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悪夢の奴隷生活編

遭遇~その1

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 僕と細川さんはサンシャインシティのカフェに入って席に着いた。
 ここは、以前、毛利さんと図書館での勉強会の後で来たところだ。
 僕らはカウンターでドリンクを購入した後、通路に面した座席に座る。
 この席は通行人が良く見える。逆に言えば通行人からもこちらが良く見えるということだ。

 細川さんが話し始める。
「もうすぐ、クリスマスだねー」

「そうだね…」
 しかし、細川さんは何で僕をお持ち帰りしようと思ったのだろう。
 困惑は続く。

 細川さんは尋ねる。
「冬休みは、どうするの?」

「え? いや、家でゴロゴロする…、とか」

「さっきの自己紹介でも言ってたね」
 そう言って細川さんは笑う。

 僕は続ける。
「あとは、部活かな」

「部活って、学園祭でメイドカフェやってた?」

「そうそう」

「何部だっけ?」

「歴史研究部だよ」

「歴史研究部って、何やるの?」

「全国のお城巡りをしているんだよ」

「へー。姫路城とか?」

「姫路城は、まだ行ったこと無いけどね」

「なんか楽しそう」

「いや、結構、行程が過酷なんだよ。だから疲れる」

「そうなの?」

「大体、在来線を使うから、10時間乗り継ぐとか」

「うひゃー」

 まあ、そういう反応になるよな。今度は僕が質問する。
「細川さんは冬休みはどうしてるの? 部活?」

「私のことは“真帆”でいいよ」

「そ、そう?」
 名前呼びとか、やっぱり恥ずかしいな。
 逆に細川さんは、なんで抵抗無く“純ちゃん”って呼べるんだろ?
「じゃあ…。ま、真帆、冬休みは?」

「連日ライブだよ。部活は入ってない」

「そうか」

「今度、ライブに来てよ」

「え? まあ、日程が合えばね」

 などと、しばらく世間話をしていると、近くから僕の名前を呼ぶ声がした。

「純也?!」

 声の方を向くと、そこには、なんと雪乃と毛利さんが立っていた。
 珍しい組み合わせに、僕はちょっと驚いた。
「あれ、雪乃…、と、毛利さん。何故、こんなところに?」

「買い物だよ。歩美が服を買いたいからって、付き合ってるの」

 毛利さんと名前呼びになるぐらい仲良くなったのか。
 いや、雪乃は元々フレンドリーだから、こんな感じか。

 雪乃は、僕と細川さんの顔をマジマジと見て尋ねた。
「ところで、純也は?」

「え、ああ、ちょっとね…」
 なんか、気まずいな。
 いや、待て、僕はもう雪乃とは付き合っていないのだから、誰と居てもいいはずだ。

「こんにちは」
 細川さんは2人に挨拶して、毛利さんに言った。
「そちらは、学園祭で会いましたね」

 そう言えば、東池の学園祭で細川さんと毛利さんは顔を合わせたんだっけ。

「えーと。こちらは、クラスメートの織田さんと毛利さん」
 僕は細川さんに2人を紹介し、続けて雪乃と毛利さんに細川さんを紹介する。
「こちらは、東池女子校の細川さん」

 すかさず雪乃が突っ込んできた。
「デート?」

「そうです!」
 間髪入れずに細川さんが元気よく答えた。

 え? デートなの?
 細川さんの解答に、雪乃も毛利さんも何とも読み取れない表情をしている。

「そう、じゃあ、頑張ってね」
 雪乃はそう言うと、僕の困惑をよそに毛利さんと一緒に去って行った。

「あのメガネの人、本当に純ちゃんの彼女じゃあないの?」
 2人の後姿を見送った後、細川さんが尋ねて来た。

「違うよ」
 僕は否定する。
 毛利さんは伊達先輩と付き合っているのだ。
 そして、雪乃は元カノだが、別に言うことはないだろう。

「良かったー。修羅場になるのかと思ったよ」
 細川さんは安心したように言う。

 何で修羅場なんだよ。

 続けて細川さんが質問する。
「あの2人は、どんな人?」

「毛利さんは同じ部活。本好きで、いつも本を読んでる。織田さんは演劇部。ふたりとも同じクラスだね」

「へー。演劇部かー」

「演劇に興味あるの?」

「うん、ちょっと」

 アイドル活動も演劇も芸能活動だから共通点あるのだろうか?
 
「さっきの2人だと、どっちが好み?」
 細川さんが尋ねて来た。

「え? 選べないよ」

「それじゃあ面白くないよ。どちらかと付き合わないと死んじゃうとしたら?」

 なんという想定だ…。
 まあ、そういうことであれば雪乃と毛利さんのふたりで選べと言われれば…。
「毛利さんかな?」
 僕はおとなし目の女子が好きなのだ。

「へー。じゃあ、告白とかしないの?」
 細川さんは興味津々の様子でグイと顔を寄せて来た。

「いや、あの人は、付き合っている相手が居るから。それに、僕は毛利さんが好きと言うわけじゃない」

「ふーん。それで、純ちゃんは好きな人いないの?」

「今は、いない」

 その後も細川さんに恋愛について、根掘り葉掘り聞かれた。
 細川さんは、恋愛の話が好きなんだな。
 僕に恋愛の話をしても、ロクな答えが出来ないからな。参考にはならんだろう。

 そんな感じで僕らは、しばらく時間を過ごす。
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