108 / 424
混沌の学園祭編
ゲネリハ
しおりを挟む
翌日の水曜日。
放課後にクラスの出し物の“白雪姫”の本番さながらの練習が行われる。
いわゆる、“ゲネリハ” というやつだ。場所も本番同様、体育館のステージが使えるとのこと。
大道具、小道具も完成し、準備されて既に、各担当によって体育館へ移動済みだそうだ。
出演者は、全員が一旦教室に残る。
衣装が完成しているとのことで、クラスで衣装作製の担当していた女子から衣装が渡された。
渡された衣装を手に教室で男女時間をずらして着替えてみる。
僕は“王子様”の衣装だ。昨日は執事だったが、なにやら立場の違いが忙しないと感じた。
教室は鏡が無いので、皆、トイレの洗面台まで向かう。
そして、洗面台の鏡で自分の姿を整えて、確認する。
衣装の作りはしっかりしていて、まあまあ、良い感じ? かな。
衣装担当の腕がいいのだな。
衣装担当によると、ディズニーアニメ映画の衣装を参考にしたとのことだが、少々地味な感じがした。そして、マントが邪魔だ。
教室へ戻る。
織田さんの衣装の白雪姫も良く似合っていた。
そして、王女役、小人役、などもそれぞれが衣装を着たまま体育館に向かう。
体育館では卓球部とバスケ部が練習をしていた。
卓球部の部長である羽柴先輩が僕を見つけて声を掛けてきた。
「誰かと思えば、武田君じゃあないか! 何だい、その恰好は?」
「これは、“白雪姫”の王子様です」
「“白雪姫”?」
「ええ、学園祭のクラスの出し物です」
羽柴先輩はもう一度僕の姿をじっくり見て言う。
「へー。なかなかいいね」
「これからステージで、ゲネリハをやるんですよ」
「じゃあ、“白雪姫”を見れるということだね」
「恥ずかしいので、先輩たちは卓球の練習をしててくださいよ」
僕は、そう言ってちょっと笑ってから、ステージに登った。
結局、卓球部とバスケ部の数名が僕らのゲネリハを見学するようだ。なんか、恥ずかしいな。
練習を続けている者もいるが、その中には、僕や織田さんの天敵、明智さんの姿が見えた。
彼女は演劇では担当の役も就いてなく、織田さんとの対立もあるのでこちらには興味ないだろう。
そんなわけで、ゲネリハを開始。
照明、といっても体育館に設置されている単純な照明なので、点けるか消すかしか出ないそうだ。それでも舞台転換などでタイミングよくON/OFFしていた。
音響担当もBGMやSEをタイミングよく流す。
大道具担当も背景のパネルの転換のスムーズにこなす
そんなわけで、ラストの実際はキスしないキスシーンまで終わった。
出来栄えは完璧と言っていいだろう。
見学者からも拍手があった。
途中、織田さんからは、立ち位置の指摘があったが、概ね満足なようだった。
「じゃあ、土曜日の本番、頑張りましょう!」
最後に皆を鼓舞して、教室に戻ることになった。
帰り際、再び卓球部の羽柴部長が話しかけてきた。
「なかなか良かったよ」
「ありがとうございます」
「キスは、しないんだね」
「はい。キスしそうなところでライトを消して舞台上を暗転して、再びライトが点いたら白雪姫は目覚めていた、という演出で本当にキスはしません。本番当日は、窓もカーテンで閉め切る予定だそうで、体育館の中は真っ暗になりますから、そう言う演出が可能だそうです」
「なるほど、そう言うことか」
「ところで、卓球部の出し物はなんですか?」
「屋台の焼きそば屋だよ。良かったら食べに来てよ」
「わかりました。行きます」
「あと、良かったら練習にも来てね」
夏休みに卓球部の合宿に参加させられた時にも、勧誘されたな。まだ言うか。
「ははは…」
僕は、笑ってごまかした。
そして、体育館を後にした。
放課後にクラスの出し物の“白雪姫”の本番さながらの練習が行われる。
いわゆる、“ゲネリハ” というやつだ。場所も本番同様、体育館のステージが使えるとのこと。
大道具、小道具も完成し、準備されて既に、各担当によって体育館へ移動済みだそうだ。
出演者は、全員が一旦教室に残る。
衣装が完成しているとのことで、クラスで衣装作製の担当していた女子から衣装が渡された。
渡された衣装を手に教室で男女時間をずらして着替えてみる。
僕は“王子様”の衣装だ。昨日は執事だったが、なにやら立場の違いが忙しないと感じた。
教室は鏡が無いので、皆、トイレの洗面台まで向かう。
そして、洗面台の鏡で自分の姿を整えて、確認する。
衣装の作りはしっかりしていて、まあまあ、良い感じ? かな。
衣装担当の腕がいいのだな。
衣装担当によると、ディズニーアニメ映画の衣装を参考にしたとのことだが、少々地味な感じがした。そして、マントが邪魔だ。
教室へ戻る。
織田さんの衣装の白雪姫も良く似合っていた。
そして、王女役、小人役、などもそれぞれが衣装を着たまま体育館に向かう。
体育館では卓球部とバスケ部が練習をしていた。
卓球部の部長である羽柴先輩が僕を見つけて声を掛けてきた。
「誰かと思えば、武田君じゃあないか! 何だい、その恰好は?」
「これは、“白雪姫”の王子様です」
「“白雪姫”?」
「ええ、学園祭のクラスの出し物です」
羽柴先輩はもう一度僕の姿をじっくり見て言う。
「へー。なかなかいいね」
「これからステージで、ゲネリハをやるんですよ」
「じゃあ、“白雪姫”を見れるということだね」
「恥ずかしいので、先輩たちは卓球の練習をしててくださいよ」
僕は、そう言ってちょっと笑ってから、ステージに登った。
結局、卓球部とバスケ部の数名が僕らのゲネリハを見学するようだ。なんか、恥ずかしいな。
練習を続けている者もいるが、その中には、僕や織田さんの天敵、明智さんの姿が見えた。
彼女は演劇では担当の役も就いてなく、織田さんとの対立もあるのでこちらには興味ないだろう。
そんなわけで、ゲネリハを開始。
照明、といっても体育館に設置されている単純な照明なので、点けるか消すかしか出ないそうだ。それでも舞台転換などでタイミングよくON/OFFしていた。
音響担当もBGMやSEをタイミングよく流す。
大道具担当も背景のパネルの転換のスムーズにこなす
そんなわけで、ラストの実際はキスしないキスシーンまで終わった。
出来栄えは完璧と言っていいだろう。
見学者からも拍手があった。
途中、織田さんからは、立ち位置の指摘があったが、概ね満足なようだった。
「じゃあ、土曜日の本番、頑張りましょう!」
最後に皆を鼓舞して、教室に戻ることになった。
帰り際、再び卓球部の羽柴部長が話しかけてきた。
「なかなか良かったよ」
「ありがとうございます」
「キスは、しないんだね」
「はい。キスしそうなところでライトを消して舞台上を暗転して、再びライトが点いたら白雪姫は目覚めていた、という演出で本当にキスはしません。本番当日は、窓もカーテンで閉め切る予定だそうで、体育館の中は真っ暗になりますから、そう言う演出が可能だそうです」
「なるほど、そう言うことか」
「ところで、卓球部の出し物はなんですか?」
「屋台の焼きそば屋だよ。良かったら食べに来てよ」
「わかりました。行きます」
「あと、良かったら練習にも来てね」
夏休みに卓球部の合宿に参加させられた時にも、勧誘されたな。まだ言うか。
「ははは…」
僕は、笑ってごまかした。
そして、体育館を後にした。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる