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チョコレート狂騒曲編

ぷらっと青空

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 金曜日。
 今日は“お弁当交換会”があるので、朝早く起きて手抜き弁当を作る。
 その途中、妹がブツブツなんか言ってくるけど、聞こえないふりをした。
 そして、弁当を完成させると朝食を食べ、いつものように登校。

 校舎に入り、上履きに履き替えるために、げた箱を開けると何やら封筒が。
 表には“武田純也様へ”。裏に差出人は書いていない。
 そして、ハートのシールで封がされていた。

 またか…。
 これは、ラブレターと見せかけた上杉先輩からの呼び出しだ。
 こんなことしなくても、SMS使えばいいのに。

 しばらく、その封筒を眺めていると、 登校してきた毛利さんが声を掛けてきた。
「おはよう…。どうしたの?」
 毛利さんは、僕が手にしている封筒を見て尋ねた。

「また上杉先輩からの手紙だよ」

「昨日、決まったことがあって、そのことを伝えるんだと思う」

 僕は昨日、真帆に呼び出されてナンジャタウンにいたので、部室で何があったかは知る由もない。
「それって何?」

「それは、伊達先輩が直接伝えるから、だまっててって言われてるの」

「そう…なの…?」
 え? なんか気になるな。
 良くないことか?

 毛利さんは続ける。
「今日は私は図書委員だから、部室に行けないけど」

「うん。わかったよ」

 僕は、念のため偽ラブレターの封を開けて中身を確認する。

 『今日、部室まで来てよ』

 予想通りの内容だった。

 僕は教室に向かい、席に着く。
 そして、つつがなく午前中の授業が終わり、昼休み。
 例によって僕と雪乃と毛利さんは“お弁当交換会”で、体育館の観客席で並んで話をしながら弁当を食べる。
 話題は、僕が北条先輩に脅されていた件。
 雪乃は何度も僕に感謝していると言う。
 そして、今日は雪乃の密着度が上がっているような気がするが…。
 なんとか平常心を保ちながら、昼休みを終える。

 午後の授業を終えて、放課後。
 毛利さんは図書委員で図書室へ行くので、僕は1人で歴史研の部室に向かう。
 部室の扉を開けると、いつものように伊達先輩と上杉先輩がポテチを食べながらくつろいでいた。
 僕を見ると、2人は挨拶をして来た。

「いらっしゃい」
「来たね!」

「ど、どうも」
 僕は椅子に座る。

 僕は早速、伊達先輩に尋ねた。
「今日は何か話があるようですが…」

「武田君、細川さんたちと名古屋に行くって言ってたでしょ?」

「はい」

「それに合わせて、私たちも一緒にお城巡りに行くことにしたわ」

「ええっ!!」
 滅茶苦茶驚いた。
 愛知県のお城は、すべて巡っているはずだからだ。
「どこのお城に行くんですか? 名古屋城とかは最初ほうの旅で行きましたよね?!」

「今回、行くのは岐阜城、松阪城、岩村城よ」

「それって遠いのでは…?」

「名古屋から岐阜城は約1時間20分、名古屋から松阪城は約1時間30分、名古屋から岩村城は約2時間40分よ」

 それは、確かに行けそうな距離ではあるが…。

「細川さんたちと一緒に行くと、武田君の分の旅費が半分になるから助かるわ」

 やっぱり、それが目的か。

「今回は、青春18きっぷじゃあないですよね?」

「そうよ。今回は、東京から名古屋は新幹線で“ぷらっとこだま”って言うのを使おうと思うの」

「“ぷらっとこだま”?」

「そう、“こだま”は各駅停車の新幹線で、名古屋まで2時間40分かかるけど、8,800円で安く移動できるのよ」

「そうですか、いろんなのがあるんですね」

「現地での移動は、“青空フリーパス”というのを使うことにします。これは2,620円で名古屋を中心とした指定の区間が乗り放題なるというものよ」

「はあ…」
 もう良く分からないので、お任せにする。

 しかし、今回もまたO.M.G.と歴史研が合同とか…。
 それに、徳川さんもO.M.G.と一緒に行動するって言ってたよな。ということは、8人で移動するのか。
 まあ、O.M.G.と徳川さんはお城にはいかず、名古屋までの移動だと思うけど。
 僕も名古屋までの移動だけで、お城には行かなくていいのでは?
 そうは問屋が卸さないかなあ…。
 どうなることやら。

 そう言えば、徳川さんが一緒に行くことも伝えておいた方がいいな。
「あの…、O.M.G.と一緒に、徳川さんって人も一緒に名古屋に行きます」

「その人はどんな人なの?」
 伊達先輩が尋ねた。

「ええと…、彼女も“春日局”という芸名でアイドル活動をしていて…、そうだ、彼女は面影橋大に通う大学生だそうです」

「あら、そうなの?」
 志望大学が面影橋大学の伊達先輩は興味を持ったみたいだ。
「その人も一緒に移動や宿泊もできそうなのかしら?」

「移動は一緒にするそうです。多分、宿泊もできるかもしれません」
 知らんけど。

「いいわね。確認しておいて」
 そう言うと、伊達先輩は微笑んだ。

 そこへ、上杉先輩が唐突に話題を変える。
「そう言えば、昨日の朝、部室の前でキスしてたね」

 その話かよ…。
「ええ、まあ…」

「キミたち、学校でいつもあんなことしてるの?」

「してませんよ」

「本当に? 説得力ゼロだけど」

「本当ですよ」
 この話題を別を逸らしたいのだが、なんか他の話題ないか…?
 そうだ!
「そう言えば、将棋部の成田さんが、『いつでも将棋部に遊びに来てください』って言ってましたよ」

「その人って、めっちゃ強い人だっけ?」

「そうです」

「その人と対戦してみたい!」

「じゃあ、成田さんが部室に何時いるか聞いておきますよ。よくショーギカイカンに行っていて部室にいないこともあるみたいなので」

「おおっ! よろしくね」

 上手く話題をそらせた。
 でも、成田さんの連絡先知らないな…。
 まあ、そのうち会えるだろう。

 今度は伊達先輩が話題を変えた。
「再来週から試験だけど、勉強はできてる?」

「ええ…、まあ、それなりに…」
 実は、あまりできていない。

「週末に、恒例の勉強会をしましょうか?」

 伊達先輩に教えてもらうと成績が上がるので、ここは教えてもらおう。
「是非お願いします。あっ…、明日の土曜は予定があるので、日曜でお願いできれば」

「わかったわ。日曜日、いつものように武田君の部屋でいいでしょ?」

「はい」

「じゃあ。毛利さんにも伝えておいて」

「わかりました。では、日曜、よろしくお願いします」

 その後は、少しだけ世間話をして解散となった。
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