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捜査15日目
捜査15日目~追跡
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エーベル・マイヤーとソフィア・タウゼントシュタインが乗るフリゲート艦 “エンデクン号” は、オストハーフェンシュタットの目前に迫った。
運が良ければスザンネ達が乗った船はまだ停泊しているはずだ。艦長のトマス・シュナイダーが望遠鏡で港を覗いている。その隣で二人は甲板から港を見ていた。
すると、停泊している船で煙が上がっているのが見えた。どうやら火災が発生しているらしい。さらに注視していると、何者かが放った魔術の稲妻が船の壁を壊すのが見えた。
「艦長、あの船の隣につけられますか?」
マイヤーはシュナイダー艦長に声を掛けた。
「わかりました」。
シュナイダーは水兵たちに号令をかけた。
船は滑るように進み、煙が立っている船の横に着ける。
壁の穴から見慣れた顔が覗いた。
「オットーです!」
タウゼントシュタインが思わず声を上げた。
フリゲート艦の先端部分を目標の船の横に着けると、マイヤーがクラクスに大声で呼びかけた。
「オットー、こっちだ!」
クラクスと何人かの水兵が、ヒュフナーとクラクスの服をつかみフリゲート艦の甲板に引き上げた。
二人が救出されたのを確認すると、シュナイダー艦長は号令をかけ、こちらの船にも延焼するのを防ぐため、火のついている船から離れるように指示した。艦は再びゆっくり動きだし、なんとか安全なところまで移動して停止した。
「オットー、大丈夫か?」
マイヤーが尋ねる。せき込みながらもクラクスは答えた。
「大丈夫です。危機一髪でした」。
「彼女は、召使いのヒュフナーだな?」
水兵たちが彼女の縄を解いている。
「そうです、船の木箱の中に捕えられていたのを偶然発見して救出しました」。
「なぜ、船に火がついている?」
「船内で男たちに襲われ、私は武器を持っていなかったので火炎魔術で戦いました。それで船に火がついて」。
「襲ってきた相手は誰だ?」
「わかりません。見たことのない連中でした」。
マイヤー、クラクス、タウゼントシュタインが港を見ると船から大きな炎が上がり、船や近くから逃げ出す人々で桟橋は騒然となっていた。
まだ、スザンネ達を捕えられていない。
「クラクス、船にはスザンネ達はいたか?」
「いえ、見かけませんでした」。
「そうか」。
いずれにせよ、船は消火が不可能なほど火がついていて、もうすぐ沈没してしまうだろう。スザンネ達が船には乗っていないと考えると、オストハーフェンシュタットのどこかに潜伏したに違いない。
ヒュフナーの縄が解かれ、彼女は船内に連れていかれた。マイヤーたちは彼女から捕らわれていた事情を聴くため集まった。
マイヤーが口を開く。
「体の調子は大丈夫ですか?」
ヒュフナーは与えられたカップの水を一気に飲み干して答えた。
「大丈夫です」。
彼女は小声で、うつむき加減で答える。
「なぜ、捕らわれていたんですか?」
「理由はわかりません。屋敷にやって来た男たちに突然縛られました」。
先ほど船にいた男たちだろうか?
「スザンネさんと執事は、どこにいるかご存知ですか?」
「わかりません」。
「改めてお聞きしますが、ヴェールテ家で起こっている連続殺人については、何か知りませんか?」
「いえ、何も」。
本当に彼女は何も知らないようだった。木箱の中に捕えられて丸一日何も食べていないようだったので、食事を出してあげた。そして、一旦、艦の中に留まってもらうことになった。
マイヤー、クラクス、タウゼントシュタインは甲板に上がった。
「しかし、ヴェールテ貿易の船の出航が遅れていてよかったですね。何とか追いつくことができました」。
タウゼントシュタインは明るい声で話しかける。
「ついていたね」。
マイヤーはそう答えるも、なぜ出航が遅れていたのか気になった。
フリゲート艦は、オストハーフェンシュタットの海軍専用の桟橋に向かっている。そこは、一般の船が使う港とは少し離れた場所にある。
マイヤーはクラクスに尋ねる。
「クラクス、どうやってここまで来た?」
「他の船に乗ってきました」。
「どの船だ?」
「ズーデハーフェンシュタットにいた船でオストハーフェンシュタットに向かうものを見つけて乗りました」。
「乗った? 密航だろう?」
船舶関係者以外は勝手に船には乗れない。
「はい」。
クラクスは小声で返事をした。
「それよりも、なぜだ。なぜ勝手に隊を離れた?」
「執事が、私が犯人のようなことを警察に告げ口をしたので、許せなくて。それについて話を聞きたいと思いました」。
「なるほど」。マイヤーは顎に手を当てて、考えて込んでから話した。「気持ちはわからんでもない。モルデンでの一件で恨みもあるんだろうが、しかし、隊には規律がある。それには従ってもらわないといけない」。
マイヤーは姿勢を正し、クラクスに向かって改めて言った。
「クラクス、勝手に隊から離れたことについては後日処分を言い渡す」。
「わかりました」。
クラクスは神妙な顔で答えた。
「しかし、オストハーフェンシュタットいる間は捜査を手伝うように」。
「わかりました」。
そうしているうちに、艦は海軍専用の桟橋に停泊した。艦長は急いで当地の海軍司令部を訪問し、船の火災の件、逃亡者を追っている件の事情を話し、しばらくの間、船舶の出航をすべて差し止めるように依頼を掛けた。船の火災の後処理は軍がやってくれるように依頼もしておいた。
夜も更けて来た。外出禁止令があるからスザンネ達も迂闊には移動はできないだろう。
マイヤー、タウゼントシュタイン、クラクスの三人は早朝まで艦で休むこととなった。
運が良ければスザンネ達が乗った船はまだ停泊しているはずだ。艦長のトマス・シュナイダーが望遠鏡で港を覗いている。その隣で二人は甲板から港を見ていた。
すると、停泊している船で煙が上がっているのが見えた。どうやら火災が発生しているらしい。さらに注視していると、何者かが放った魔術の稲妻が船の壁を壊すのが見えた。
「艦長、あの船の隣につけられますか?」
マイヤーはシュナイダー艦長に声を掛けた。
「わかりました」。
シュナイダーは水兵たちに号令をかけた。
船は滑るように進み、煙が立っている船の横に着ける。
壁の穴から見慣れた顔が覗いた。
「オットーです!」
タウゼントシュタインが思わず声を上げた。
フリゲート艦の先端部分を目標の船の横に着けると、マイヤーがクラクスに大声で呼びかけた。
「オットー、こっちだ!」
クラクスと何人かの水兵が、ヒュフナーとクラクスの服をつかみフリゲート艦の甲板に引き上げた。
二人が救出されたのを確認すると、シュナイダー艦長は号令をかけ、こちらの船にも延焼するのを防ぐため、火のついている船から離れるように指示した。艦は再びゆっくり動きだし、なんとか安全なところまで移動して停止した。
「オットー、大丈夫か?」
マイヤーが尋ねる。せき込みながらもクラクスは答えた。
「大丈夫です。危機一髪でした」。
「彼女は、召使いのヒュフナーだな?」
水兵たちが彼女の縄を解いている。
「そうです、船の木箱の中に捕えられていたのを偶然発見して救出しました」。
「なぜ、船に火がついている?」
「船内で男たちに襲われ、私は武器を持っていなかったので火炎魔術で戦いました。それで船に火がついて」。
「襲ってきた相手は誰だ?」
「わかりません。見たことのない連中でした」。
マイヤー、クラクス、タウゼントシュタインが港を見ると船から大きな炎が上がり、船や近くから逃げ出す人々で桟橋は騒然となっていた。
まだ、スザンネ達を捕えられていない。
「クラクス、船にはスザンネ達はいたか?」
「いえ、見かけませんでした」。
「そうか」。
いずれにせよ、船は消火が不可能なほど火がついていて、もうすぐ沈没してしまうだろう。スザンネ達が船には乗っていないと考えると、オストハーフェンシュタットのどこかに潜伏したに違いない。
ヒュフナーの縄が解かれ、彼女は船内に連れていかれた。マイヤーたちは彼女から捕らわれていた事情を聴くため集まった。
マイヤーが口を開く。
「体の調子は大丈夫ですか?」
ヒュフナーは与えられたカップの水を一気に飲み干して答えた。
「大丈夫です」。
彼女は小声で、うつむき加減で答える。
「なぜ、捕らわれていたんですか?」
「理由はわかりません。屋敷にやって来た男たちに突然縛られました」。
先ほど船にいた男たちだろうか?
「スザンネさんと執事は、どこにいるかご存知ですか?」
「わかりません」。
「改めてお聞きしますが、ヴェールテ家で起こっている連続殺人については、何か知りませんか?」
「いえ、何も」。
本当に彼女は何も知らないようだった。木箱の中に捕えられて丸一日何も食べていないようだったので、食事を出してあげた。そして、一旦、艦の中に留まってもらうことになった。
マイヤー、クラクス、タウゼントシュタインは甲板に上がった。
「しかし、ヴェールテ貿易の船の出航が遅れていてよかったですね。何とか追いつくことができました」。
タウゼントシュタインは明るい声で話しかける。
「ついていたね」。
マイヤーはそう答えるも、なぜ出航が遅れていたのか気になった。
フリゲート艦は、オストハーフェンシュタットの海軍専用の桟橋に向かっている。そこは、一般の船が使う港とは少し離れた場所にある。
マイヤーはクラクスに尋ねる。
「クラクス、どうやってここまで来た?」
「他の船に乗ってきました」。
「どの船だ?」
「ズーデハーフェンシュタットにいた船でオストハーフェンシュタットに向かうものを見つけて乗りました」。
「乗った? 密航だろう?」
船舶関係者以外は勝手に船には乗れない。
「はい」。
クラクスは小声で返事をした。
「それよりも、なぜだ。なぜ勝手に隊を離れた?」
「執事が、私が犯人のようなことを警察に告げ口をしたので、許せなくて。それについて話を聞きたいと思いました」。
「なるほど」。マイヤーは顎に手を当てて、考えて込んでから話した。「気持ちはわからんでもない。モルデンでの一件で恨みもあるんだろうが、しかし、隊には規律がある。それには従ってもらわないといけない」。
マイヤーは姿勢を正し、クラクスに向かって改めて言った。
「クラクス、勝手に隊から離れたことについては後日処分を言い渡す」。
「わかりました」。
クラクスは神妙な顔で答えた。
「しかし、オストハーフェンシュタットいる間は捜査を手伝うように」。
「わかりました」。
そうしているうちに、艦は海軍専用の桟橋に停泊した。艦長は急いで当地の海軍司令部を訪問し、船の火災の件、逃亡者を追っている件の事情を話し、しばらくの間、船舶の出航をすべて差し止めるように依頼を掛けた。船の火災の後処理は軍がやってくれるように依頼もしておいた。
夜も更けて来た。外出禁止令があるからスザンネ達も迂闊には移動はできないだろう。
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