上 下
352 / 424
暁を覚えない春眠編

サプライズ検討会議

しおりを挟む
 火曜日の昼休み。
 毛利さんと教室で弁当を食べているとSMSで伊達先輩からメッセージが。

『話があるので、放課後、部室に来て』

 なんだろう?
 急用かな?

 僕がスマホを見ていると、毛利さんが尋ねた。
「どうしたの?」

「伊達先輩が、放課後、部室に来いってさ」

「伊達先輩が呼び出すなんて、珍しいね。何の用かな?」

「さあ。いつもは、上杉先輩が偽ラブレターを書いて来るけどね、今日は伊達先輩か…。重大な用事かな?」

「私は放課後、図書委員で行けないから、聞いておいて」

「うん。いいよ」

 そんなこんなで、放課後。
 火曜日は毛利さんは図書委員の仕事で図書室に行ってしまったので、僕は1人で校舎の4階、端の端、理科準備室でもある歴史研究部の部室までやってきた。
 僕が部室の扉を開けると、いつものように伊達先輩と上杉先輩がポテチを肴に紙パックのコーヒーを飲んでいた。

「いらっしゃい」
「来たね!」
「こんにちは」

 僕は、いつもの挨拶を交わすと椅子に座った。

「今日は何の用でしょうか?」

「今週の金曜日、3月8日。何の日かわかるわよね?」
 僕の質問に対し、逆に伊達先輩が尋ねて来た。

「えーと…」
 何だっけ?
「国際婦人デー?」

「それも、当たりなんだけど、それと同じぐらい大切なことよ」

 そうか、思い出した。
「毛利さんの誕生日ですね」

「そうよ」

「自分のカノジョの誕生日ぐらい覚えておきなよ」
 上杉先輩が睨みつけて来た。

「いや、カノジョじゃあないですし」

 伊達先輩が話を続ける。
「それで、サプライズで誕生日祝いをしてあげようと思うんだけど」

 さほど、重大な用事じゃあなかったな。
 そう言うと、毛利さんが怒るかな?

「そういえば、雪乃もサプライズで誕生日祝いをしようと言ってます」
 僕は答えた。

「じゃあ、織田さんと私たちで合同でやりましょう。織田さんとも会って話をしたいわね」

「じゃあ、LINEで聞いてみます」

「え? キミ、LINE使えないんじゃなかったの?」
 上杉先輩が再び睨みつけて来た。

 そうだ、上杉先輩からの連絡がウザいからLINEアプリの調子が悪いことにしてたんだった。

「あ、ああ…。そうでしたね。最近、治ったんですよ」

「じゃあ、これからはLINEで連絡するわね」
 伊達先輩は言った。

「じゃあ、私がわざわざ手紙を書いて下駄箱に置く必要は無くなったね」

「そうですね…」
 ん?
「上杉先輩…、僕のLINEがおかしくなる前から手紙を書いてませんでしたっけ?」

「そうだっけ?」

「いや、どうでしょう…?」
 よく覚えてないが、もう、どうでもいい。

 早速、僕はLINEで雪乃へメッセージを送る。
 メッセージのやり取りを少しして、結局、明日、雪乃が歴史研の部室までやって来て詳細を詰めることになった。

「でも、明日は水曜日ですから、毛利さんは部室に来てしまうのでは?」

「明日、毛利さんが部室に来ないように、またキミがデートにでも誘いなよ」
 上杉先輩が提案した。

「またって…。僕はデートに誘ったことないですよ」

「あー、はいはい。モテるボクちゃんは、女子からデートに誘われるだけだもんねー」
 上杉先輩は嫌味っぽく言う。

「明日は、毛利さんを武田君の家にでも誘っておいて。誕生日のサプライズは私と紗夜と織田さんで考えておくから」
 伊達先輩が、上杉先輩の嫌味が面白かったのか、珍しく微笑みながら提案してきた。

「そうですか…。じゃあ、明日、毛利さんを誘いますので、サプライズの中身はお任せします」

「どういうのがいいかなー?」
 上杉先輩はそう言って、伸びをした。

 そういえば、以前、雪乃の誕生日サプライズも歴史研でしてあげたよな。
 あの時は確か、お城巡りで大阪滞在中で、雪乃にケーキを買ってあげたっけ。
 今回も似たような感じになるんだろう。

 まあ、あとは3人にお任せしよう。
 本当に、サプライズとか好きだよな。

 その後、僕は久しぶりに下校時間まで部室で伊達、上杉両先輩とダベって過ごした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

処理中です...