上級車両で、飛行機のファーストクラスみたいなものよ」
“飛行機のファーストクラス”が、どのようなものかわからないが、金持ちブルジョワが乗るのだろう。
きっと、金ピカな席だ。
お金とか、それ以外でも、困ったら毛利さんと相談して決めればいいか…。
そもそも、普段は特段やることもないし。
部長、何とかなるかな。
伊達先輩は続ける。
「新入部員と言えば、勧誘のための部活紹介のオリエンテーションが、体育館で今週金曜にあるから頑張ってね」
そうか。忘れる所だったが、全1年生向けに部活紹介オリエンテーションがあるんだった。さっきも島津先生が言っていたような。
大人数の前に立つのは、緊張するが仕方ないな。
話す内容を考えないと…。
少し世間話をして過ごしていると、上杉先輩が立ち上がった。
「アタシ、そろそろ行くわ」
突然なので、僕は少し驚いて尋ねた。
「え? どちらへ?」
「バイトの面接があるんだよ」
「バイト?」
「3年は、お城巡りがないからね。バイトでもして家計を助けないと」
「そうですか…」
上杉先輩みたいなギャルを雇ってくれるところがあるんだろうか?
「だから、部室にはあまり来れなくなるけど、寂しがらないでね」
上杉先輩はニヤつきながら言った。
別に寂しくはない。
「面接、頑張ってください」
僕は社交辞令的にそう言って、上杉先輩を送り出した。
「あと」
伊達先輩が話題を変えた。
「私も部室には、あまり頻繁に来ないようにするわ」
ということは新入部員が入るまでは、僕と毛利さんの2人きりか。
伊達先輩は話を続ける。
「生徒会の溜まっている案件があるから」
「そうですか」
「武田君にも、生徒会の仕事で手伝ってほしいものがあるのだけど」
「えっ? 何ですか?」
「古い書類をスキャンしてPDFデータ化していくという仕事があるのだけど」
ああ…、以前、松前先輩がそんなことをやると言っていたな。
PCを使う仕事は僕に回ってくるのだ。
仕方ないので、手伝うか。
「いつから始めますか?」
「なるべく早い方がいいわね」
「じゃあ、明日からでいいですか?」
「いいわよ。じゃあ、明日の放課後は生徒会室に来て」
「わかりました」
その後も、少し雑談をして、お昼になる前に解散となった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う
月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!
この『異世界転移』は実行できません
霜條
ライト文芸
どこにでもいるサラリーマン、各務堂一司《かがみどうかずあき》。
仕事ばかりの日々から離れる瞬間だけは、元の自分を取り戻すようであった。
半年ぶりに会った友人と飲みに行くと、そいつは怪我をしていた。
話しを聞けば、最近流行りの『異世界転移』に興味があるらしい。
ニュースにもなっている行方不明事件の名だが、そんなことに興味を持つなんて――。
酔って言う話ならよかったのに、本気にしているから俺は友人を止めようとした。
それだけだったはずなんだ。
※転移しない人の話です。
※ファンタジー要素ほぼなし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる