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暁を覚えない春眠編
ホワイトデー~その1
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3月14日。
ホワイトデー、今日も昨日に引き続き色々とやらないといけないことがある。
面倒だが登校する。
校舎に入り、下駄箱付近。
登校してきた何人もの生徒が上履きに履き替えている。
近くでは新聞部員が間隔を開けて4、5人ほどが立っていた。
彼らは、"P"が手紙を誰かの下駄箱に入れるかもしれないということで、監視をしているのだ。
その中に小梁川さんがいるのを見つけた。
僕も上履きに履き替えると、彼女に話しかける。
「小梁川さん、おはよう」
小梁川さんは下駄箱の方から目線を外さずに挨拶を返した。
「おはよう。武田君」
「どう? “P”は居たかい?」
「今のところは、下駄箱にバレンタインデーのチョコのお返しを入れる者が数名確認できたわ。彼らが“P”かどうかは、明日以降に改めて調査する予定よ」
「そうか…、じゃあ、頑張って」
僕はそういうと、下駄箱を離れた。
下駄箱付近に片倉部長は居なかったが、彼は他に考えていることがあると言っていたような。
まあ、いいや。
放課後までは、“P”のことは新聞部にお任せして、自分のやることをクリアしていかないといけない。
昼休み。
毛利さんと一緒に昼食を早々に食べ終えると、2年D組の鍋島さんにクッキーを渡しに行くため教室を出た。
2年生のフロアは1階上で、普段は用もないのでほとんど行かない。
ちょっと緊張するな。
階段を登り、2年生のフロアの廊下を進む。
すると、よく知った声で呼ばれた。
「キミィ!」
この声は上杉先輩。
僕は聞こえないふりして廊下を進む。
「ちょっと! 無視しないでよ!」
上杉先輩は後ろから僕の背中を叩いた。
「あっ! 上杉先輩! 全然、気が付きませんでした」
「しらじらしいなー」
上杉先輩は怪訝そうな表情で僕を睨みつけた。
「2年生の階に何しに来たの?」
「ホワイトデーのクッキーを渡しに」
「誰に?」
「2年D組の鍋島さんって人です」
「ふーん。知らないなあ」
上杉先輩、ギャルのくせに陰キャだから交友関係が無くて、他の生徒のことは良く知らないのだろう。彼女には友達は伊達先輩ぐらいしかないのだ。
「折角だから、恵梨香にも挨拶していったら?」
上杉先輩は教室の中を指した。
「いや、いいです」
「遠慮しないでよ」
そう言って、無理やり彼女たちの2年B組の教室に引きずり込まれた。
教室内の2年生たちの目線が僕に集まる。1年生が教室に来るのは珍しいのだろう。
それに僕は不本意ながら学校一の有名人だからな。
僕は上杉先輩に伊達先輩のがいる席へと連れていかれた。
窓際の一番後ろ。いわゆる“主人公席”だ。
伊達先輩は何やら資料を読んでいた。
「恵梨香。武田君が来たよ」
上杉先輩が話しかけると伊達先輩は顔を上げた。
「あら、武田君。何か用?」
「え? いや、伊達先輩に用があったわけではないのですが…」
「廊下で武田君を見かけたから、恵梨香に挨拶させようと思って連れて来た」
上杉先輩が説明すると、伊達先輩が尋ねた。
「どうして2年生のフロアにいるのかしら?」
「ホワイトデーのクッキーを渡しに来たんですよ」
「2年生からも、もらっていたのね」
伊達先輩は感心したように言う。
「ええ、片倉先輩に聞いたら2年D組の人だと教えてくれたので」
などと話をしていると、別の男子生徒が近づいてきて話しかけられた。
「やあ、武田君」
僕は、そちらのほうを向いた。
眼鏡を掛けた七三分けの真面目そうな男子…。
以前会ったことあるよな…、でも誰だっけ?
僕は誤魔化すように挨拶をする。
「こ、こんにちは…」
七三分け眼鏡男子は話を始める。
「今日の放課後は、上杉さんをお借りするからね」
「え? お借りする? 上杉先輩を?」
何の話か見えなくて僕は混乱する。
「なんの話ですか?」
「え? 聞いてないのかい?」
七三分け眼鏡男子は、ちょっと驚いたようだが詳細を説明してくれる。
「新聞部の片倉君から、上杉さんが将棋をやっているという話を聞いて、ウチの成田に将棋対決させることにしたんだよ。その様子をYouTubeにアップしようっていう、将棋部と新聞部の共同企画だよ」
上杉先輩と成田さんの対決って、勝負にならないだろう。
成田さんの圧勝でしょ?
でも七三分け眼鏡男子、将棋部の部員ということか…。
思い出した! 将棋部の部長の十河《そごう》先輩だ。
「そうですか…、初耳でした」
上杉先輩が何をしようと僕は興味がない。
「キミが部室に全然来ないからでしょ?!」
僕の答えに、上杉先輩は少々怒ったように文句を言う。
「昨日、僕と片倉君が歴史研の部室に行って、この話をしたんだよ」
七三分け眼鏡男子は、微笑みながら話す。
「急な話に関わらず、上杉さんに色よい返事がもらえたから良かったよ」
「という訳で、今日の放課後は将棋部の部室に行くよ」
上杉先輩は、今度はドヤ顔で言う。
何でドヤ顔?
将棋部でも囲碁部でも好きに行けばいい。
「えーっと…。ホワイトデーのクッキーを渡しに行きたいので、もういいですか?」
会話が一区切りついたので僕は言った。
「うん。呼び止めて悪かったね」
上杉先輩は笑いながらそう言うと僕を解放してくれた。
余計な時間を使ってしまったな。
僕は廊下に戻ると、2年D組を目指す。
ホワイトデー、今日も昨日に引き続き色々とやらないといけないことがある。
面倒だが登校する。
校舎に入り、下駄箱付近。
登校してきた何人もの生徒が上履きに履き替えている。
近くでは新聞部員が間隔を開けて4、5人ほどが立っていた。
彼らは、"P"が手紙を誰かの下駄箱に入れるかもしれないということで、監視をしているのだ。
その中に小梁川さんがいるのを見つけた。
僕も上履きに履き替えると、彼女に話しかける。
「小梁川さん、おはよう」
小梁川さんは下駄箱の方から目線を外さずに挨拶を返した。
「おはよう。武田君」
「どう? “P”は居たかい?」
「今のところは、下駄箱にバレンタインデーのチョコのお返しを入れる者が数名確認できたわ。彼らが“P”かどうかは、明日以降に改めて調査する予定よ」
「そうか…、じゃあ、頑張って」
僕はそういうと、下駄箱を離れた。
下駄箱付近に片倉部長は居なかったが、彼は他に考えていることがあると言っていたような。
まあ、いいや。
放課後までは、“P”のことは新聞部にお任せして、自分のやることをクリアしていかないといけない。
昼休み。
毛利さんと一緒に昼食を早々に食べ終えると、2年D組の鍋島さんにクッキーを渡しに行くため教室を出た。
2年生のフロアは1階上で、普段は用もないのでほとんど行かない。
ちょっと緊張するな。
階段を登り、2年生のフロアの廊下を進む。
すると、よく知った声で呼ばれた。
「キミィ!」
この声は上杉先輩。
僕は聞こえないふりして廊下を進む。
「ちょっと! 無視しないでよ!」
上杉先輩は後ろから僕の背中を叩いた。
「あっ! 上杉先輩! 全然、気が付きませんでした」
「しらじらしいなー」
上杉先輩は怪訝そうな表情で僕を睨みつけた。
「2年生の階に何しに来たの?」
「ホワイトデーのクッキーを渡しに」
「誰に?」
「2年D組の鍋島さんって人です」
「ふーん。知らないなあ」
上杉先輩、ギャルのくせに陰キャだから交友関係が無くて、他の生徒のことは良く知らないのだろう。彼女には友達は伊達先輩ぐらいしかないのだ。
「折角だから、恵梨香にも挨拶していったら?」
上杉先輩は教室の中を指した。
「いや、いいです」
「遠慮しないでよ」
そう言って、無理やり彼女たちの2年B組の教室に引きずり込まれた。
教室内の2年生たちの目線が僕に集まる。1年生が教室に来るのは珍しいのだろう。
それに僕は不本意ながら学校一の有名人だからな。
僕は上杉先輩に伊達先輩のがいる席へと連れていかれた。
窓際の一番後ろ。いわゆる“主人公席”だ。
伊達先輩は何やら資料を読んでいた。
「恵梨香。武田君が来たよ」
上杉先輩が話しかけると伊達先輩は顔を上げた。
「あら、武田君。何か用?」
「え? いや、伊達先輩に用があったわけではないのですが…」
「廊下で武田君を見かけたから、恵梨香に挨拶させようと思って連れて来た」
上杉先輩が説明すると、伊達先輩が尋ねた。
「どうして2年生のフロアにいるのかしら?」
「ホワイトデーのクッキーを渡しに来たんですよ」
「2年生からも、もらっていたのね」
伊達先輩は感心したように言う。
「ええ、片倉先輩に聞いたら2年D組の人だと教えてくれたので」
などと話をしていると、別の男子生徒が近づいてきて話しかけられた。
「やあ、武田君」
僕は、そちらのほうを向いた。
眼鏡を掛けた七三分けの真面目そうな男子…。
以前会ったことあるよな…、でも誰だっけ?
僕は誤魔化すように挨拶をする。
「こ、こんにちは…」
七三分け眼鏡男子は話を始める。
「今日の放課後は、上杉さんをお借りするからね」
「え? お借りする? 上杉先輩を?」
何の話か見えなくて僕は混乱する。
「なんの話ですか?」
「え? 聞いてないのかい?」
七三分け眼鏡男子は、ちょっと驚いたようだが詳細を説明してくれる。
「新聞部の片倉君から、上杉さんが将棋をやっているという話を聞いて、ウチの成田に将棋対決させることにしたんだよ。その様子をYouTubeにアップしようっていう、将棋部と新聞部の共同企画だよ」
上杉先輩と成田さんの対決って、勝負にならないだろう。
成田さんの圧勝でしょ?
でも七三分け眼鏡男子、将棋部の部員ということか…。
思い出した! 将棋部の部長の十河《そごう》先輩だ。
「そうですか…、初耳でした」
上杉先輩が何をしようと僕は興味がない。
「キミが部室に全然来ないからでしょ?!」
僕の答えに、上杉先輩は少々怒ったように文句を言う。
「昨日、僕と片倉君が歴史研の部室に行って、この話をしたんだよ」
七三分け眼鏡男子は、微笑みながら話す。
「急な話に関わらず、上杉さんに色よい返事がもらえたから良かったよ」
「という訳で、今日の放課後は将棋部の部室に行くよ」
上杉先輩は、今度はドヤ顔で言う。
何でドヤ顔?
将棋部でも囲碁部でも好きに行けばいい。
「えーっと…。ホワイトデーのクッキーを渡しに行きたいので、もういいですか?」
会話が一区切りついたので僕は言った。
「うん。呼び止めて悪かったね」
上杉先輩は笑いながらそう言うと僕を解放してくれた。
余計な時間を使ってしまったな。
僕は廊下に戻ると、2年D組を目指す。
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