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暁を覚えない春眠編

津山城(日本100名城 No.67)と鬼ノ城(日本100名城 No.69)

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 翌日の朝7時。

「「起きろー!」」
 呼びかける声に、僕は目を開けた。
 目の前に、妹の美咲と前田さんが覗き込むようにして僕を見下ろしていた。

「あ…、おはよう…」
 僕は眠気を堪えなかがら、身を起こした。

「おはよう、じゃなあいよ」
 妹は呆れる様に言う。
「紗夜さんと、一緒に寝てたの?」

「ええっ!?」

 僕は、妹の発言に驚いて、横を見た。なんと上杉先輩が僕のベッドの中で寝ているではないか!
 上杉先輩は僕のほうを見て笑っている。

 僕は驚いて尋ねた。
「な、な、何でここで寝てるんですか?!」

「なにしらばっくれてるの? 昨日、あんなに激しかったのに」
 上杉先輩は起き上がって言った。

「はあっ?! 全然記憶に無いんですが?!」

 僕と上杉先輩のやり取りを見て、妹と前田さんは腹を抱えて笑っている。
 そして、妹はスマホを向けて写真を撮り始めた。

「おい! 写真撮るな!」
 僕は呆れて言う。
「僕が上杉先輩みたいなのをベッドに引き込むわけないじゃないですか?」

「はあっ!? “みたいなの”ってなによ!? 失礼な!」
 上杉先輩が文句を言ってきた。

「じゃあ、引き込んでもいいんですか?」

「ダメに決まってるじゃん」

「一体、どうしろと?」

 などとアホな会話はほどほどにして、上杉先輩と前田さんを追い出して、出発の準備をする。
 ホテルの食堂で無料の朝食を取ってから、ロビーに歴史研一行が集合する。
 今日も2つお城巡りをする。
 最初の目的地は、津山城だ。

 岡山駅からJRで津山線で1時間半程度で津山に到着する。
 津山駅からは徒歩10分程度で津山城に到着した。
 駅チカで助かる。

 津山城は、室町時代に山中忠正が鶴山城を築いたことが始まり。一度、廃城となるも織田信長の重臣であった森可成の六男・忠政が1604年に築城、1616年に完成した。石垣が特徴。
 津山城は、明治の廃城令により建造物はすべて取り壊されたが、2005年の築城400周年記念に備中櫓が復元されている。




 入城料310円を払って中には入る。
 立派な石垣を眺めつつ階段を登って行って天守台跡へ。
 復元された備中櫓の中も見学できたので入ってみる。

 見学が終わると、再び駅まで戻ってきた。
 駅の南側には“津山まなびの鉄道館”というのがあって、扇形の機関車庫があるのだが、時間の都合で見学は見送った。

 次に向かうのは鬼ノ城。
 津山駅からJRにのって岡山駅を経由して桃太郎線の愛称のある吉備線の服部駅まで、約2時間の旅。
 服部駅からは徒歩なのだが…。
 Google先生によると1時間41分。気が滅入るな…。

 歴史研一行はゾロゾロと徒歩で移動。
 途中の砂川公園までは、上りもほとんどなくて歩きやすかったが、その後は急な坂が続く。唯一、不幸中の幸いだったのはアスファルト舗装されているところ。
 途中、立ち止まりって休憩しながら、ゆっくりと坂を登って行く。
 鬼城山ビジターセンターに到着するまで、結局2時間ほどかかってしまった。
 昨日の、備中松山城よりキツイ登山だった。汗もかいた。
 今までの山城の中で一番つらいと思った。

 鬼城山ビジターセンターには休憩所があったので、ベンチに座ってドリンクを自販機で飲んだりして休憩する。みんな疲れてぐったりしている。
 今更だが、タクシーを使えばいいのにと思った。

 30分ほど休憩してから、さらに鬼ノ城に向かってもう少し山を登る。
 そして、やっと到着した鬼ノ城跡。

 鬼ノ城は標高約394mの鬼城山に築かれた朝鮮式城郭構造の山城。
「日本書紀」などに記載がなく謎の城で、663年に倭国・百済連合が白村江の戦いで唐・新羅の連合軍に敗退し、本土に攻め込まれる危機に瀕したため九州や四国に対外防衛上築いた城のうちの1つという説がある。
 現在は、西門と角楼や土塁が復元されている。




 僕らは復元された西門を見学する。
 そして、鬼ノ城址学習広場(展望デッキ)から、辺りの風景を見る。
 歴史研メンバーは登山で疲れているので、ここだけを見て、もう撤収しようと言うことになった。

 下山する。
 下りは登りより楽で、時間も往路ほどかからずに服部駅まで戻ってきた。
 そして、電車に乗って岡山駅まで。
 今日もまた、イオンモールで宴会のジュースとお菓子を買ってからホテルに戻る。

 部屋でシャワーを浴びて汗を流して、しばらくベッドでぐったりして、食堂で無料の夕食を食べた後は、僕と妹の部屋で宴会が始まった。

「今日のはキツかったねー」
 上杉先輩が言った。

「山城に行くときはタクシーを使えばいいのに。今後はタクシーを使えそうなお城はそうしましょうよ」
 僕は提案をする。

「来年は武田君が部長だから、予算が間に合えばタクシーを使えばいいと思うわ」
 伊達先輩は言った。

「じゃあ、そうします」

「でも、予算はぎりぎりだから、なかなか難しいと思うわ」

「そうですか…、予算を増やすいい方法が何か無いですかね?」

「先輩たちの寄付が増えるとか、学園祭でカフェの売り上げを増やすかね」

「なるほど…」

「そんなことより」
 上杉先輩が割り込んできた
「キミ。今日は疲れたからアタシのふくらはぎをマッサージしてよ」

「何で僕が?」

「アタシと恵梨香は歴史研での最後の旅なんだから、餞別代りにやってよ」

「ああ…、そういえばそうですね」
 これで旅先では絡まれることは無いと考えるとちょっと嬉しくなった。
 だから、上杉先輩と伊達先輩のふくらはぎをマッサージしてあげた。
 その後、妹と前田さんもマッサージをやってくれと言ってきたが、拒否した。

 宴会はしばらく続いたが、明日は出発が早いので宴会も早めに切り上げた。
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