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逡巡する初冬編

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 今日も、げた箱の辺りで、雪乃に出会った。

「おお! 純也! おはよう!」

 雪乃はいつもの様に人目を憚らず僕に腕を組んでくる。

「お、お、お……、おはよう」
 僕は今朝の夢のこともあって、どもってしまった。
 そして、脳裏に雪乃と妹の下着姿の妄想がよみがえってきた。

「どうしたの?」
 彼女は怪訝そうに尋ねた。

「い、いや、なんでもない」
 僕は何とか誤魔化す。

 僕と雪乃は、教室まで一緒に行く。
 教室に到着すると、雪乃は陽キャ女子たちと会話に入る。
 僕のほうは自分に席に座る。
 すると、イケメン幼馴染の悠斗が話しかけてきた。
「純也、誕生日おめでとう」

「お、おう、ありがとう」

 さすが、幼馴染の悠斗である。ちゃんと覚えておいてくれた。

「これあげる」

 手渡してきたのはマンガの新刊。

「ありがとう」
 僕はそれを受け取った。
 悠斗の誕生日は1月だから、お返しを考えておかないとな。

 隣の席の毛利さんも教室にやって来て座った。
 僕は挨拶をする。
「おはよう」

 毛利さんは、挨拶もほどほどに話しかけてきた。
「今日は部室行くよね?」

「そのつもりだけど?」

「じゃあ、一緒に行こうね」

 なんだ? いつもは確認しないだろ?

 午前の授業が終わり、お昼休み。
 僕と雪乃は、いつもの様に食堂へ。

 世間話をしつつ昼食を食べ終える。
 すると、雪乃が突然お祝いを言ってきた。
「ところで…。純也、誕生日おめでとう!」

 ちょっと驚いたが、礼を言った。
「ありがとう」

「私、今日は放課後は部活だから、今渡すね」
 雪乃がリボンのついた小さな箱を手渡してきた。
「家で見て」

「ありがとう。でも僕の誕生日良く知ってたね。だれにも言ってないのに」

「え? だってLINEのプロフに書いてあるじゃん?」

「あれ、そうだっけ?」
 自分で入力したの忘れてたよ。

 一応、LINEの自分のプロフを見る。
 本当だ、書いてあった。
 ついでに雪乃の誕生日をプロフで確認する。
 12月か…。来月だな覚えておこう。

 そして、あっという間に放課後。
 僕と毛利さんは連れ立って歴史研の部室へ向かう。

 扉を開けるといつもの様に伊達先輩と上杉先輩が待っていた。
 今日は、机の上には、ポテチと紙パックのジュースでなく、小さいがホールケーキが置いてあった。
 近づいてみると、チョコの板に“武田君たんじょうびおめでとう”と書いてある。

「「「誕生日おめでとう!」」」
 毛利さん、伊達先輩、上杉先輩が一斉に唱和する。

「あ、ありがとうございます」
 ちょっと、嬉しい。

 皆にも同じ質問をする。
「僕の誕生日を良く知ってましたね。だれにも言ってないのに」

「LINEのプロフに書いてあるじゃん?」
 と、上杉先輩。

 やっぱりそうか。

「でも、私と恵梨香は忘れそうだったんだけど、毛利ちゃんが覚えていて、今日のセッティングをしたんだよ」

「毛利さん、ありがとう」
 毛利さんに礼を言うと、彼女はちょっと恥ずかしそうにしていた。

「じゃあ、ケーキを切り分けましょう」
 伊達先輩がナイフで皆の分を取り分けてくれた。
 僕らは、ケーキを美味しくいただく。

「あと、プレゼントね」
 3人はそれぞれ、リボンのついた長方形の包みをだしてきた。

「ネタバラしをすると」
 上杉先輩は言う。
「恵梨香は数学参考書、毛利ちゃんはSF小説、あたしはエロいマンガ」

 皆、本の種類の特徴がピッタリで面白いな。
「ともかく、ありがとうございます」

 それらを受け取った。
「開けていいですか?」

 僕は包みを次々と開ける。
 伊達先輩の数学の参考書は結構難しそうなやつ。
 毛利さんのSF小説は『続・時をかける少女』。
 上杉先輩のは…、

「キミがメイドものが好きだから、そういうのにした」
 上杉先輩は何故か嬉しそうに言う。

 別にメイドが好きなわけじゃあないんだけどな。
 僕は苦笑しつつ、改めて礼をいう。
「ありがとうございます……。そう言えば、皆の誕生日はいつなんですか?」

「私は4月よ」
 と、伊達先輩。

「あたしは5月」
 と、上杉先輩。

「私は3月」
 と、毛利さん。

 皆、しばらく誕生日来ないな。お返しを忘れないようにしとかないと。

「それにしても、キミ、持ってるねぇ」
 と、上杉先輩がニヤつきながら言ってきた。

「は?」

「誕生日が勃起の日だなんて」

「ああ、それですね。中学の頃も散々言われました」
 僕は、あきれる様に答える。

 本当は、お菓子のポッキーの日だ。
 それを勃起の日と、からかうようにずっと言われていた経緯があって、あまり自分の誕生日を言いたくなかったのだ。

 中学時代は馬鹿にされるだけで、祝ってくれるのは悠斗ぐらいだったから、今日はちょっとは、ましな誕生日だったかな。

 そして、帰宅。
 雪乃からもらったプレゼントの箱を開けてみる。
 中に入っていたのは、ネクタイピン。
 小さくハートマークが入っている。
 
 高校でネクタイピンしている生徒、あまり多くないから、目立つかな?
 それにしても、ハートマークかあ…。
 恥ずかしいけど、折角なので、明日から付けていくとしよう。
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